レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表とヘルムート・マルコ、2020年F1バルセロナテストにて
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メルセデス独自のステアリング機構「DAS」の合法性を疑うレッドブル、効果を訝しがるベッテル

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従来のステアリング機構に新しくもう一軸を追加した「DAS=デュアル・アクシス・ステアリング」についてメルセデスは、統括団体である国際自動車連盟(FIA)からのお墨付きを得ており合法だと主張してるが、ライバルのレッドブル・レーシングは疑いの目を向けている。

このシステムは、ステアリングを前後に操作することによって、トー角(クルマを真上から見下ろして見た場合のタイヤと車軸との角度)を調整する働きがあると考えられており、上手く機能すればストレートでトップスピードを稼いだり、タイヤをより長く保たせる事が可能になるとみられている。

レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは独Auto Bildとのインタビューの中で「ドライビング中にホイールのキャンバー角またはトー角を調整すれば、タイヤと地面との接触面が変化することになる」と指摘する。

「それによってほんの僅かではあるものの車高が変わる事になる。しかしながらこれはルール上違法だ。アクティブサスペンションが持つワーキングメソッドに類似するコンセプトは禁止されている」

グランドエフェクトを用いてアンダーフロアでダウンフォースを生み出すには、マシンがどのような状態にあったとしてもライドハイトを一定に保つことが有効とされる。そんな背景から生み出されたアクティブサスペンションは開発コストが高く、チーム資本の大小が競争力の序列に直結する状況を生み出したため、1993年を最後に禁止される事となった。

レッドブルの顧問が疑惑を深める一方で、メルセデスのテクニカル・ディレクターを務めるジェームス・アリソンは「FIAはこのシステムを承知している。私の意見では、ステアリングホイールに関するルールは非常に明確であり、我々がそれに違反しているとは考えていない」と述べている。

レッドブルと同じくメルセデスのライバルであるスクーデリア・フェラーリのセバスチャン・ベッテルは、恩師ヘルムート・マルコとは異なりDASは合法だと考えているが、それが実際に効果的なのかどうかについては疑問に思っているようだ。

「ちょうど昼ごはんを食べていた時にその会話をしてたんだけど、興味深い仕組みだよね」とセバスチャン・ベッテル。

「個人的な見解だけど、メルセデスが実際にそれを稼働させてるわけだから合法なんだろうね。本当のところがどうかは分からないけどさ。というか、あれはステアリングホイールじゃなくてプッシュホイールというかプルホイールだよね!」

「効果があるのかどうかは分からない。あれを実用化するにはかなりの作業が必要だろうし、あれを上手く扱えるドライバーを探すのも大変だろうね。いずれは分かる事だけど。でもまぁ、僕らにとって目新しいものである事は確かだ」