ザントフォールト・サーキットのターン12でイン側からジョージ・ラッセル(メルセデス)へのオーバーテイクを試みるシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝

ルクレールとラッセル接触:FIA内で食い違う判定、メルセデスの“配慮”…微妙なケースとして決着

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2025年F1第15戦オランダGPで発生したシャルル・ルクレール(フェラーリ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)の接触は、FIA内で判定が食い違うという微妙なケースとなったが、最終的には「不問」、すなわちレーシングアクシデントとして処理された。

VSC解除直後に発生した接触

接触が起きたのは、コース上のデブリ回収に伴うバーチャル・セーフティーカー(VSC)が解除された直後のことだった。隙を見せたラッセルに対し、ルクレールはターン12で片輪をグラベルに落としながらイン側を強襲。両者は軽く接触しつつ、ルクレールが前へ出た。

ラッセルは無線で「彼はコース外に出た、間違いないだろ?」と抗議し、一方のルクレールは「彼はスペースを残さなかった。文句を言う資格はない」と応酬した。

FIA内で食い違う判定、そして下された”不問”

このインシデントを巡る焦点の一つは、ルクレールがコース外に出ていたかどうかだった。結果として、FIA内部でレースコントロールとスチュワードの判断が食い違う事態となった。

レースコントロールは、ルクレールがターン12でトラックリミット違反を犯したと判断し、32周目のラップを抹消した。だが、ペドロ・ラミーを含むスチュワード団は「利用可能な証拠では結論が出なかった」として、トラックリミット違反とは認めなかった。

なお公式文書上では今もなお、スチュワード名義でトラックリミット違反者の一覧が公開されており、その中には32周目のターン12でルクレールがコース外に出たと明記されている。

仮にスチュワードがこの場面を正式にトラックリミット違反と認定していれば、ルクレールには次戦イタリアGPでのグリッド降格が科される可能性が高かった。すでにフェラーリはルイス・ハミルトンが別件で5グリッド降格を受けており、ティフォシの前で両車そろっての降格という最悪の事態に直面する可能性があった。

スチュワードはトラックリミットの件を含め、ドライビング標準ガイドラインを踏まえて両者の走りを調査。最終的に「レーシングアクシデント」と結論付け、不問とする決定を下した。

レース後の聴聞では、両ドライバーもレーシングインシデントとの見解を示した。さらに両チームの代表者も、ルクレールがコースを外れた明確な証拠はないとの認識で一致した。

ウォルフが強硬姿勢を取らなかった理由

ただし、メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは「あのコーナーはイン側からオーバーテイクできる場所じゃない。ねじ込もうとすることはできても、絶対にうまくいかない。そういう意味ではシャルルのミスだったと言うべきだ」と指摘し、依然としてルクレールに非があるとの考えを示した。

ではなぜ、聴聞においてメルセデスは「レーシングアクシデント」に同意したのだろうか? それには事情があった。ルクレールはこの接触の後、ラッセルのチームメイトであるアンドレア・キミ・アントネッリに追突されてリタイアしていた。

ウォルフは「レース全体を踏まえての判断だ。我々のマシンとの接触でレースを失ったシャルルが、次のモンツァでグリッド降格になるのは望んでいない」と語り、あえて強硬に訴えなかった理由を説明した。


2025年F1第15戦オランダGP決勝レースでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)が続く結果となった。

モンツァ・サーキットを舞台とする次戦イタリアGPは、9月5日のフリー走行1で幕を開ける。

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