カタロニア・サーキットで行われたF1スペインGPのパルクフェルメで話をする優勝者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と3位のルイス・ハミルトン(メルセデス)、2024年6月23日(日)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

Netflixが暴く─ウォルフがハミルトンと交わした「フェルスタッペンに関する約束」

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Netflixの人気F1ドキュメンタリーシリーズ「Drive to Survive」の最新シーズン(3月7日配信予定)で、ルイス・ハミルトンの影響力がメルセデスのドライバー選考にも及んでいたことが明らかになった。

シーズン7のエピソードでは、2024年シーズンを前にハミルトンがフェラーリ移籍を決断した後、メルセデスが後任ドライバーを検討する様子が描かれている。その中で、メルセデスのチーム代表トト・ウォルフがハミルトンに対し、彼がチームにいる限りマックス・フェルスタッペンと契約交渉しないと約束していたことが判明した。

メルセデスF1チーム代表を務めるトト・ウォルフと妻スージー・ウォルフ、2018年5月18日Courtesy Of Formula E

メルセデスF1チーム代表を務めるトト・ウォルフと妻スージー・ウォルフ、2018年5月18日

映像には、モナコのウォルフ夫妻の自宅のバルコニーで、トトが妻のスージー・ウォルフと2025年のドライバーラインナップについて話し合う場面が収められている。ウォルフは、チームリーダーとしてジョージ・ラッセルの資質を検討しながら、次のように候補者の名前を挙げた。

「カルロス(サインツ)には注目すべきだ。本当に素晴らしい走りをしている」

「フェルナンド(アロンソ)のレースペースとレースクラフトは今なお素晴らしい」

これに対し、スージーは「でもフェルナンドと長期契約を結んで新たな時代をスタートさせるつもりはないでしょう? それは暫定的な解決策よ」と指摘。続けて「マックスは選択肢ではないの?」と問いかけた。

ウォルフが「彼は選択肢の一人だと思う。でも、もしシーズンで全勝するような状況なら」と返すと、スージーは「去る理由はあまりないわね」と相づちを打ち、ウォルフは次のように続けた。

「マックスとは話していない。ルイスに彼とは話さないと約束していたからね。でも、今後は話をしてもいいだろう」

ハミルトンは過去に「どんなドライバーともチームメイトになることを厭わない」と語り、フェルスタッペンとの共演についても「100%歓迎する」としていたが、その一方で、「マックスの方が自分とチームメイトになりたがらないのではないか」とも指摘していた。

クラッシュを喫してモンツァ・サーキットのターン2出口のグラベルで折り重なるレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトン、2021年9月12日F1イタリアGP決勝レースにてCourtesy Of Daimler AG

クラッシュを喫してモンツァ・サーキットのターン2出口のグラベルで折り重なるレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトン、2021年9月12日F1イタリアGP決勝レースにて

ウォルフとハミルトンの間で交わされた「フェルスタッペンとは契約交渉しない」という約束の背景には、2021年のタイトル争いで激化した両者の確執があるとみられる。

2021年シーズンを通じ、ハミルトンはフェルスタッペンのアグレッシブなレーススタイルに不満を抱き、「ルールを守らないドライバーの一人」「僕は何度も衝突を避けたが、彼は限界を超えている」と公然と批判していた。

メルセデスの競争力が2022年以降に低迷し、両者の直接のライバル関係は次第に薄れたが、ウォルフがフェルスタッペン獲得を避けたという事実からも、その確執が根強く残っていたことがうかがえる。

結局、ウォルフはその後、フェルスタッペンのマネジメントチームと交渉を開始し、2024年前半に数回の会談が行われた。しかし交渉は難航し、夏のサマーブレイク中に話し合いは打ち切られた。最終的にメルセデスは、アンドレア・キミ・アントネッリをラッセルのチームメイトとして起用する決定を下した。