FIA、論争の的「レーシングポイントRP20」のパーツを押収…ルノーの抗議を受理し調査に着手
国際自動車連盟(FIA)はルノーF1チームからの正式な抗議を受けて、レーシングポイントの2020年型F1マシン「RP20」のフロント及びリアのブレーキダクトの押収に動くと共に、メルセデスに対してこれらに関する2019年スペックのパーツをFIA技術部に提供するよう命じた。
セルジオ・ペレスとランス・ストロールがミッドフィールドを席巻し、6位と7位入賞で大量ポイントを獲得した第2戦シュタイアーマルクGPの決勝レースのチェッカーから数時間後、ルノーはライバルチームのF1マシンの合法性に関してFIAに正式に抗議を申し立てた。
ルノーは抗議の根拠の1つに、特定パーツ類の自社設計を義務付けたFIA-F1スポーティング・レギュレーション付録6第1条を上げた。つまり、レーシング・ポイントが自ら設計していないパーツを使用していると主張したわけだ。レーシングポイントの2020年型F1マシンは、昨年のダブルタイトルを獲得した「W10」との類似性の高さからパドックの一部で「ピンク・メルセデス」と呼ばれている。
付録6第1条は「競技参加者はフォーミュラ1において、その車両に使用される”リステッド・パーツ”に関し、当該コンストラクターの設計による”リステッド・パーツ”のみを使用すること」と定めている。”リステッド・パーツ”はチームが独自に製造しなければならない部品の一覧の事だ。
2020年のレギュレーション改定によって、”リステッド・パーツ”には新しくブレーキダクトが含まれる事となった。主だった”リステッド・パーツ”には、サバイバルセルやフロントインパクト構造、ロール構造やボディーワークなどがある。
なおルノーが違反を疑っているF1スポーティング・レギュレーションの各条項は以下の5つだ。
- 第2条1項
- 第3条2項
- 付録6 第1条
- 付録6 第2条(a)
- 付録6 第2条(c)
レーシングポイントはRP20の合法性を主張しているが、エマニュエル・ピロを含むシュタイアーマルクGPのスチュワード団は、関係者からの聞き取りを経てルノーの抗議を受け入れ、詳細な調査に乗り出す事を宣言した。
FIAは声明の中で次のように説明している。
「スチュワードは、11号車と18号車に使用されているフロントとリアのブレーキダクトについて、両チームの代表者とFIA技術部の代表者を召喚して話を聞いた。スチュワードは、この抗議はFIAインターナショナル・スポーツ・コード第13条に規定されているすべての要件を満たしており、それゆえに認められると判断した」
「11号車と18号車の詳細な分析を行うため、FIA技術部の代表者に対して関連部品を封印して押収するよう指示した。代表者はスチュワードに対して調査結果の詳細な報告書を提出すると共に、抗議文に記載されている違反の疑いと調査結果を照合して評価を行うよう指示されている」
なお調査に際してFIAは、ルノー、レーシングポイント、メルセデスを含む外部の技術支援を求める権限を技術部に与えた事を明かした。
抗議と言えば、今季の開幕オーストリアGPではレッドブル・ホンダがメルセデスの2軸ステアリングシステム=DASに関してFIAに抗議申請を行ったが、FIAは詳細な調査を行うまでもないとして申し立てを棄却している。この点において、RP20に関する抗議が受理された点は興味深い。
昨年の日本GPでは、レーシングポイントがルノーのブレーキシステムに抗議を申し立てた。調査を経てFIAはルノーの2台を失格処分とした。両者には因縁がある。