
ノリス・ピアストリ交代令が「厄介な前例」に? マクラーレンに”危うさ”を見るウォルフ
メルセデスのトト・ウォルフ代表は、2025年F1第16戦イタリアGPでマクラーレンがランド・ノリスとオスカー・ピアストリの順位を入れ替えた判断について、将来的に「厄介な前例」になりかねないと警告した。
モンツァでは、ピアストリの3位を確実にするため、取り決めとは逆にピアストリの後にノリスをピットに入れた。だがノリスのタイヤ交換で遅れが生じ、その結果ピアストリが順位を逆転。これを受けマクラーレンは、順位を返すようピアストリにチームオーダーを出した。
これにより、ノリスはタイトル争いでピアストリとの差を31点に縮めた。チームオーダーがなければ、選手権首位のピアストリがリードを広げ、差は37点に達していた。
英専門メディア『The Race』によれば、ウォルフは「興味深いのは、これがどういう結末を迎えるかだ」とした上で、次のように語った。
「一旦、前例を作ってしまうと、それを覆すのはかなり難しい。チームが再び別のミスをしたらどうするのか? それがピットストップ以外のミスだった場合でも順位を入れ替えるのか?」
「“チームのミス”とは何か? マシンがスタートしなくて順位を落としたら? サスペンションが壊れたら? そうした時も順位を戻すのか? こうして連鎖的に前例が積み重なると、管理するのが本当に難しくなるんだ」
一方で「チームのミスによって、追い上げを狙うドライバーが不利益を被るのも不公平だ」とも語り、判断の難しさを認めた上で「今回のチームオーダーが正しかったのかどうかの答えは、シーズン終盤にタイトル争いがヒートアップした時に出ると思う」と見解を示した。
ウォルフ自身、2016年にルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグによる激しいチーム内タイトル争いを経験している。当時のメルセデスは、マクラーレンのように頻繁に介入するのではなく、接触が起きた時だけ介入するアプローチを採用していた。
「ニコとルイスはまったく異なる“獣”で、互いに一切容赦しなかった」とウォルフは振り返り、ドライバー個人よりもチームの利益を優先すると公言しているノリスとピアストリの関係性とは対照的だと指摘した。
最後にウォルフは「最も大事なのは明確な戦略を持つことだ。競わせるのか、公平性を考慮してバランスを取るのか。どちらの道を選ぶかはっきり決めるべきだ――これは贅沢な問題だ。彼らはもう選手権を失うことはないのだから」と付け加えた。
2025年F1第16戦イタリアGPでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がキャリア通算66勝目をポール・トゥ・ウインで飾った。2位はランド・ノリス、3位はオスカー・ピアストリと、マクラーレンがダブル表彰台に上がった。
バクー市街地コースを舞台とする次戦アゼルバイジャンGPは、9月19日のフリー走行1で幕を開け、9月21日に決勝レースが行われる。