2020年F1ハンガリーGP金曜プレスカンファレンスに出席したフェラーリのマッティア・ビノット代表とレーシングポイントのオトマー・サフナウアー代表とルノーのマルチン・ブコウスキーcopyright Racing Point

合法?違法?レーシングポイント「RP20」を巡る問題が一筋縄では行かない理由

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2019年のチャンピオンマシン、メルセデス「W10」との類似性の高さから一部で「ピンクのメルセデス」と呼ばれるレーシングポイントの2020年型F1マシン「RP20」。その合法性を巡るルノーの抗議は一筋縄では行かない問題をはらんでおり、すんなりと決着する事を期待するのは難しい。

論点は「RP20」が2019年型のメルセデスF1マシン「W10」に似ているか否かではない。F1サーカスにおいてはライバルチームのマシンの写真から図面を起こす事は日常茶飯事に行われている事であり、これ自体はレギュレーションで禁止されておらず合法だ。

左:メルセデスの2019年型マシン「W10」、最終アブダビGPにて / 右:レーシングポイントの2020年型マシン「RP20」、バルセロナテストにて
左:メルセデスの2019年型マシン「W10」、最終アブダビGPにて / 右:レーシングポイントの2020年型マシン「RP20」、バルセロナテストにて

問題の核心にあるのは、レーシングポイントのブレーキダクトが自社設計されたものか否かであり、そのブレーキダクトが昨年は”リステッド・パーツ”の対象外であったという2点にある。

ブレーキダクトの外観が似通っているのも前述の理由で違法ではない。だが、50近いパーツから構成される内部構造が似ていた場合、それはメルセデスから図面を入手したか、あるいは購入するなどして実物を取り寄せて分解し、これを元に設計した疑いが出てくる。

これが、マシンを構成するあらゆるパーツの中でルノーがブレーキダクトを”攻撃の的”に選んだ理由の一つだった。もし仮にフォルムなどの外観だけでなく、内部もW10のブレーキダクトに類似しているのであれば完全な黒と思われるところだが問題は複雑だ。

”リステッド・パーツ”はチームが独自に製造しなければならない部品の一覧の事で、ブレーキダクトは2020年のレギュレーション改定によって、サバイバルセルやボディーワークを含むこのリストに新たに組み込まれた。つまり、昨シーズンであれば他社に設計や製造を委託、あるいは購入する事が許可されていた部品なのだ。

この事から、レーシングポイントは合法的にW10のブレーキダクトのデザインを把握していた可能性がある。実際レーシングポイントは、昨シーズンの大部分においてメルセデス風のブレーキダクトを使用していた。故に、仮に内部構造が似ていたとしても、即違法とは断定できない。最終的に論点は、スチュワードが設計プロセスをどう評価・判断するかに依る事になるかもしれない。

ルノーのエグゼクティブ・ディレクターを務めるマルチン・ブコウスキー、2020年F1ハンガリーGP金曜プレスカンファレンスにて
© Renault / ルノーのエグゼクティブ・ディレクターを務めるマルチン・ブコウスキー

ルノーのエグゼクティブ・ディレクターを務めるマルチン・ブコウスキーはハンガリーGPの金曜会見に出席し「レーシングポイントのブレーキダクトを始めとする幾つかの部品は他のチームが設計したものだと推測している。これはレギュレーション違反だ」と述べ、正式抗議の理由を説明した。

「我々は彼らが図面を受け取ったと確信しているし、彼らが今年のマシンを作り上げるために必要とした部品を受け取ったと考えている。もしFIAが、このブレーキダクトが他のチームが設計したものだと認めれば、他のパーツについてもチェックされる事になるだろう」

そもそもブレーキダクトがリストに加えられたのは、これが単なる冷却装置ではなくマシンパフォーマンスに重大な影響を与える空力パーツと見なされているためだった。マルチン・ブコウスキーはブレーキダクトの役割について次のように説明する。

「ブレーキダクトは今日のF1マシンに欠かせない性能差別化要因だ。ブレーキを冷却するためだけでなく、エアロパフォーマンスを引き出すという意味でも、フロントとリアの両方で必要不可欠な空力デバイスだ。更には、最近はタイヤの温度がかなり重要であることが分かっているが、ブレーキダクトはタイヤの温度をコントロールするためにも不可欠なのだ」

レーシングポイントのオトマー・サフナウアー代表、2020年F1ハンガリーGP金曜プレスカンファレンスにて
© Racing Point / レーシングポイントのオトマー・サフナウアー代表

マルチン・ブコウスキーの隣には、レーシングポイントのオトマー・サフナウアー代表が座っていた。サフナウアーは兼ねての主張通り、その合法性を強調した。

「我々は要求に応じてあらゆる証拠を提出する用意がある。例えばブレーキダクトの内部など、写真からは分からない部分もあるが、我々は全てを自分たちで設計・開発している。FIAによるパーツの比較が行われれば、ブレーキダクトが我々独自の知的財産であり、独自に設計されたものが分かることだろう」

比較検証のため、FIAにはブレーキダクトの実物だけでなくCADファイル(図面データ)が提供されており、調査結果は最終的に報告書にまとめられスチュワードに提供される。シルバーストーンでの2連戦中には結論が下される見通しだが、抗議が退けられた場合はお互いに控訴する事が予想される。この場合、控訴審の判決は早くても8月第2週のスペインGPの翌週になるものと見られる。

また、仮に違法認定された場合、”レーシングポイント=メルセデス”に類似するような他チームとの関係を持つハースやアルファタウリ・ホンダ、アファロメオに火の粉が降り注ぐ可能性もある。

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