2022年型F1マシンの実物大モデルを取り囲むF1ドライバー達、2021年7月15日F1イギリスGPにて (1)
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

FIA、遂にF1ポーパシング問題に介入…ドライバーの安全確保に向け技術指令を発行

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ドライバーの安全確保を理由に、国際自動車連盟(FIA)はF1マシンのポーパシング問題に介入する。技術指令書の発行を通してマシンの垂直方向の振動レベルを監視し、過度な値が確認された場合はチームに対策を指示する。

空力的な上下動、ポーパシングは今年新たに導入された新世代グランドエフェクトカーの問題点の一つであり、ジョージ・ラッセルやカルロス・サインツを筆頭に第8戦アゼルバイジャンGPでは、激しい縦揺れによる健康への影響を懸念する声が最高潮に達した。

そこでFIAは第9戦カナダGPの開幕を直前に控えた2022年6月16日(木)、ポーパシング低減に向けて対策に乗り出す事を明らかにした。その理由についてFIAは次のように説明した。

「今年のF1世界選手権第8戦において、新世代F1マシンの空力振動(ポーパシング)現象並びに、これによるレース中およびレース後のドライバーの体調への影響が改めて確認されたことを受け、安全性の観点から、この現象を軽減または排除するために必要な調整をチームに要求するために介入する必要があると判断した」

決定は「医師との協議」を経て下された。

「時速300kmを超える速度で行われる競技ではドライバーの集中力が必要とされる。故に、過度の疲労や痛みによって集中力が低下すると、重大な結果を招く可能性があると判断された」

「またFIAは、ドライバーの健康への直接的な影響も懸念している。直近数戦においては腰痛を訴えるドライバーも少なくない」

具体的には「短期的な対策」として、技術指令書(TD039)の発行によって以下の取り組みに着手する。

  • 1. プランクおよびスキッドの摩耗状況の監視
  • 2. 垂直振動の許容範囲を定量的に示す指標を定義

上記1に関してはフロアの底面の摩耗具合によって、2に関しては車両に搭載された垂直加速度センサーの値から、行き過ぎたポーパシングが発生していないかどうかを監視する。

2の具体的な数値に関しては現在分析中との事で、策定に向けてチーム側にも協力を求めている。

ポーパシング介入が与える影響

いずれも一定値を超えた場合、車高を上げたりするなどのセットアップ変更が指示される事になる。安全性に関わる問題との事で、状況が改善されない場合は失格処分となる事もありそうだ。

また中期的解決に向けてFIAは、チームとの技術会議を通して更なる対策を取りまとめていくとしており、技術指令ではなく技術レギュレーションの変更を通して、次世代グランドエフェクトカーに内在するポーパシング発生の直接的な原因にメスを入れる意向を示した。

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