
F1開幕戦に「幻の3人目のメルセデスドライバー」現る?”アップデート”が追いつかないウォルフの脳内
メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは、2025年F1開幕戦オーストラリアGPの最中に、ルイス・ハミルトンがまだメルセデスのドライバーであると錯覚する瞬間があったと告白した。
7度のF1ワールドチャンピオンは12年間を過ごした古巣メルセデスを離れ、今季に向けてスクーデリア・フェラーリへ移籍した。しかし、ウォルフの意識にはまだ「ハミルトン=メルセデス」という感覚が残っており、完全には”アップデート”されていないようだ。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
ファンと写真撮影するメルセデスのトト・ウォルフ代表、2025年3月13日F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)
F1公式サイトによるとウォルフはレース後、「モニターを見ていたら、まるでメルセデスに3人のドライバーがいるように見えたんだ」と振り返った。
「”RUS”(ラッセル)、”ANT”(アントネッリ)、そして(無意識に)”HAM”(ハミルトン)のデータを追っていてね。でも、途中で『あぁ、”HAM”はもうフェラーリのドライバーだった』って気づいたんだ」
「長年共に戦ってきたわけだし、彼の動向はやはり気になる。今でも彼のことはすごく気にかけているけど、コース上ではライバルチームの一員だ。だから我々は競争相手として彼を打ち負かさなければならない」
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
ファンステージで観客に手を振るスクーデリア・フェラーリのシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトン、2025年F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)
メルセデス、開幕表彰台も「3番目のチーム」
雨とクラッシュが相次いだアルバートパーク・サーキットでの開幕戦では、メルセデスの両ドライバーが堅実な走りを披露。ジョージ・ラッセルは3位表彰台を獲得し、デビュー戦のアンドレア・キミ・アントネッリも4位(当初は5位もペナルティ撤回で4位に)でフィニッシュした。
一方で、フェラーリへ移籍したハミルトンも奮闘したが10位に沈み、1ポイントを持ち帰るにとどまった。シャルル・ルクレールも8位と、フェラーリは終盤のインターミディエイトタイヤへの交換タイミングを誤り、ティフォシの期待には応えられなかった。
メルセデスは開幕戦を終えて、コンストラクターズランキングで首位に立ったマクラーレンと同一ポイントで並び、順調なスタートを切った。しかし、ウォルフはマクラーレンの圧倒的なレースペースを受け、さらなる改善が必要だと強調した。
「結果だけを見れば3位と5位(ペナルティ適用前)だが、実際のレースペースを考えれば4位と5位が妥当だ」と指摘。「マクラーレンのタイヤマネジメントとパフォーマンスは非常に強力だ。本気で勝利やタイトル争いをするには、さらに改善が必要だ」と語った。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
表彰台で3位トロフィーを掲げるジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年3月16日F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)
また、ウォルフはレッドブルのセットアップ調整能力にも注目し、ライバルとの差を埋める必要があると指摘した。
「レッドブルは金曜には苦戦していたが、土曜には見事に巻き返した。彼らはマシンの最適解を素早く見つけ、適切な調整を加えていた」と分析。「タイヤマネジメントの観点で見れば、今回の順位はマクラーレン、レッドブル、メルセデスの順だった」と続けた。
今後の課題については「単純な1周のパフォーマンスでは競争力が増しているが、レースペースはまだ課題が残る」と指摘した。
今後のレースで、メルセデスはマクラーレンやレッドブルとの差をどこまで縮められるだろうか。「ハミルトンを忘れられない」ウォルフの脳内整理が終わる頃には、チームの調子も上向く…かもしれない。