ザントフォールト・サーキットのターン1で接触するカルロス・サインツ(ウィリアムズ)とリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)、2025年8月31日(日) F1オランダGP決勝

サインツ、スチュワードとローソンを痛烈批判「深刻な懸念事項」として問題提起へ…オランダGPでの接触・裁定をめぐり

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リアム・ローソン(レーシング・ブルズ)との接触により、2025年F1第15戦オランダGPで10秒ペナルティが科されたことを受け、カルロス・サインツ(ウィリアムズ)は「完全な悪ふざけ」と裁定を強く非難し、F1のスチュワーディング水準そのものに疑問を投げかけた。

接触状況と裁定、その根拠

セーフティーカー(SC)明けの27周目のリスタート直後、サインツはターン1のアウト側からローソンに並びかけたが、その立ち上がりで右前輪がローソンの左後輪と接触。両者ともパンクを喫した。さらにサインツはフロントウイングを破損した。

サインツは無線を通して「こいつマジでバカだろ。毎回、こいつだよ」と怒りを爆発。自らではなくローソンが罰せられると予想していたが、スチュワードはサインツに接触の責任があると判断。10秒ペナルティを科した。最終的にローソンは12位、サインツは13位でレースを終えた。

ポルトガル出身の元F1ドライバー、ペドロ・ラミーを含む競技審判団は「ターン1のエイペックスにおいてサインツの前輪はローソンの前輪の前に出ていなかった」とし、ドライビング標準ガイドラインを根拠として「コーナーの権利はローソンにあった」と判断。サインツに「全責任または大部分の責任がある」と結論付けた。

サインツ「受け入れられない判定」

レース後、サインツは「今季ベストの週末のひとつを送っていたのに、あの接触でポイントを10点失った」と悔しさを吐露。さらにローソンのことを「あのドライバー」と呼び、「彼が他車と接触しそうな状況に自らを追い込むのは今回が初めてじゃない」「サイド・バイ・サイドのアクションすら許さない相手と戦わなければならなかった」と非難した。

「ここのターン1では、多くの優れたドライバーとサイド・バイ・サイドの戦いをしてきた。あそこは素晴らしいコーナーで、そういう動きができる場所なんだ。でも今日は、そうしたラインを選んだのに、相手がそれを受け入れず、むしろ接触のリスクを、多くのポイントを失う冒してきたんだ。チームメイト(アイザック・ハジャー)の方は表彰台争いをしていたのにね」

「だから本当に悔しいし、ガッカリしている。しかもその上で10秒ペナルティを科されるなんて、受け入れられないし、理解できない。説明が必要だ」

さらに英専門誌『Autosport』によれば、サインツは「もっと経験を積んで(冷静な判断力を)身につけてほしいものだ。今日のような不必要な走りは、あまりにも多くのポイントを失うリスクになるってことは理解しているだろうしね」とも語り、ローソンの経験不足が影響しているとの見方を示した。

ただし、サインツが最も不満を感じていたのはローソンではなくスチュワードだった。

「もし本気で僕に10秒の責任があると考えているなら、それはF1に必要なスチュワーディングのレベルとは言えない。これはドライバーとしても、GPDA(グランプリドライバーズアソシエーション)のディレクターとしても、深刻な懸念事項だ。この件は必ず提起するつもりだ」と語り、審判団の水準そのものに疑問を突きつけた。

アルボンも異議を表明、判断に波紋

チームメイトのアレックス・アルボンも裁定に異議を唱え、「僕に言わせれば、あれは明らかにリアムの責任だ」と言い切った。

「どうしてカルロスにペナルティが科されたのか理由が分からない。あの件に関して僕は、誰よりも良い場所から見ていたと思う」

「コーナーの中盤でリアムがステアリングを切ってカルロスを押し出したように見えた。カルロスに行き場はなかったと思う。こういう判断は確信が持てないならレース後に精査すべきだ。いずれにしてもこの決定は誤りだと思う」

オンボード映像には、ローソンがミラーを確認した直後に修正舵を当て、サインツの進路へと流れていった様子が収められており、これが接触の直接的な原因と見られている。

事案ごとの特異性を十分に考慮せず、拘束力を持たないガイドラインに固執して、画一的にサインツにペナルティを科した、との批判がスチュワードに向けられるのは避けられそうにない。今回の裁定を巡る波紋は、今後のスチュワーディングの在り方に一石を投じることになりそうだ。


2025年F1第15戦オランダGP決勝レースでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)が続く結果となった。

モンツァ・サーキットを舞台とする次戦イタリアGPは、9月5日のフリー走行1で幕を開ける。

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