FIA、メルセデスの「DAS」に対するレッドブル・ホンダの抗議を棄却
F1世界選手権の統括団体である国際自動車連盟(FIA)は、メルセデスが開発した革新的な2軸ステアリングシステム、通称DASに対するレッドブル・ホンダの抗議を棄却した。
シルバーアロー改め”ブラック・アロー”がF1オーストリアGPの初日フリー走行中にDASを稼働させた事に対し、レッドブル・ホンダはセッション終了後にその合法性を巡りFIAに明確化するよう正式な抗議を申し立てた。
スチュワードは両チームのメンバーおよびFIA技術部のニコラス・トンバジスを招集してヒアリングを行い、レッドブル・ホンダの抗議を棄却する決断を下した。申立の受理から棄却まで6時間以上を要した。
レッドブル・ホンダが根拠としたのは、ドライバーの動きによって部品を稼働させ車両の空力特性を変更する事などを禁ずるF1テクニカルレギュレーション3条8項および、車両の走行中にサスペンションシステムの調整を禁止する同10条2項3の2つだ。
抗議を受けてスチュワードが「ステアリングシステムの一部でなければ違法」との見解を示した事で、焦点はDASがステアリングシステムか否かに移ったが、スチュワードはDASが「従来型のものではない」と認めつつも、単独のステアリングデバイスであると断じた。
DASはステアリングホイールを前後に動かすことで、走行中にマシン前輪のトー角を変更するものだ。F1マシンは基本的にタイヤの前部を数ミリ外側に向けた「トーアウト」を取る。これはコーナーに進入する際にグリップと安定性を確保する上で有効とされるが、反対にストレートではタイヤが斜めに引きずられる事で負荷を与えてしまう。
効果は明らかにされていないが、ドライバーはストレートに入った時にステアリングホイールを手前に引く事で前輪を進行方向に対し真っ直ぐとし、コーナーに差し掛かる前にステアリングホイールを押し戻す事でトーアウトに変更する事ができるものと考えられている。
今回の裁定によってDASの合法性が認められたわけだが、DASに関しては既に2021年シーズンのレギュレーション変更によって禁止が決定しており、使用できるのは今シーズンいっぱいとなる。
なおレッドブルには本件に関する控訴権があるため、DAS論争に終止符が打たれるかどうかの判断は今しばらく保留する必要がある。