キレるのは「間違いなく欠点」と意気消沈する角田裕毅、これを慰めるオコンとフォロー?するフェルスタッペン
F1第10戦イギリスGPでの同士討ちについてスクーデリア・アルファタウリの角田裕毅は「F1キャリア最大のミスの一つ」であるとして、レース中にキレてしまうのは自身の欠点であり、今後に向けて改善する必要があると認めた。
シルバーストンでのレース序盤、角田裕毅はチームメイトのピエール・ガスリーを追い抜きにかかった際に接触。高ぶる感情を抑えきれずに無線で大声を上げた。スチュワードは「全面的な責任」があるとして、5秒ペナルティと2点のペナルティポイントを科した。
この接触でリアウイングを破損したガスリーはリタイヤを余儀なくされ、角田裕毅も車体にダメージを負って14位フィニッシュと、アルファタウリは2台が揃ってポイント圏内を走行しながら無得点に終わった。チームは「避けるべき動きだった」と諭した。
更に悪いことに、この接触によりコースに脱落したパーツは、首位を走行していたシニアチームのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のフロアに刺さった。フェルスタッペンは20%のピークダウンフォースを失い優勝のチャンスを逃した。
F1キャリア最大のミス
レッドブル・リンクで開催されるF1第11戦オーストリアGPを前に、イギリスでのレース後に行われたデブリーフィングの内容について問われると、角田裕毅は改めて反省の弁を口にした。
「あれは完全に僕のミスです。すぐにチームに、そして特にピエールに謝りました」
「ポイントを争っていただけに…当然、チームもガッカリしています。難しいレースになると予想していたシルバーストンでポイント圏内を走りながらもチャンスを失ってしまったわけで、すみませんでしたと言う他にありませんでした」
「おまけに僕のクルマの破片がマックスのクルマに刺さってしまい、僕にとっては本当に悪い1日になってしまいました」
角田裕毅はまた、一件が「F1キャリアの中で最も大きなミスの一つである事は間違いありません」と語った。
心理学者と共にメンタル改善へ
姉妹チームだけでなく、シニアチームのポイントまでをも失う事となったシルバーストンでの週末を経て、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、角田裕毅がその激しい気性をコントロールしていくための手助けとして、心理学者を雇った事を明らかにした。
これについて角田裕毅は、F2時代からメンタル面でのトレーニングを受けていた事を明かした上で、チームが雇い入れた新たなトレーナーと共に、自らを律する事ができるよう取り組んでいく決意を口にした。
「F2の時から既に、他の心理学者兼トレーナーと一緒に取り組んでいました。パフォーマンスと一貫性の向上という点でも、F1へのステップアップという面でも助けになってくれました。彼と一緒に仕事ができて本当に良かったです」
「チームがもう一人の新しい心理学者兼トレーナーを雇ったのは4戦前のことでした。今の時点でそれが上手くいっているかどうかは分かりません」
「上手くいっているのであれば僕はクラッシュしていないかもしれないわけで、もう少し時間をかける必要があります」
「というのも、彼には僕の事をもっと理解するための時間が必要ですし、僕らもまた、これから進むべき方向性を理解しなければならないからです」
「とは言え、クルマの中でカッとなってしまう事は確かに欠点の一つです。幾らかはマシになりましたが、もっと一貫性を備えるために、自分の中のそういった部分を改善していかなければならないと思っています」
「ですので、新しいトレーナーと共に上手くやって、今後に向けて良い仕事ができることを期待しています」
なお、完全に意気消沈した様子の角田裕毅に対し、隣に座っていたエステバン・オコン(アルピーヌ)は「僕らはキミの事が大好き(love)だから」と肩を叩き慰めた。角田裕毅に笑顔が戻った。
ヘルムート・マルコは角田裕毅を「問題児」と形容したものの、決して怒った素振りではなく、出来の悪い息子を持て余すように笑いながらそれを口にしており、オコンの言葉を借りれば、その様子は角田裕毅に対する”愛”を感じさせるものだった。
角田裕毅は内省と消化の十分な時間もないままにオーストリアGPに臨むことになるが、レッドブル・リンクは過去に好成績を残してきたコースであり、ポイント獲得に向けて気持ちを切り替えている。
「楽しみにしています。去年はここで良いレースができましたし、予選も良かったですしね。コースもそうなのですが、この国の雰囲気も本当に素晴らしいんです」
「なので特に僕としては、良いパフォーマンスを発揮して、またチームのためにポイントを獲得できればと思っています」
腹を立てなくなったらおしまい、とフェルスタッペン
気性の荒さという点で思い浮かぶのはフェルスタッペンだ。キャリア初期は特に、コースの内外を問わず攻撃的な言動を繰り返していたが、フェルスタッペンによると興味深いことに、ヘルムート・マルコは自身にメンタルトレーナーの類を付ける事はなかったという。
この対処の違いは、感情の高ぶりが個人のパフォーマンスに悪影響を及ぼすか否か、という点からくるものなのかもしれない。
フェルスタッペンは「フリー走行中であれなんであれ、腹を立ててもチームの助けになることはないと思う。みんなが少しナーバスになって、全体的なパフォーマンスにも支障をきたすからね」とした上で、今でも無線で怒りをあらわにする事があると認める一方、自身のパフォーマンスに影響する事はないと説明した。
フェルスタッペンはまた、感情的である事が必ずしも悪い事であるとは考えておらず、「もし腹が立たなくなる日が来るとすれば、それはこのスポーツへの興味を失った」証だとして、レース中に感情が爆発しなくなれば、それはF1の辞め時だとの考えを示した。
「自分のリザルト、そして週末のパフォーマンスや結果を気にしているからこそ、時に腹を立てたりする事もあるわけだよ」