混沌の63周…フェルスタッペン逆転勝利!ノリス表彰台、角田 挽回叶わず / F1エミリア・ロマーニャGP《決勝》結果とダイジェスト
2021シーズンFIA-F1世界選手権 第2戦エミリア・ロマーニャGP決勝レースが4月18日に行われ、予選3番グリッドのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が後続に21秒差を付け逆転優勝を飾った。
この日は激しい降雨がフィールドをかき乱す混乱のレースなった。2度のクラッシュで黄旗と赤旗、そしてセーフティーカーが導入され、計4名がフィニッシュラインを駆け抜ける事なくイモラ・サーキットを後にした。
フェルスタッペンはオープニングラップで首位に立つと、その後は一貫したペースを刻んだ。赤旗からのリスタートの際に1度、危うい場面があったが、それを除けば完勝と呼ぶに相応しい走りを見せた。
ポールポジションのルイス・ハミルトン(メルセデス)は2位と後退したが、自らのミスでクラッシュを喫して一時は10番手にまで転落した事を思えば、パーフェクトなリカバリーとも言える。
3位表彰台にはランド・ノリス(マクラーレン)が滑り込んだ。予選ではトラックリミットによってトップ3の座を失ったものの、レースでは見事に巻き返してみせた。世界中のファンはこの日のDriver of the Dayにノリスを選出した。
LANDO: "I tried hanging on to second, Lewis was a bit too quick for me today!
"It's nice to be fighting with these guys, and be there on merit, I look forward to more in the future"#ImolaGP 🇮🇹 #F1 pic.twitter.com/7WFe6jKsIJ
— Formula 1 (@F1) April 18, 2021
フェルスタッペン以外のホンダエンジン勢は厳しいレースを強いられた。
パワーユニット全交換を経て最後尾からスタートしたアルファタウリの角田裕毅は2ラップ目までに14番手にまで浮上。一時はポイント圏内9番手にまで追い上げたものの、終盤のリスタートの際にスピンを喫して15番手にまで転落した。
その後はターン9のトラックリミット違反による黒白旗(非スポーツマンシップ的行為への警告)を経て5秒ペナルティと1点のペナルティポイントが科され、最終13位でフィニッシュした。
チームメイトのピエール・ガスリーは表彰台を視野に5番グリッドについたものの、フルウェットタイヤを選択した事が仇となり15周目に18番手にまで転落。ただ辛抱強くステアリングを握り続けて最終的に8位フィニッシュ。レース後にランス・ストロール(アストンマーチン)への5秒ペナルティが下された事で7位入賞に繰り上がった。
2番グリッドのセルジオ・ペレスは1周目に4番手に後退。序盤のセーフティーカー(SC)先導下で他車2台を追い抜いたとしてストップ&ゴー・ペナルティを受け、更に2度目のSC再開時には角田裕毅と同じ様にスピンを喫して後方に転落。巻き返しを図るも一歩及ばずポイント圏内12位でレースを終えた。
ただし8位入賞を果たしたアルファロメオのキミ・ライコネンがレース後に30秒ペナルティを科された事で、ペレスは11位、角田裕毅は12位に繰り上がった。
第2戦の舞台はかつてのサンマリノGPの地、アウトードロモ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ。約7割が直線区間と言う高速サーキットで、開幕戦で物議を醸したトラックリミットは、ターン9及びターン15の2か所に設けられた。
決勝は、日本時間18日(日)22時にブラックアウトを迎え、1周4,909mのコースを63周する事で争われた。現地イモラはレースを直前に控えて一部が激しい雨に見舞われ、ピットとガレージは混乱に襲われた。
まずはフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が濡れた路面に足を取られ、レコノサンスラップのターン7でスピン。右フロントが軽くバリアに接触し、フロントウイングの交換を強いられる事となった。ただ、レースでは混乱を巧みに回避していき、10位の僚友エステバン・オコンの0.8秒落ちの11位でヘルメットを脱いだ。こちらもライコネンへの罰則でオコンが9位、アロンソが10位に昇格し、”アルピーヌ”はチーム初ポイントをW入賞で飾る事となった。
同じくレース前のグリッド上では、バルテリ・ボッタス(メルセデス)が左リアタイヤのパンクを無線で報告。アストンマーチン勢はリアブレーキの出火に見舞われ、ダクトが溶け落ちた。
セバスチャン・ベッテルはこれが原因でピットスタートを強いられる事となり、更にはレース開始5分前までにタイヤを装着していなかったとして、ストップ&ゴー・ペナルティが科され、最終的には62周目にガレージにクルマを入れた。僚友ランス・ストロールが7位入賞を果たしたのとは対象的な結果に終わった。
ベッテルはレース後「プロ意識に欠けている」と述べ、裁定の遅さを批判した。
公式タイヤサプライヤーのピレリは中間レンジのC2からC4までのコンパウンドを投入。レース中の降水確率80%という状況の中、スタートではガスリー、オコン、ハース勢の4台がフルウェット、他の16台はインターミディエイトを選択。気温9℃、路面17℃のウェットコンディションでレースが開始された。
注目のオープニングラップでは、タンブレロ(ターン2・3)でフェルスタッペンがハミルトンをオーバーテイク。トップに浮上した。この攻防でハミルトンは縁石に乗り上げフロントウイング翼端板を破損した。
A sublime start for Max, as Lewis takes damage over the kerbs 👀#ImolaGP 🇮🇹 #F1 pic.twitter.com/Z180Zw0LuY
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後方ではニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)とニキータ・マゼピン(ハース)が接触 。マゼピンは生き残ったが、貴重なポイント獲得に大きな期待が掛かるFW43Bのラティフィはバリアに激突。早々にリタイアを喫した。
これにより1回目のSCが導入され、オコンはこのタイミングでピットイン作業を行いインターミディエイトへと履き替えた。先導下の4周目には、ウェービング中のミック・シューマッハ(ハース)がコントロールを失いピット出口脇のバリアに激突。ウイングを失った。ペレスも挙動を乱してグラベルに飛び出た。
LAP 4/63
Schumacher loses the rear end warming his tyres, and takes off the front wing
The pit lane is currently closed due to the debris#ImolaGP 🇮🇹 #F1 pic.twitter.com/z5KHs5RYzD
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レースは7周目にリスタートを迎えた。路面が徐々に乾いていく中、フルウェットを履くガスリーは成す術なく5番手からズルズルと順位を落としていき、結局17番手まで後退した14周目にようやくインターに履き替えた。
コンディションがドライ寄りへ変化する中、先陣を切ってスリックタイヤに履き替えたのはベッテルだった。20周目にベッテルがミディアムに履き替えると、続いてハース勢がソフトへと交換。27周目に角田裕毅が、28周目にはラップリーダーのフェルスタッペンを始めとして各車続々とミディアムに履き替えた。
31周目、実質2番手を走行していたハミルトンがコースオフ。フロントウイングを破損してグラベルに捕まった。
レース終了かと思われたが、同じタイミングでボッタスとジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)がホームストレートで激しくクラッシュ。大量のデブリが飛び散り、セッションはSC導入を経て34周目に赤旗が振られた。ラッセルにとっては2年連続でのリタイヤとなったが、ハミルトンは大きく救われる格好となった。
🚩 RED FLAG 🚩
The race is suspended as the clean-up operation begins#ImolaGP 🇮🇹 #F1 pic.twitter.com/JPv4ehGOjr
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怒り心頭のラッセルはクルマを降りるとボッタスに「殺す気か」と詰め寄り、レース後には「僕ではなく他のドライバーであったら彼はあんな動きをしなかったのでは」等と語り、シート喪失への恐れからボッタスが無理にブロックしたとも受け取れる発言を口にした。
Hamilton reflects after a chaotic first half of the race#ImolaGP 🇮🇹 #F1 pic.twitter.com/QJaY618GsV
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チーム代表のトト・ウォルフは、衝突の責任がいずれか一方にあるとはせず、程度の差こそあれ両者ともに非があると口にしたものの、メルセデスのジュニアドライバーである事を踏まえれば、ラッセルがワークスチームのマシン相手にああいった動きをするのは軽率だと主張した。
また、ラッセルの「ボッタスの動きはシートに関わる敵対心から生まれたもの」と示唆するような発言に関しては「戯言」だと切って捨てた。ラッセルは2022年のメルセデスF1の候補者であり、対するボッタスはシートを奪われかねない立場にある。
更にウォルフは、今季から施行された予算上限ルールに触れ、クラッシュによりマシンがほぼ全損した事で修復のために費用をかけざるを得ず、マシン開発が損なわれ兼ねないと憤った。
ただしF1の競技部門を率いるロス・ブラウンは「行き場を与えなかった」として、ボッタスに非があるというラッセルの見解を支持した。
レースは30分弱の中断を経てフェルスタッペン、ルクレール、ノリス、ペレス、サインツ、リカルド、ストロール、ライコネン、ハミルトン、角田裕毅というトップ10の並びと共に、ローリングスタートで再開された。
ここが最後のチャンスとばかりにノリスが仕掛けて2番手に浮上。後方では角田裕毅がスピンを喫してコース外に飛び出し15番手にまで後退と、取り戻した順位を再び失った。4番手のペレスも単独スピンで14番手にまで転落した。
一時は周回遅れの可能性もあったハミルトンだが、壊れたウイングも交換して万全の状態でハンティングを開始。60周目にノリスを抜き去り2番手にまで巻き返し、更にはファステストラップのボーナスポイントも獲得するなど、チャンピオンシップでのダメージを最小限に抑えた。
トップ3には母国レースのフェラーリ勢2台が続いた。シャルル・ルクレールが4位、カルロス・サインツが5位と健闘した。表彰台に上がったノリスのチームメイト、ダニエル・リカルドは6位でクルマを降りた。
アルファロメオは今年もまた、苦手のイモラでポイント獲得を達成したかに思われたが、スタート手順違反によりレース後、ライコネンに30秒ペナルティが下された事で幻と終わった。
2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 63 | 2:02:34.598 | 25 |
2 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 63 | +22.000s | 19 |
3 | 4 | ノリス | マクラーレン | 63 | +23.702s | 15 |
4 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 63 | +25.579s | 12 |
5 | 55 | サインツ | フェラーリ | 63 | +27.036s | 10 |
6 | 3 | リカルド | マクラーレン | 63 | +51.220s | 8 |
7 | 10 | ガスリー | アルファタウリ | 63 | +52.818s | 6 |
8 | 18 | ストロール | アストンマーチン | 63 | +56.909s | 4 |
9 | 31 | オコン | アルピーヌ | 63 | +65.704s | 2 |
10 | 14 | アロンソ | アルピーヌ | 63 | +66.561s | 1 |
11 | 11 | ペレス | レッドブル | 63 | +67.151s | 0 |
12 | 22 | 角田裕毅 | アルファタウリ | 63 | +73.184s | 0 |
13 | 7 | ライコネン | アルファロメオ | 63 | +94.773s | 0 |
14 | 99 | ジョビナッツィ | アルファロメオ | 62 | +1 lap | 0 |
15 | 5 | ベッテル | アストンマーチン | 61 | DNF | 0 |
16 | 47 | シューマッハ | ハース | 61 | +2 laps | 0 |
17 | 9 | マゼピン | ハース | 61 | +2 laps | 0 |
NC | 77 | ボッタス | メルセデス | 30 | DNF | 0 |
NC | 63 | ラッセル | ウィリアムズ | 30 | DNF | 0 |
NC | 6 | ラティフィ | ウィリアムズ | 0 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 雨 |
---|---|
気温 | 9℃ |
路面温度 | 17℃ |
周回数 | 63 |
セッション概要
グランプリ名 | F1エミリア・ロマーニャGP |
---|---|
レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | イモラ・サーキット |
---|---|
設立 | 1953年 |
全長 | 4909m |
コーナー数 | 21 |
周回方向 | 反時計回り |