セーフティカー
セーフティカー(英:safety car)とは、クラッシュやパーツ飛散などのレース中のアクシデントが起きた場合や天候が荒れた際に、安全確保のためにコース上で競技車両を先導するオフィシャルカーのこと。別名ペースカーとも呼ばれる。
F1においては1996年の「C36-AMG(W 202)」に始まり2018年~の「AMG-GT R(C 190)」に至るまで、これまでメルセデスが12車種を供給してきたが、2021年にはこれに加えてアストンマーチンが「ヴァンテージ」を追加供給した。
セーフティカーの役割
ラップリーダーの前で隊列を先導し安全を確保するのが役割。セーフティカー導入中は原則として全車追越し禁止となり、それまでに築かれた各マシン間のギャップはすべてゼロとなる、レースそのものがリセットされた状態となる。F1には、これに準ずる「バーチャル・セーフティーカー」と呼ばれる仕組みもある。
安全性に関わる危険がコース上に存在しているものの、レースを中断・中止する程ではない場合に出番となる。レースコントロールが危険解消を判断すると、セーフティーカーはピットへと戻り、レースが再開(リスタート)される。
セーフティーカーのルーフにはLEDライトが取り付けられており、オレンジ、グリーンの2色が用意されている。グリーンは、後続を走るマシンに対して「セーフティーカーを追い越すよう指示」するものであり、ラップリーダーがセーフティーカー背後につくまでの間、点灯される。全ての車両がセーフティーカー後方についた後、グリーンライトは消灯され、オレンジへと切り替えられる。
パンクの原因となりそうなデブリが路面に散乱していようが、悪天候故に非常に危険な状態であろうが、ドライバーは常に限界でマシンをドライブする生き物だ。危険があることを誰かが強制的に教える必要がある。その役割を担うのがセーフティーカーなのだ。
誕生の歴史
セーフティーカーの発端は1973年のカナダグランプリだった。レースは酷いウェットコンディションでスタートし、多くのインシデントが発生。その結果、安全走行を促すためにペースカーがトラックに出た。
だが、ペースカーがトップのマシンを見誤ったためにレースは大混乱に。。それから20年後の1993年にレギュレーションが改正され、ようやく公式のルールとしてセーフティーカーがF1に誕生した。
F1では2000年より、ドイツ出身のベルント・マイレンダーがセーフティーカー・ドライバーを務めている。
再スタートの種類
セーフティーカーがコース外(ピット)に退く(=解除)と、レースは再スタートとなる。再スタートの方法やタイミングは、レースカテゴリーや年代等によって異なる。
ローリングスタート
セーフティカーがピットレーンに退いた後、先頭のマシンが規定のラインを超えると自動的にレースが再開する。各マシンがグリットに停止してからスタートするのとは異なり、各車走行しながらのスタートとなる。
セーフティーカースタート
レース当日にかなりの雨量が観測されるなど、通常の手順通りにレースを再開するのが危険と判断された場合、セーフティカーの先導でレースがスタートすることもある。この場合、時計の針は進み続けるも、セーフティーカーが先導しているため追い越しはできず、実質ただの時間稼ぎのようになってしまう。
SC中のピットインのメリット
レースでは、セーフティーカー導入と同時にピットインするマシンが多発する事がしばしばあるが、どういうメリットがあるのだろうか?
F1ではドライコンディションの場合、最低2種類のタイヤを使用する事が義務付けられている。そのため、少なくとも1度はピットストップを行わなければならない。
コース上に何も問題がなく、通常通りのレースが行われている場合、ピットストップを行えばその分のタイムロスが発生するため、コースに戻った際に順位を落とすのが普通だ。だが、セーフティーカー先導中は原則として追い越し禁止となるため、ピット作業でミスを犯したりしなければ、順位を落とすことなくピットストップを消化できるメリットが生まれる。
F1マシンより速い?セーフティーカーってどんな車種?
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2010年からF1のセーフティカーとして使用されていたメルセデス・ベンツSLS AMGは、6リッターV8エンジンを搭載し、最高出力571馬力、0-100km/h加速3.8秒、最高速315km/hを誇るモンスターマシンであったが、最新型の「AMG GT R」はダウンサイジングされながらも、これを更に上回る性能を持っている。
- 4リッターV8ツインターボ
- 最高出力:585馬力
- 0-100km/h加速:3.6秒
- 最高速318km/h
雨天時などは、F1マシンよりも市販車であるセーフティーカーの方が速いため、F1マシンがセーフティーカーに追いついて行けず引き離される場面などをしばしば目にすることができる。
メルセデスAMGの歴代F1セーフティカー
© Daimler AG
1996年以降、F1のセーフティカーはメルセデスが無償提供し続けている。
- C 36 AMG(1996年-97年)
- CLK 55 AMG(1997年-98年)
- CL 55 AMG(1999年-2000年)
- SL 55 AMG(2001年-02年)
- CLK 55 AMG(2003年)
- SLK 55 AMG(2004年-05年)
- CLK 63 AMG(2006年-07年)
- SL 63 AMG(2008年-09年)
- SLS AMG(2010年-14年)
- AMG GT S(2015年-17年)
- AMG GT R(2018年-)