2018年F1レギュレーション

2018年F1レギュレーション – 知っておくべき変更点のまとめ

  • Updated:

史上最大のレギュレーション変更と謳われた去年とは対照的に、2018年のF1レギュレーションの変更は最小限に留められた。だが、レース結果を左右しかねない規約も多く、F1を120%楽しむためには是非とも知っておきたいものばかりだ。技術及び競技規約に加えられた主な変更点5つを確認してみよう。

2019年版F1レギュレーション変更点

1、エンジン使用制限の厳格化 – 年間3基

ホンダF1エンジン
© HONDA

注目すべき最も大きな変更は、パワーユニットに関する年間使用制限の厳格化だろう。マシン1台が一年間に使用できるエンジン数は、昨シーズンまでの4基から3基以下と削減される。F1パワーユニットは大きく分けて6つのコンポーネントから構成されており、レギュレーションでは各コンポーネントの交換可能回数に制限を定めている。

18年シーズンは史上最大の全21戦が予定されており、昨年の20戦を上回るイベントをより少ないエンジンで乗り切らねばならない。規定数以上の交換が発生した場合、グリッド降格のペナルティが科せられる。

3基まで使用可能なコンポーネント

6大コンポーネントの内、壊れやすく信頼性の確保が難しい以下の3種類の構成パーツについては、年間3基までの使用が許される。

  • ICE(内燃機関)
  • ターボチャージャー(TC)
  • MGU-H

昨年最も多くのICE・ターボ・MGU-Hを使用したのは、マクラーレン・ホンダのストフェル・バンドーンのマシンで、順に10基、12基、12基であった。ホンダは今年、昨年の3倍以上の信頼性を確保することが求められる。

2基まで使用可能なコンポーネント

比較的壊れにくいとされる以下のコンポーネントは、年間2基までの制限となる。

残念ながら、これら3つのコンポーネントの昨年のワースト使用数もバンドーン車であった。バンドーンは一年間に9基のMGU-K、7基のCE、7基のESを使用した。ESに関してはフェルナンド・アロンソ車がこれに並んだ。トロロッソ・ホンダがグリッド降格なしに今シーズンを終えるのは極めて難しいだろう。

信頼性とパフォーマンスの駆け引き

性能を最大限まで引き出して使用すれば、その分信頼性にリスクを抱える事になり、故障の可能性が高まる。逆に、信頼性を重視しすぎればパフォーマンスが制限されてしまう。

反比例する性能と信頼性という2つのパラメーターのバランスをどうマネジメントするのか?メーカーの力量が問われる。

アップデート機会の減少

制限強化によって、エンジンをアップデートする機会が減少する。改良版エンジンの投入は、新たなコンポーネントの使用を意味するため、無闇矢鱈とアップデートが行われる事はなくなり、これまで以上に計画的な運用が求められる事になる。

現行1.6リッターハイブリッドターボのパフォーマンスが臨界に達しつつある事も一因だが、シーズン中の劇的な性能向上を望むのはこれまで以上に難しくなるだろう。

2、ハロの導入

レース中に飛来するマシンパーツやデブリ等からドライバーの頭部を保護するため、今シーズンよりコックピット保護デバイス”ハロ“の導入が義務付けられる。3本のフレームから構成されるハロは、F1史上、マシンの外観に最も大きな影響を与えたデバイスとして記憶される事になるだろう。

F1に導入されるコックピット保護デバイス「ハロ」
© Getty Images / Red Bull Content Pool

本体以外にも取付金具や補強材などが必要とされるため、ハロ導入に際しては概ね15kg程度の重量増加が見込まれている。重量がラップタイムに与える影響は著しく、1kgの重量差は1周あたり0.03〜0.04秒のタイム差となって現れる。体重の重い長身ドライバーにとっては明らかに不利な状況が生まれる。

ハロは全チーム共通パーツであり、チームはFIAから生産権利を与えられたイギリス、ドイツ、イタリアの3メーカーの中から購入しマシンに装着する。チタン合金製のため加工が難しく、1つあたりの販売価格は1万5000ユーロ(日本円で200万円程度)になるものと見込まれている。

購入したハロへの一部加工が認められている事もあり、チーム独自の空力的なソリューションが期待される。昨シーズン中のフリー走行などでは、ハロの上面部分にフェアリングを装着しエアロ評価を行うチームが散見された。

空力に対するハロの影響は当初見込まれていた以上に大きく、独自ソリューション如何によって戦力図に変化が生まれる可能性も大きいため、各チームのハロの扱いに注目したい。

3、7種類に増加したタイヤコンパウンド

2018年シーズンに投入される7種類のピレリタイヤ
© pirelli

既存の5種類に加えて、桃色の「ハイパーソフト」と橙色の「スーパーハード」の2つの新しいコンパウンドが投入され、ピレリが供給するスリックタイヤは計7種類に増加する。各グランプリに持ち込まれるのはこの内3種類となっており、この点に関しての変更はない。

  • 橙色…スーパーハード
  • 水色…ハード
  • 白色…ミディアム
  • 黄色…ソフト
  • 赤色…スーパーソフト
  • 紫色…ウルトラソフト
  • 桃色…ハイパーソフト

コンパウンドの種類に関わらず、これら7つのタイヤは全て今年よりも柔らかめに製造され、より大きなグリップをマシンにもたらす。1周あたりコンマ5秒から1秒程度のラップタイムの向上が見込まれる。

昨年はワンストップのレースが多くを占め、2ストップ戦略が主流となったのは僅かに2レースのみ。素材のソフト化によってデグラデーションが悪化する事が予想される。これによって2ストップレースが増加すると共に、オーバーテイクチャンスも増えるだろう。

4、Tウィングとシャークフィンの禁止


©ScuderiaFerrari

「醜悪」とこき下ろされたシャークフィンTウイングが禁止される。F1は昨年、外観とタイム向上を目指してマシンとタイヤの幅広化を推し進めた。この施策は、マシン前方からの乱流を増加させる事につながり、その対策としてこれら2つのエアロソリューションが誕生した。だが、ファンや関係者からの多くはその外見を「ダサい」と一蹴した。

禁止とは言えども、これらが完全に姿を消すわけではない。規約を読み解けばエンジンカバーの延長は幾らか可能であり、また、カバー終端とリアウイングの間には100mm程の規制がない部分がある。似通ったエアロパーツが開発されるのは疑いない。

5、グリッドペナルティの簡素化

グリッドに並ぶF1マシン
© pirelli

エンジン交換によって15以上の降格が加算される場合は、グリッド最後尾スタートが強制される。複数ドライバーがこのようなペナルティを受けた場合には、ペナルティが確定した順にグリッド最後尾に並ぶ事とされる。この変更は、ペナルティによるグリッド順位の変更をより分かりやすくするために導入された。

2017年のアゼルバイジャンGPでは、予選最下位のストフェル・バンドーン(マクラーレン・ホンダ)に計35グリッドもの降格ペナルティが科せられた。20台しかエントリーしていない事を考えれば、当然のように最後尾スタートが予想されるところだ。

だが、予選16番手につけたチームメイトのフェルナンド・アロンソがこれを上回る40グリッドペナルティの対象に。更に、燃料漏れによるマシン炎上に見舞われたジョリオン・パーマー(ルノー)が1周も走る事ができなかった事から、マクラーレン・ホンダ勢のペナルティの有無とは無関係にパーマーがグリッド最後尾に追いやられるという、何とも分かりにくい事態が発生した。

2015年のベルギーGPでは、マクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンに対して合計105グリッド降格という途方もないペナルティが科されている。

その他の規約変更

以上5項目の他には、下記の変更がなされている。

  • セーフティーカー先導でのレーススタートないしは再開に関する手順の変更
  • 欧州地域の視聴率向上の為、イベントタイムテーブルが変更
  • 旧車テストは、FIAグレード1または1Tライセンスを保有するトラックでのみ許可
  • 旧車でのデモランイベント。ただし走行距離が50km以下かつ、デモラン用の特別タイヤを使用
  • オイルを燃焼され燃料の代替とする行為は禁止
  • バッテリー(ES)の最小重量と容積の規定
  • マシン設置カメラ及びミラーの位置変更(ハロ導入に伴う)

最新シーズンの全てのルールを知りたい方は、F1レギュレーション完全網羅版と参照されたい。