2006年F1ブラジルGPで表彰台に上がるルノーのフェルナンド・アロンソとフェリペ・マッサ
Courtesy Of Ferrari S.p.A.

F1ポイントシステム

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FIA-F1世界選手権のポイントシステムはどのような仕組みなのか? チャンピオンシップの順位はどのようにして計算され、決定されるのか?

ポイントシステムは2010年に大幅改定され、決勝上位10名にチャンピオンシップポイントが付与される事となった。また2019年からはファステストラップ得点制が、そして2021年にはスプリントによるポイント配分が導入され、選手権争いを巡る戦略の多様化を促している。

今季及び過去のドライバー及びコンストラクターランキングについてはF1ポイントランキングを参照されたい。

ドライバー及びコンストラクターの2部門

フォーミュラ1ではドライバー部門のドライバーズ・シャンピオンシップと、チーム部門のコンストラクターズ・チャンピオンシップの2タイトルで争われる。

  • ドライバー選手権タイトル
  • コンストラクター選手権タイトル

F1は1チーム2名体制だ。コンストラクター選手権タイトルは年間を通して2名のドライバーが獲得したポイントの合計を競う。

両選手権ともに、最終戦を終えて獲得したポイント数が最も多い者がチャンピオンとなる。同一ポイントで並んだ場合は優勝の数が多い方が上位に、優勝数が同数の場合は2位(以下同)と遡って集計する。この方法で決まらない場合は国際自動車連盟(FIA)の審議を経て決定される。

上位10台がポイントゲット

2010年にポイントシステムが改正され、上位10台のドライバーにチャンピオンシップポイントが付与されることになった。

順位 ポイント数
1位 25点
2位 18点
3位 15点
4位 12点
5位 10点
6位 8点
7位 6点
8位 4点
9位 2点
10位 1点

ファステストラップ・ポイント

2019年以降は入賞者を対象として、決勝レース中にファステストラップを記録したドライバーに、追加で1ポイントのボーナス得点が与えられる事となった。ただし規定周回数が50%未満の場合は付与されない。

しかしながら、2024年シーズン末を以て僅か6シーズンで廃止されることが決まった

この決定の直近に行われたシンガポールGPでは、ファステスト・ラップを巡る疑惑と論争が勃発した。

レッドブルの姉妹チーム、RBに所属するダニエル・リカルドがファステスト・ラップを刻み、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とタイトルを争うランド・ノリス(マクラーレン)からボーナスポイントを奪ったことで、レッドブル系列の2チームがノリスから最速ラップポイントを奪うために共謀した疑いがあるとの懸念が寄せられた。

スプリントのポイント配分

2021年の第10戦イギリスGPで導入されたスプリントでは、上位3名に3-2-1のポイントが付与される事となったが、翌年の開幕を前に以下のように変更された。

順位 ポイント数
1位 8点
2位 7点
3位 6点
4位 5点
5位 4点
6位 3点
7位 2点
8位 1点

ただしポイントが付与されるには、セーフティーカー(SC)やVSCの介入なしに先頭車両が最低2周を消化し、予定されていた距離の50%以上を走破する必要がある。50%未満の場合はノーポイントだ。

決勝レースのポイント付与条件

チェッカーフラッグを受けてレースを終えるのが理想だが、突然のスコールやアクシデント等によって決勝レースが中断され、そのまま再開できない場合はどうなるのか?レギュレーションでは”中止時の周回数”によってポイント付与を規定している。

ポイント付与の割合を規定する”中止時の周回数”は、先頭車両の周回数で算出される。なお中止の際のリザルトは「中断合図が出た2周回前のラップ終了の並び(競技規定第51.14条)」が採用される。

スタートから2周未満の場合

レースそのものが無効扱いとなり、ポイント配分は発生しない。

2周以上~規定周回数の25%未満の場合

  • 1位:6ポイント
  • 2位:4ポイント
  • 3位:3ポイント
  • 4位:2ポイント
  • 5位:1ポイント

ただし、セーフティーカー(SC)またはバーチャルセーフティーカー(VSC)の介入なしにトップが最低2周を完了しない限りポイントは与えられない。

規定周回数の25%以上、50%未満を消化した場合

  • 1位:13ポイント
  • 2位:10ポイント
  • 3位:8ポイント
  • 4位:6ポイント
  • 5位:5ポイント
  • 6位:4ポイント
  • 7位:3ポイント
  • 8位:2ポイント
  • 9位:1ポイント

規定周回数の50%以上、75%未満を消化した場合

  • 1位:19ポイント
  • 2位:14ポイント
  • 3位:12ポイント
  • 4位:10ポイント
  • 5位:8ポイント
  • 6位:6ポイント
  • 7位:4ポイント
  • 8位:3ポイント
  • 9位:2ポイント
  • 10位:1ポイント

規定周回数の四分の三以上を消化するとレースは完全に成立したと見なされ、通常通りの満額のポイントが付与される。

2021年以前はレースが中断され再開される事なく終了となった場合、レースディスタンスの75%以上が完了していればフルポイント、2周以上75%未満の場合ハーフポイント、2周未満の場合ノーポイントという扱いであった。

史上6回のハーフポイントレース

F1ではこれまでに計6回のハーフポイントレースが記録されている。

2021年のF1ベルギーGPは、3時間27分071秒に及ぶ長時間決戦であったのとは対照的にF1史上最短の1周レースとなり、レースディスタンスとしてはスパ・フランコルシャンの全長7,004mよりも更に短い6,880mとなった。これはスタート及びフィニッシュライン間に124mのオフセットが設けられていたためだった。

過去には、事故により4名の観客が死亡して打ち切りとなった1975年のスペインGP、マーク・ダナヒューとマーシャル1名が死亡したプラクティスを経て、大雨途中中止となった同年のオーストリアGP、雨による31周打ち切りレースとなった1984年のモナコGP、同じく雨で14周レースとなった1991年のオーストラリアGP、そして31周のウェットレースとなった2009年のマレーシアGPがハーフポイントレースとして記録されている。

批判を浴びた1周レースでのフルポイント

赤旗中断を示すシグナルとスパ・フランコルシャンのマーシャル達、2021年8月29日F1ベルギーGP決勝レースにてCourtesy Of Alfa Romeo Racing

赤旗中断を示すシグナルとスパ・フランコルシャンのマーシャル達、2021年8月29日F1ベルギーGP決勝レースにて

前述の2021年ベルギーGPでは、ラップリーダーのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がセーフティーカー先導下での3周目に入った際に赤旗中断がコールされ、そのまま再開される事なく終了を迎えた。

この時のレースリザルトは3 – 2 = 1周目終了時のものが採用され、レース周回数は「1周」と記録されたが、ポイント付与条件となる”中止時の周回数”はフェルスタッペンの周回数である3周を元に算出されたため、レース成立としてハーフポイントが付与された。

これに対して、現地プロモーターやテレビ放送局との契約を満たすためだけにレースを成立させた茶番との批判が飛び交い、ルイス・ハミルトンはF1に対して観客へのチケット代金全額返金を求めたものの、結局実現する事はなかった。

混乱が生じたフェルスタッペンの2冠目

こうした状況を受けF1は2022年シーズンに向け、短縮レースの際のポイント配分を定めたレギュレーションを変更した

ただ実際には先に述べたようにレースが「中止」された場合にポイントが減額されるため、仮に2周でレースがフィニッシュしたとしても、それが「中止」によって終わらない場合はフルポイントが与えられる。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2度目のタイトルを獲得した2022年のF1日本GPでは、雨の影響で規定周回の53周を消化せず、28周でチェッカーフラッグが振られた。

FIAはチャンピオン獲得を伝えたが、各国のF1ジャーナリストや放送局、レッドブルを含めたチームはこれを疑問視した。

というのも、この日のレースは後述の「規定周回数の50%以上、75%未満を消化した場合」にあたるためポイント減額の対象になると誰もが考えたためだ。

だが、途中終了したわけではないためフルポイントが与えられ、結果、チャンピオンシップが決まる事となった。

マックス・フェルスタッペンの2022年F1ワールドチャンピオン獲得を喜ぶレッドブル・レーシング、2022年10月9日F1日本GPCourtesy Of Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペンの2022年F1ワールドチャンピオン獲得を喜ぶレッドブル・レーシング、2022年10月9日F1日本GP

F1ポイントシステムの歴史

チャンピオンシップは各レースの順位によって与えられる点数「チャンピオンシップ・ポイント」の総計によって勝者を決するが、時代によってポイント付与のシステムは変貌を遂げてきた。

創世記を経て30年近く安定していたF1のポイントシステムは、優勝者の得点を9点から10点へと引き上げた1991年を機に、10年おき程度に止めどなく変更され続けている。

ポイントシステムには、各レース結果のポイント合計ではなく、シーズン中の上位数レースのみのポイント合計でランキングを算出する「有効ポイント制」と呼ばれる仕組みも存在する。他のマシンとの接触が不可避であるような不慮のアクシデントが多いカテゴリで採用される事が多く、F1では1990年まで有効ポイント制が用いられていた。

F1世界選手権のポイント配分の歴史
シーズン 決勝レース スプリント
1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 FL 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位
1950-1959 8 6 4 3 2 1
1960 8 6 4 3 2 1
1961-1990 9*1 6 4 3 2 1
1991-2002 10 6 4 3 2 1
2003-2009 10 8 6 5 4 3 2 1
2010-2018*2 25 18 15 12 10 8 6 4 2 1
2019-2020 25 18 15 12 10 8 6 4 2 1 1
2021 25 18 15 12 10 8 6 4 2 1 1 3 2 1
2022 25 18 15 12 10 8 6 4 2 1 1 8 7 6 5 4 3 2 1

*11961年に限りドライバーズポイント9点に対して、コンストラクターズポイントは8点だった。
*22014年は最終戦のみポイントが2倍。

詳しくは「紆余曲折…F1ポイントシステムの変遷:得点共有時代からスプリント予選新時代まで」を参照されたい。