道を見失うメルセデス、ハンガリーでW16を”ダウングレード”

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メルセデスはF1第14戦ハンガリーGPにおいて、2台のW16にダウングレードを施す。これは、エミリア・ロマーニャGPで導入された新型リアサスペンションを旧型仕様に戻すというもので、最近の成績不振の一因とされる技術変更の影響を洗い出す狙いがある。

新型サスペンションは導入当初からマシンバランスの悪化を招き、直後のモナコおよびスペインでは一時的に使用が中止された。

その後、カナダで再投入され、アンドレア・キミ・アントネッリがキャリア初の3位表彰台を獲得したことで一定の成果が見られたかに思われたが、以降のオーストリア、イギリス、ベルギーでは再びパフォーマンスが低迷。結果的に、再度の仕様変更に至った。

旧仕様へのアントネッリの期待

アントネッリは前戦ベルギーGPで2日連続のQ1敗退を喫した直後、「欧州ラウンド以降、クルマに対する自信を失ってしまった。自分でも一歩後退してしまったように感じてる。本当に厳しい。自信を持って攻めることができていないんだ」と、苦しい胸中を明かした

実際、直近7戦におけるアントネッリの入賞は、ジル・ビルヌーブ・サーキットで開催されたカナダGPでの3位表彰台のみ。同サーキットは低速コーナーを直線でつなげたレイアウトが特徴で、ヨーロッパラウンドの他のサーキットとは特性が大きく異なっている。

アントネッリは、リアサスペンションの仕様変更が好転のきっかけになることを期待している。「良い感覚が戻ってくることを願ってる。ベストを尽くして予選で素晴らしい走りをすることが目標だ」

担当レースエンジニアのピーター・ボニントンとデータを確認するアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年7月25日F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

担当レースエンジニアのピーター・ボニントンとデータを確認するアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年7月25日F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)

”リアサス真因説”への懐疑

アントネッリほど深刻ではないにせよ、チームメイトのジョージ・ラッセルもまたパフォーマンスの低下に苦しんでいる。開幕6戦で93ポイントを獲得していたが、以降の7戦では64ポイントとペースダウン。

特に高速コーナーでの挙動に関しては、新型リアサスペンションが悪影響を及ぼしていると見られているが、ラッセルは、低迷の理由をサスペンション一つに絞るべきではないと指摘する。

「要因は幾つかあると思う。暑いコンディションで苦戦していることは確かだ。スパはそこまで暑かったわけじゃないけど、一般的に暑い時に調子を落とす傾向がある。シーズンが始まったのは春のことで、今は夏だ」

「それに、この間に幾つか小さなアップデートも入れているけど、それらが期待通りのパフォーマンスに繋がっていない可能性もある。だから、幾つかのパーツは元に戻す予定だ」

「何にせよ、少し道を見失ってしまったようだ。今は基本に立ち返り、クルマの主要部分に焦点を当て、それがどのような結果に繋がるかを確認していくつもりだ」

スプリントレースを前にグリッド上でエンジニアと話すジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年7月26日F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

スプリントレースを前にグリッド上でエンジニアと話すジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年7月26日F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)

“迷走”からの脱却なるか─注目のハンガリー

度重なるアップデートが結果につながらない中、メルセデスは今、クルマの“原点回帰”に踏み切ろうとしている。ハンガリーGPの舞台ハンガロリンクは、低中速コーナーが主体のテクニカルなサーキットであり、メルセデスが今年苦戦したモナコとの類似性がしばしば指摘される。

今回のダウングレードは、再浮上への第一歩となるのだろうか。アントネッリとラッセル、ふたりの走りに注目が集まる。

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