ツインリンクもてぎでのMotoGP日本大会の中止が決まり、10月の鈴鹿F1日本グランプリ中止への懸念が高まる中、今年のイギリスGPは無観客どころか、会場入りするファンの数に制限を設ける事なく観客をフル動員する。

F1とシルバーストン・サーキットは第8戦シュタイアーマルクGPの開幕を翌日に控えた6月24日(木)、今年のイギリスGPが英国政府のイベント・リサーチ・プログラム（ERP）に含まれた事を受け、観客を総動員する計画を明らかにした。

ERPはイベントにおける新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の感染リスクに関するエビデンスを積み上げ、参加者が安全にイベントに参加できるような方法を科学的観点から模索する政府プログラムだ。

チケット所持者はサーキットで行われる「ラテラルフロー」と呼ばれる検査方法によって陰性である事を証明するか、またはイベント参加日の14日前までに2回目の予防接種を受けている事を証明できれば入場が認められるという。

F1のステファノ・ドメニカリCEOは「たゆまぬ努力を重ねて頂いたボリス・ジョンソン首相、オリバー・ダウデン国務長官、マイケル・ゴーブ国務長官、そしてシルバーストーンのマネージング・ディレクターであるスチュアート・プリングル氏に感謝したい。7月の開催が本当に待ち遠しい」と語った。

イギリスGPはパンデミック1年目の昨年も2レースを開催しているが、いずれも無観客だった。パンデミック以前の2019年大会では3日間を通して延べ35万1000人を動員。決勝レース当日だけでも14万1000人のファンがサーキットに訪れた。

6月28日に開幕を迎えるテニスのウィンブルドンもERPに選ばれ、決勝で観客を上限目一杯動員する事が決定しているが、今年のイギリスGPは昨年3月のパンデミック開始以来、英国で開催されるあらゆるスポーツイベントの中で最大規模のものになるものと見られる。

イギリスのみならず、政府主導によって早期のワクチン確保と接種を推し進めた一部先進国においては大規模イベントが復活し始め、マスクなしでの生活が徐々に取り戻されつつある。米国で今年5月に開催されたインディ500においては13万5000人もの観客が動員され、グランドスタンドには大勢のファンが押し寄せた。

こうした状況は日本とは対照的だ。

国民の8割が今夏の開催に反対し、感染症対策分科会の尾身茂会長が開催そのものに疑問を呈しながらも、主催者と政府は科学的根拠に基づく理由を説明する事なしに、7月23日の東京オリンピック開幕予定日に向け観客を動員しての開催の方向で準備を進めている。

他方、10月1日～3日に予定されていたMotoGP第15戦日本グランプリは6月23日に開催中止が発表され、ホンダF1にとっての鈴鹿ラストランとなる10月8日～10日のF1日本GP開催中止への懸念が高まっている。

F1イギリスGP特集