メルセデスの要求は「七面鳥にクリスマスを認めろと頼むようなもの」対ポーパシング規定変更の可能性や如何に
英国のSky Sports F1で解説者を務めるマーティン・ブランドルは、規定変更のためにライバルに賛成票を要求するのは「七面鳥にクリスマスを認めろと頼むようなもの」だと指摘し、メルセデスが求めるレギュレーション変更が実現する可能性は殆どないとの見方を示した。
ロングストレートとバンピーな路面が組み合わさったバクー市街地コースでの週末は、ポーパシングによる健康被害がトピックの一つとなった。特に声高にこれを強調していたのはメルセデスだった。
ルイス・ハミルトンは51周のレースを終えて腰に手をやりながらクルマを降りた。チーム代表を務めるトト・ウォルフはレース前にハミルトンの完走を、そしてレース後には次戦カナダGPでのハミルトンの欠場を懸念し、ジョージ・ラッセルは国際自動車連盟(FIA)に対してレギュレーション変更の必要性を強く訴えた。
2022年シーズンより導入された新しい技術規定では、グランドエフェクトを利用したエアロダイナミクスに焦点が当てられる事となり、悪名高いポーパシングが復活した。チームはグランドエフェクトを最大化すべく、車高をできる限り低く抑えて足回りを固めており、これが悪化の一因となっている。
これは古くて新しい問題だ。「ポーパシングは80年代にもあった」とブランドルは説明する。
「グランドエフェクトカーでは常に問題になってきた事なんだ。スポーツカーレースでは今もそうだ。私はプロトタイプでル・マンに参加したが、バウンシングという点でポーパシングとグランドエフェクトの問題があった。管理しなければならなかった」
この現象に関しては、プレシーズンテストの段階では多かれ少なかれ全てのチームが影響を受けていたものの、レッドブルやアルピーヌ、マクラーレン等の一部のチームは早々にこの問題に対処した。
ただ、シーズンの3分の1を消化して今なお、特にメルセデスとフェラーリのマシンは激しく上下動しており、F1アゼルバイジャンGPの週末のドライバーズブリーフィングでは、これが議題に挙げられたとされるが、ブランドルはライバルがメルセデスの利となる提案に投票する可能性はほとんどないと見ている。
「この問題を既に解決したチームは、これはメルセデスの問題であってF1の問題ではないと語っている」とブランドルは語る。
「 もちろん(メルセデスは)クルマの車高を上げることで解決することもできるが、そうすると膨大なパフォーマンスが失われる」
「パフォーマンスのためにはクルマを低くし、サスペンションや新しいタイヤのサイドウォールを硬くする必要がある。快適性を犠牲にしなければならないというわけだ」
「メルセデスを助けるために、他のチームにレギュレーションを変えろというのは、七面鳥にクリスマスを認めてくれと頼むようなものだ」
「私は何もジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンが経験していることを軽視しているわけではない。彼らは特に辛そうに見える」
シーズン中のルール改定のためには10チーム中少なくとも8チームの賛成票が必要だ。ただし安全を理由としてFIAが実施する変更は、予告なしに即時発効される事もある。
FIAはこの問題の軽減を目的とした簡易的なルール変更に前向きなようだが、同時にセットアップ変更で対処できるものであり、ドライバーに対する安全性を確保するのはチームの責務だとも考えているようだ。
これはレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表やマクラーレンのランド・ノリスと同意見と言える。コントロールできている、あるいは対処可能なレベルまで問題を解消できているチームからすれば、自分達が不利になるようなルール変更は到底認められない、というわけだ。
ましてフェラーリやメルセデスはトップ3を争っているわけで、1周あたり3秒、4秒と遅れているわけでも、この問題の影響で完走すらできない状況にあるというわけでもない。
注目すべきは、この問題がフォーカスされたバクーとモナコは路面がバンピーだと言う事だ。その前のスペインではどのチームも深刻なトラブルに直面していなかった。
仮に路面状況が大きな要因であるとすれば、それは規定に不備があるためではなく、それに対応できるようセットアップを調整しないチーム側に問題があるのだ、というライバルの言い分は理に適っているようにみえる。