
角田裕毅「ローラン加入以降はそんなに悪くない」残留に向けた決意、“鬼門モンツァ”への期待―ハジャー昇格論渦巻く中
2026年に向けたレッドブル・レーシングのドライバー選定が本格化する中、角田裕毅は、ローラン・メキーズがチーム代表として加わって以降の自身のパフォーマンスは「それほど悪くない」と述べ、これまでのやり方を大きく変えず、やるべきことを続けていくとの決意を示した。
初表彰台で加速するハジャー昇格論
角田の立場は微妙なものとなっている。前戦オランダGPでは、アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)がキャリア15戦目で初表彰台を獲得した。これを受けて、パドックでは来季のハジャー昇格を予想する声がこれまで以上に高まっている。
一方で、チームメイトのマックス・フェルスタッペンが開幕15戦を終えてドライバーズランキング3位につける中、角田はレッドブル昇格後に急激なパフォーマンス低下に見舞われ、フル参戦ドライバーの中で最下位の19位と、結果を残せない状況が続いている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
表彰台で歓喜する3位アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)
メキーズ加入以降の3戦に手応え
2026年に向けたシート維持のためには、モータースポーツ・アドバイザーのヘルムート・マルコやメキーズ代表ら首脳陣に対し、自身の存在価値をアピールする必要があると角田は考えている。ただ同時に、現状でも自らの走りに一定の手応えを得ていると強調する。
第16戦イタリアGPを前に角田は、首脳陣に印象付ける必要性について問われ、次のように答えた。
「毎レース、心がけています。常に可能な限りの結果が求められます。期待以上の結果を残せるよう、自分がやっていることをやり続けていくつもりですが、今のやり方を大きく変える必要はないと思っています」
「ローランが加わってから、僕の結果は実際そんなに悪くはありません。もちろん、それで十分かどうかを決めるのは僕ではありませんので、僕としては今後もプッシュし続けるだけです」
メキーズ体制下での変化と角田の成績
レーシング・ブルズ時代の上司であるメキーズが7月にチーム代表としてレッドブルに加わったことで、状況は変わりつつあるように見える。
メキーズはマルコに対し、来季に向けた角田の去就を早期に判断しないよう働きかけていると見られている。また、角田に公平なチャンスを与えるため、チームメイトとのマシンスペック格差が生じぬようリーダーシップを発揮したとも伝えられている。
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ガレージでチームと話すローラン・メキーズ(レッドブル・レーシング代表)、2025年9月4日(木) F1イタリアGPプレビュー(モンツァ・サーキット)
メキーズの初陣となったベルギーGPでは、予選を前に新型フロアが投入され、角田は7戦ぶりのQ3進出を果たした。フェルスタッペンとの差も0.357秒に抑えたが、決勝では「意思疎通」の問題により入賞を逃した。
続くハンガリーGPでも、フェルスタッペンにわずか0.163秒差まで迫る走りを披露したが、RB21の競争力不足に阻まれ、Q2進出は叶わなかった。決勝ではパーツ脱落の不運も重なり、再びノーポイントに終わった。
そしてオランダGPでは、Q1で好走を見せながらも、Q2では手応えとは裏腹にタイムが伸びないという「奇妙」な事態に直面し、12番手にとどまった。それでも決勝では、ペダルマップの問題や不運なセーフティーカー(SC)導入といった逆境を乗り越え、8戦ぶりにポイントを獲得した。
RB21への適応と手応え
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ジョージ・ラッセル(メルセデス)から順位を守る角田裕毅、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)
角田はRB21への適応状況について「最初の数戦は結果には表れていないと言えるかもしれませんが、少なくとも自分の感覚としては、このクルマに乗った最初の日から進歩を実感していましたし、正しい方向に向かっているとの確信の上で、一歩一歩進めてきました」と説明する。
「シーズン途中での移籍は簡単ではありませんし、レッドブル・チーム内でも多くのことが変わりました。なので、毎レース、全力を尽くしています」
「特にここ数戦は、徐々に(フェルスタッペンとの差を)詰めていけていると感じています。フィールド全体が本当にタイトなので、予選ではすべてをまとめ上げることが重要です。Q1、Q2、Q3のどの段階でも、ミリ秒単位の違いが問われます。ザントフォールトではその点において全てをまとめ上げることができました。週末を通しての進歩とクオリティという点で、最も良い週末のひとつでした」
「セーフティーカーが出たりと、レースは楽ではありませんでしたが、ポイントを掴み取れたので、それについては本当に満足しています」
鬼門モンツァ、流れを変えられるか
Courtesy Of Haas
モンツァ・サーキットのターン1で角田裕毅(RBフォーミュラ1)に接触するニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)、2024年9月1日F1イタリアGP
今週末の舞台となるモンツァ・サーキットは角田にとって鬼門だ。2021年のデビュー以来、4大会連続でポイントを逃し、うち2回はマシントラブルによる出走不能、1回は接触によるリタイアを強いられている。
角田はこの点に触れて「今年はそうならないことを願っています」と前置きし、「それでもサーキット自体はすごく好きなんです。(クルマに対する)自信が問われるという意味で非常にチャレンジングなコースで、自信が持てれば速く走れます。他のコースと比べてレースができるという点でも、すごく楽しみにしています」と前を向いた。
直近の3戦で予選パフォーマンスを改善し、オランダGPでポイントを獲得したことは、メキーズ体制下での前進を示す材料といえる。他方、パドックでハジャーの昇格機運が高まる中、継続的な入賞と明確な上積みを可視化することが、首脳陣への最も強力なアピールになると見られる。今週末のモンツァでは、改善の継続性を示せるかどうかが焦点となる。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ピットレーンで自転車に乗る角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年9月4日(木) F1イタリアGPプレビュー(モンツァ・サーキット)
コラピント後任としてのアルピーヌ移籍の可能性
フランスの自動車専門誌『オートヘブド』を含め、角田の来季去就については、事実上唯一の空きシートを持つアルピーヌへの移籍の可能性を指摘する識者も出始めている。フランコ・コラピントの後任候補として名前が挙がっていたセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスはいずれもアルピーヌの誘いには応じず、キャデラックを選択した。
アルピーヌのWECプロジェクトに参加しているミック・シューマッハも選択肢の一人となり得るが、彼はF1復帰を視野に入れつつ、2027年からLMDhハイパーカーでWECに参戦予定のマクラーレンと「前向きな交渉中」と報じられている。そのため、経験を重視するなら角田が唯一の適任という状況だ。