フェルスタッペン、辛勝ではなく完勝…メルセデスの反撃を「全て無効化」無冠最多優勝記録を更新
ルイス・ハミルトン(メルセデス)とのギャップは概ね3秒程度で、一見すると「辛勝」と表現すべきレースのようにも見えるが「完勝」と呼ぶ方が適切であった。母国グランプリに臨んだオランダ人ドライバーは72周を通して終始レースを掌握し、意のままにコントロールした。
マックス・フェルスタッペンはレッドブル・ホンダにとっての初参戦となった9月5日(日)のF1第13戦オランダGPをポールポジションからスタートし、タイトル争いのライバルであるハミルトンとの差をマネージしながら、海辺に佇むトラディショナルなザントフォールトでの戦いを制して今季7勝目、キャリア通算17勝目を達成した。
これにより故スターリング・モス卿が保持していた”非タイトルホルダーの史上最多優勝回数”を更新すると共に、3点差をつけてハミルトンからポイントリーダーの座を奪還した。
また、オランダ人ドライバーとしては史上初のオランダGPウィナーとなり、10ラップ目にはF1史上19人目となるキャリア通算1000周のリードラップを刻んだ。
更に、母親の母国であり自身の出生国でもあるベルギーと、父ヨスの生まれた国であり自身が国籍を持つオランダでの2週連続優勝ともなった。
僚友セルジオ・ペレスがピットレーンスタートとなった事で援護射撃が受けられない中、1人で2台のメルセデスを相手しなければならなかったにも関わらず、レースは終始、フェルスタッペンの手の内にあった。
23歳の若きオランダ人ドライバーはブラックアウト直後のターン1を制すると、その後は淡々と後続とのギャップを管理し続けた。相次ぐ赤旗でロングランデータが不足していたため、むやみにペースを上げるのはリスキーな行為だった。
「シーズンを通してメルセデスとの大接戦が続く展開の中、昨日のポールポジションに加えて優勝できて本当に満足だよ」とフェルスタッペンは語る。
「勝負が決したのは最初のスタートだった。その後は終始、(後続のハミルトンとの)ギャップをマネジメントするだけだった。それが上手くいったから彼らのアンダーカットを防ぐ事が出来たんだ」
「ルイスとはレース全体を通してかなり接近していた。彼は僕にプレッシャーをかけながら素晴らしいラップを重ねていた。最後のピットストップの後、つまり彼がミディアムタイヤ、僕がハードを履いていた時もね。でも最終的には問題なかった」
「彼らの反撃は全て無効化できたし、チームとしての今日のパフォーマンスには本当に満足している」
メルセデス陣営は2度に渡ってアンダーカットを仕掛けたが、フェルスタッペンとチームはいずれも難なく退けた。
まずは21周目にハミルトンが先んじてピットに入りミディアムタイヤに履き替えた。レッドブル陣営は即座にこれをカバー。翌周にフェルスタッペンをピットに入れ、同じくミディアムタイヤを履かせてハミルトンの前方でコースに送り出した。
メルセデスは再度アンダーカットを狙い、40周目に再びハミルトンにミディアムタイヤを履かせるも、ラップリーダーのフェルスタッペンはその翌周にピットを消化してハードタイヤに履き替え、ハミルトンの前方3.3秒の位置でコースに戻った。
シルバーアローはもう一台のW12を駆るバルテリ・ボッタスをフェルスタッペンの障壁とすべく彼の第一スティントを引っ張ったが、フェルスタッペンは31周目のターン1で難なくこれを交わしてみせ、ライバルが繰り出してきた全ての策を撃墜した。
結果として完勝であったとしても、36年ぶりの開催という事もあり熱を帯びる地元観衆の前でのホームウィンは決して容易い話ではなかった。何しろ”オレンジ・アーミー”と呼ばれるフェルスタッペン応援団に混じり、そこにはウィレム=アレクサンダー国王を含むオランダ王室メンバーの姿もあったのだから。
「みんな承知の通り、とにかく信じられない位に最高だ」とフェルスタッペンは語る。
「なぜって、今週末に向けての期待は本当に大きく、それを満たすのは決して簡単な話じゃなかったからね」
「でも、こうしてここで勝利を挙げてチャンピオンシップでもトップに立つ事ができた。言うまでもなく最高に嬉しい。言うことないよ」
「今日の夜はもちろん自宅でお祝いをするつもりだけど、チャンピオンシップ争いは激しいし次戦は間近に迫っているから、次のモンツァでも最高のパフォーマンスを発揮すべく集中していきたい」
現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジン導入以降、レッドブルは一度もモンツァで勝利した事がない。F1ラストイヤーのホンダはこの不名誉な記録に終止符を打つことができるだろうか?
モンツァ・サーキットを舞台とする次戦イタリアGPは9月10日のフリー走行1で幕を開ける。