レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレス、2022年11月13日F1サンパウロGP決勝レース
Courtesy Of Red Bull Content Pool

ペレスとの軋轢…発端は故意クラッシュ? 「二度と言うな」頑なに指示無視したフェルスタッペン

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F1サンパウロGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が僚友セルジオ・ペレスに順位を明け渡せとのチームオーダーを断固として拒否したのは、今季のモナコGP予選での一件が発端だった可能性がある。

インテルラゴスでペレスは、6点差でドライバーランキング2位の座をシャルル・ルクレール(フェラーリ)から防衛する立場にあった。ルクレールがより上位でフィニッシュする見通しであったため、レッドブルは順位の入れ替えを2度に渡って指示したが、フェルスタッペンは無視し続けた後「二度と言うな」と突っぱねた。

故意のクラッシュが発端、との報道

フェルスタッペンは詳細に踏み込む事を拒否しているが、オランダの複数の情報筋によると今回の衝撃的な行動は、今年5月のモンテカルロでの「故意」によるクラッシュに対する仕返しだった可能性がある。

今年のモナコGPの予選でペレスは、フェルスタッペンを上回る3番手を獲得し、レースではフェラーリ勢を交わして初のモナコウィナーに輝いたが、予選で一悶着あった。

Q3の1回目の計測ラップを終えて3番手につけていたペレスは最終アタックでリアを失い、車体左後方からポルティエ(ターン8)のバリアに衝突。これに後続のカルロス・サインツ(フェラーリ)が追突して赤旗が振られた事で、フェルスタッペンは逆転のチャンスを奪われた格好となった。

伝えられるところによるとペレスは予選で「故意にクラッシュ」した。これに関してはチーム代表のクリスチャン・ホーナーもヘルムート・マルコも把握しているといい、フェルスタッペンはこれを根に持っているというのだ。

真偽の程は分からないが複数の情報源が明らかにしている。

ストリーミングサービス「Viaplay」で解説を務めるトム・コロネルがこれを伝え、フェルスタッペンに近い「Telegraaf」紙のジャーナリスト、エリック・ヴァン・ハーレンが事実だと保証し、BBCも追加取材の結果、そうした事実を掴んだと伝えた。

懸けていたのが優勝ならばまた話も変わってこようが、フェルスタッペンとペレスが争っていたのは6位だった。既にタイトルを手にしている以上、余程の理由があるか、あるいは尋常でない程に負けず嫌い、あるいは献身的意識が欠如しているとしか考えにくい。

握手も緊張悪化は不可避か

サンパウロでの物議を経てチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはSky Sportsとのインタビューの中で「話し合ってドライバー達は握手を交わした」として、次戦アブダビGPでフェルスタッペンはペレスのランキング2位獲得のために「何らかの形で助けてくれるだろう」と述べ騒動の収束を図ったが、関係悪化は避けられそうにない。

チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーと話をするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2022年11月11日F1サンパウロGP FP1Courtesy Of Red Bull Content Pool

チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーと話をするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2022年11月11日F1サンパウロGP FP1

チームオーダー拒否についてフェルスタッペンは「理由がある」とだけ述べ「明らかにするつもりがない」事を強調したが、過去の”とある出来事”に端を発するものである事は確かだ。

モナコ予選でのクラッシュが理由かと問われたフェルスタッペンは「どこでの一件かを答える必要はない」と返した。

仮にモナコの一件が事実であったとしても、ペレスがこれまでにフェルスタッペンのタイトル獲得に貢献してきた事は疑いようのない事実だ。特に、昨年末のアブダビでのルイス・ハミルトン(メルセデス)に対するディフェンスなくして戴冠なかった事はフェルスタッペン自身が認めている通りだ。

ペレスは、FOX Sportsとのインタビューの中で「彼のためにあらゆることをしてきたのに、どうして僕にポジションを明け渡さなかったのか理解できない。彼が2つの世界タイトルを持っているのだとすれば、それは僕の助けがあったからなのに」と不満を隠さなかった。

チームが目標として掲げている以上、ドライバーズランキング1-2フィニッシュに向けて死力を尽くすのはドライバーとしての当然の責務でもある。フェルスタッペンは必要とあらば、次戦アブダビでペレスをサポートする意思がある事を示しているが果たして。

なお順位を戻すとの約束を果たせなかった事についてチェッカー後に謝罪の言葉を口にしていたホーナーは、フェルスタッペンではなくペレスと並んで歩きインテルラゴスを後にした。

セルジオ・ペレス(レッドブル)とレースエンジニアのヒュー・バート、2022年11月12日F1サンパウロGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

セルジオ・ペレス(レッドブル)とレースエンジニアのヒュー・バート、2022年11月12日F1サンパウロGP

断固、指示無視したフェルスタッペン

サンパウロGPの決勝でペレスは一時、2番手を走行していたものの、デグラデーションに苦しみ終盤に向けてポジションを落としていった。加えて周囲とは対照的に、熱入れが悪い履き古したミディアムで終盤のセーフティーカー再開を迎えた事で、更に転落の一途を辿った。

一方のフェルスタッペンは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)との接触を経て後方から怒涛の巻き返しを図り、残り9周というタイミングでペレスを抜いて7番手に浮上した。

セルジオ・ペレス(レッドブル)をリードする僚友マックス・フェルスタッペン、2022年11月13日F1サンパウロGP決勝レースCourtesy Of Red Bull Content Pool

セルジオ・ペレス(レッドブル)をリードする僚友マックス・フェルスタッペン、2022年11月13日F1サンパウロGP決勝レース

この際ペレスには、レースエンジニアのヒュー・バードから、フェルスタッペンが前方のマシンを抜けなければ最後にポジションを戻すと伝えられていた。ただ、フェルスタッペンはペレスが好意で自身を先行させた事を知らされていなかった。

フェルスタッペンは最終周にジャンピエロ・ランビアーゼから繰り返し、ペレスに前を譲るよう指示を受けたが、フェルスタッペンはこれを無視してペレスの前、6位でチェッカーを受けた。当然に険悪なムードが流れた。

チームオーダーを無視した理由について問われるとフェルスタッペンは「前にも言っただろ。2度と言うなよ。いいな?」と突っぱね、ペレスは「本性があらわになった」と不満をぶちまけた。

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