ハンガロリンク

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サーキットデータ
サーキット名ハンガロリンク
所在国ハンガリー
住所H-2146 Mogyoród, Pf. 10. cím: 2146 Mogyoród, Hungaroring út 10, Hungary
設立年1986年
設計ヘルマン・ティルケ
最大高低差35m
周回数70
ターン1までの距離*1472m
平均速度187km/h
最高速度316km/h
変速回数57回/周
SC導入率20%
ウェット確率32%
全長 / コーナー数4,381m / 16
ピット長 / 損失時間365m / 16秒
エンジン負荷と全開率*2 58%
ブレーキ負荷と使用率 16%
燃料消費レベルと量 1.50kg/周
フューエル・エフェクト 0.39秒/10kg
タイヤ負荷レベル
ダウンフォースレベル
WEBサイト hungaroring.hu
SNS instagram

*1 ポールから最初の制動地点までの距離*2 全開率は時間ベース

ハンガロリンク(Hungaroring)は、ハンガリーの首都ブダペストから北東に約20kmのモジョロードに位置するレーシングサーキット。F1ハンガリーGPの開催地として知られ、2032年までの契約が締結されている。

かつては、シーズン中のテスト開催地としても利用されてきた。伝統的に前半戦最後のグランプリとして開催されることが多く、チームやドライバーにとっては夏休みの始まりを告げる節目のラウンドでもある。

ハンガロリンクのターン12から見るターン11側、2022年7月28日F1ハンガリーGPCourtesy Of Alfa Romeo Racing

ハンガロリンクのターン12から見るターン11側、2022年7月28日F1ハンガリーGP

2021年7月31日のWシリーズ第4戦ハンガロリンクの決勝レースをリードするジェイミー・チャドウィックCourtesy Of Williams

2021年7月31日のWシリーズ第4戦ハンガロリンクの決勝レースをリードするジェイミー・チャドウィック

コースレイアウト

1周が4.381kmと短く、ストレートと呼べる直線区間は全長908mのホームストレートのみ。残りは、うねるように連なるタイトな低中速コーナーで構成されており、リズムと精密な操縦が求められるテクニカルなサーキットだ。

そんなハンガロリンクをフェルナンド・アロンソは「巨大なカートコース」と評する。

ハンガロリンクのコースレイアウト図(F1ハンガリーGP)

全14のコーナーのうち、6つが左、8つが右コーナーで構成されている。その多くが複合コーナーで、リズムよく切り返す俊敏な方向転換が要求される。DRSゾーンはホームストレートとターン1~2の2箇所に設置される。

特徴

丘陵地(標高264m)に建設されたため、比較的高低差が大きく、サーキット中心部標高が最も低い”お椀状”のフォルムを持つ。そのため、どこに陣取ってもコースの約80%近くを見渡すことが出来る観戦にもってこいのサーキットとしても知られる。

使用頻度が少ないため、例年、グランプリ初日金曜の路面は非常に汚く、トラックエボリューションが大きい。

エンジンパワーよりも車体性能

直線区間が1箇所のみ、かつ低中速コーナーが主体であるため全開率が低く、エンジン性能差が露呈しにくい。エンジンパワーで劣るチームにとって大きなチャンスとなる。ハンガロリンクより全開率が低いのはシンガポールとモナコのみだ。

チームは最大ダウンフォースレベルのパッケージで週末に臨むため、最高速度は時速318kmに過ぎず、F1カレンダーの中で最もトップスピードが低い部類に属する。平均速度も197km/hと低い。

1ラップ中のストレート走行時間は10秒程度に過ぎず、残りの65秒程度はコーナリングに費やされる。そのためドライバーへの身体的要求が厳しい。

1周あたりの燃料消費量は1.5kgと、燃費は問題とならないが、ブレーキングポイントが少ないためエネルギー回生が不足気味となる。

困難なオーバーテイク「壁のないモナコ」

コース幅が狭くストレートが短いため追い抜きが困難な事で知られる。1986年の第1回大会では44回、2011年には47回、2014年には49回のオーバーテイクが記録されており、時に順位の入れ替えが激しいレースもあったが、2001年は2回、2002年に至っては1回に留まった。

追い抜きが難しいという点で、ハンガロリンクは「壁のないモナコ」と形容される。ただし、ブレーキング勝負に持ち込めるようなマシンであれば、ターン1・2が有望なオーバーテイクポイントとなる。

ハンガロリンクの1コーナー
© FOTO STUDIO COLOMBO PER PIRELLI MEDIA / 1コーナーに侵入するF1マシン

オーバーテイクの少なさ故にコース上でのアクションが少なく、ファンにとって退屈でつまらないレースとなりがちであるが、ロングストレートがなくタイトなコーナーが連続するため、ドライバーにとっては一瞬たりとも気が抜けない極めてテクニカルなサーキット。1つのコーナーでのミスが次のコーナーに直結するため、些細なエラーが大きな命取りとなる。

ターン1のブレーキングポイントまで距離が387.84mと比較的長く、レーシングライン側の奇数列スタートがアドバンテージを得る。スタート直後のオーバーテイクには要注目だ。

追い抜き リタイヤ ピット回数
通常 DRS 接触 故障
2025
2024 4 29 0 1 40
2023 2 14 2 0 36
2022 9 48 0 1 42
2021 2 13 7 0 52
2020 13 20 0 1 45
2019 1 26 0 1 24
2018 1 17 1 2 20

予選順位が重要

オーバーテイクが非常に困難なハンガロリンクでは、予選順位とレース戦略が決勝順位に大きく影響を与える。過去39回のレースのうち、フロントロウスタートでの勝利は実に24回(約62%)に及ぶ。ポール・トゥ・ウインは16回(約41%)であり、4番グリッド以下からの勝利は僅か4回にとどまる(いずれも2024年大会終了時点)。

1周の距離が短く、大部分がコーナーとなるため、予選ではトラフィックを如何にうまく処理できるかが鍵となる。優勝候補のドライバーであっても、渋滞に巻き込まれてアタックラップを阻まれ、十分なタイムを出せないこともしばしばある。そのため、時折大きな番狂わせが起こるのもこのサーキットの特徴だ。

また、地理的な影響もあり天候が不安定で、2006年、2011年、2014年にはウェットレースが行われている(2020年6月現在)。中でも2006年はジェンソン・バトンが14番グリッドから優勝を果たしており、ハンガロリンクでのF1史上、最も後方グリッドからの勝利という記録を打ち立てた。

なお、低速サーキットであることから、クラッシュなどのアクシデントが発生しても深刻な事故に至る可能性は比較的低い。

厳暑とレイアウトが突きつける冷却の壁

ハンガリーGPは年間で最も暑い時期に開催されるため、気温は平均して25℃前後、路面温度は最高で50℃を超えることもある。

ロングストレートが存在せず、1周あたりの平均速度も低いため車体に当たる空気も少なく、ブレーキやパワーユニットの冷却が極めて難しい。さらに、1ラップ中に6つのブレーキングゾーンがあることから、特にブレーキへの負荷が大きく、信頼性と温度管理が勝負を左右する要素となる。

タイムアップの鍵

全開で駆け抜けるターン4でのライン取りが重要で、いかに縁石をうまく使えるかが、続くターン5への進入に大きく影響する。セクター2はあらゆる速度域のコーナーが含まれるため、ダウンフォースとマシンの応答性、そしてドライバーとしてはリズムを掴むことが求められる。

低速コーナーが多いため、特にリアタイヤへの負荷が大きい。コーナー進入時の安定性と脱出時のトラクション性能、そして完璧なラインを実現するための優れたドライバビリティを備えたパワーユニットとシャシーが不可欠だ。

このサーキットではレース開催頻度が少ないため、週末初めは路面が汚れていてグリップが低く、セッションを重ねるごとに路面が改善され、タイムアップに繋がっていく傾向がある。

政治的背景

ハンガリーで最初にグランプリが開催されたのは1930年代だったが、第2次世界大戦や「鉄のカーテン」の影響により、1960年代後半までモータースポーツは大きく制限されていた。

1986年に開業したハンガロリンクは、以降一度もF1カレンダーから外れることなく継続的にレースが行われてきた。当時は冷戦下にありながら、東欧圏で初めてF1グランプリが開催されたことで世界中から注目を集め、政治的にも象徴的な意義を持つイベントとなった。

フェリペ・マッサの事故が生んだヘイロー

2009年のF1ハンガリーGP予選では、ルーベンス・バリチェロ(ブラウンGP)の車体から脱落したヒーブダンバーのスプリングが後続のフェリペ・マッサ(フェラーリ)のヘルメットを直撃する事故が発生した。

意識を失ったマッサは時速250kmという高速のままターン4にクラッシュ。額や頭蓋骨に損傷を負って緊急手術を受けた。復帰には半年以上を要する事となり、左目上に位置する頭蓋骨には今もプレートが埋め込まれている。

この事故をきっかけに国際自動車連盟(FIA)はドライバーの頭部保護デバイスの開発に力を入れるようになり、2018年のヘイロー導入という形で9年越しの実現を見る事となった。

レッドブル・ホンダRB16のコックピット、ヘイロー、インダクションポッド、リアビューミラー等Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・ホンダRB16のコックピット、ヘイロー、インダクションポッド、リアビューミラー等

ホンダの思い出の地

第一期マクラーレン・ホンダ時代の1991年第10戦ハンガリーGPでは、直前に逝去した本田宗一郎氏を追悼するため、アイルトン・セナをはじめとするマクラーレン・ホンダのチーム全員が喪章を着用してサーキット入りした。セナは5戦ぶりに予選でポールポジションを獲得し、レースでも一度も首位を譲ることなく完勝。久々の勝利をホンダの創業者に捧げた。

また、ハンガリーGP史上初のウエットレースとなった2006年のグランプリでは、多くのマシンがクラッシュやアクシデントでリタイアする波乱の展開の中、ジェンソン・バトンが冷静な走りで混乱を制し、自身および第3期ホンダにとっての初優勝を飾った。

コースレコード

タイム ドライバー チーム
ラップレコード 1:16.627 ルイス・ハミルトン メルセデス 2020年
コースレコード 1:13.447 ルイス・ハミルトン メルセデス 2020年

F1ハンガリーGP歴代ウィナーとポールシッター

開催年 ドライバー チーム タイム
2025 優勝
ポールポジション シャルル・ルクレール フェラーリ 1:15.372
2024 優勝 オスカー・ピアストリ マクラーレン 1:38:01.989
ポールポジション ランド・ノリス マクラーレン 1:15.227
2023 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:38:08.634
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:16.609
2022 優勝 マックス・フェルスタッペン レッドブルRBPT 1:39:35.912
ポールポジション ジョージ・ラッセル メルセデス 1:17.377
2021 優勝 エステバン・オコン アルピーヌ・ルノー 2:04:43.199
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:15.419
2020 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:36:12.473
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:13.447
2019 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:35:03.796
ポールポジション マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダ 1:14.572
2018 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:37:16.427
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:35.658
2017 優勝 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:39:46.713
ポールポジション セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:16.276
2016 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:40:30.115
ポールポジション ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:19.965
2015 優勝 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 1:46:09.985
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:22.020
2014 優勝 ダニエル・リカルド レッドブル・ルノー 1:53:05.058
ポールポジション ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:22.715
2013 優勝 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:42:29.445
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:19.388
2012 優勝 ルイス・ハミルトン マクラーレン・メルセデス 1:41:05.503
ポールポジション ルイス・ハミルトン メルセデス 1:20.953
2011 優勝 ジェンソン・バトン マクラーレン・メルセデス 1:46:42.337
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:19.815
2010 優勝 マーク・ウェバー レッドブル・ルノー 1:41:05.571
ポールポジション セバスチャン・ベッテル レッドブル・ルノー 1:18.773
2009 優勝 ルイス・ハミルトン マクラーレン・メルセデス 1:38:23.876
ポールポジション フェルナンド・アロンソ ルノー 1:21.569
2008 優勝 ヘイキ・コバライネン マクラーレン 1:37:27.067
ポールポジション ルイス・ハミルトン マクラーレン・メルセデス 1:20.899
2007 優勝 ルイス・ハミルトン マクラーレン・メルセデス 1:35:52.991
ポールポジション フェルナンド・アロンソ マクラーレン・メルセデス 1:19.674
2006 優勝 ジェンソン・バトン ホンダ 1:52:20.941
ポールポジション キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 1:19.599
2005 優勝 キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 1:37:25.552
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:19.882
2004 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:35:26.131
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:19.146
2003 優勝 フェルナンド・アロンソ ルノー 1:39:01.460
ポールポジション フェルナンド・アロンソ ルノー 1:21.688
2002 優勝 ルーベンス・バリチェロ フェラーリ 1:41:49.001
ポールポジション ルーベンス・バリチェロ フェラーリ 1:13.333
2001 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:41:49.675
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:14.059
2000 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:45:33.869
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:17.514
1999 優勝 ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:46:23.536
ポールポジション ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:18.156
1998 優勝 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:45:25.550
ポールポジション ミカ・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1:16.973
1997 優勝 ジャック・ヴィルヌーヴ ウィリアムズ・ルノー 1:45:47.149
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:14.672
1996 優勝 ジャック・ヴィルヌーヴ ウィリアムズ・ルノー 1:46:21.134
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:17.129
1995 優勝 デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:46:25.721
ポールポジション デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:16.982
1994 優勝 ミハエル・シューマッハ ベネトン・フォード 1:48:00.185
ポールポジション ミハエル・シューマッハ フェラーリ 1:18.258
1993 優勝 デイモン・ヒル ウィリアムズ・ルノー 1:47:39.098
ポールポジション アラン・プロスト ウィリアムズ・ルノー 1:14.631
1992 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:46:19.216
ポールポジション リカルド・パトレーゼ ウィリアムズ・ルノー 1:15.476
1991 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:49:12.796
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:16.147
1990 優勝 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズ・ルノー 1:49:30.597
ポールポジション ティエリー・ブーツェン ウィリアムズ・ルノー 1:17.919
1989 優勝 ナイジェル・マンセル フェラーリ 1:49:38.650
ポールポジション リカルド・パトレーゼ ウィリアムズ・ルノー 1:19.726
1988 優勝 アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:57:47.081
ポールポジション アイルトン・セナ マクラーレン・ホンダ 1:27.635
1987 優勝 ネルソン・ピケ ウィリアムズ・ホンダ 1:59:26.793
ポールポジション ナイジェル・マンセル マクラーレン・ホンダ 1:28.047
1986 優勝 ネルソン・ピケ ウィリアムズ・ホンダ 2:00:34.508
ポールポジション アイルトン・セナ ロータス・ルノー 1:29.450

サーキットの場所と地図

例年フィンランドのファンが多く訪れ、キミ・ライコネンやバルテリ・ボッタスを応援する旗がスタンドを覆う。

写真

水しぶきを上げながらスタートするF1マシン、2020年F1ハンガリーGP決勝レーススタート直後のホームストレートCourtesy Of Daimler AG

水しぶきを上げながらスタートするF1マシン、2020年F1ハンガリーGP決勝レーススタート直後のホームストレート

F1ハンガリーGP決勝レース スタート直後のハンガロリンクCourtesy Of Red Bull Content Pool

F1ハンガリーGP決勝レース スタート直後のハンガロリンク

ハンガロリンクの1コーナーCourtesy Of FOTO STUDIO COLOMBO PER PIRELLI MEDIA

ハンガロリンクの1コーナー

ハンガロリンクの最終コーナーCourtesy Of FOTO STUDIO COLOMBO PER PIRELLI MEDIA

ハンガロリンクの最終コーナー

ハンガロリンクのホームストレートCourtesy Of Renault Sport

ハンガロリンクのホームストレート

厚い雲に覆われたハンガロリンクcopyright Pirelli & C. S.p.A.

厚い雲に覆われたハンガロリンク

ハンガロリンクのターン2、2021年7月29日F1ハンガリーGPにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ハンガロリンクのターン2、2021年7月29日F1ハンガリーGPにて