ノリスとピアストリが衝突!ラッセル優勝、アントネッリ初表彰台―角田12位 / F1カナダGP 2025《決勝》結果と詳報

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2025年FIA-F1世界選手権第10戦カナダGPの決勝レースが現地時間6月16日、ジル・ビルヌーブ・サーキットで行われ、ジョージ・ラッセルがメルセデスに今季初優勝をもたらし、ポール・トゥ・ウインによって自身通算4勝目を達成した。角田裕毅(レッドブル)は12位でレースを終えた。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2位に続き、アンドレア・キミ・アントネッリがキャリア初の3位表彰台を獲得。メルセデスは今季初のダブル表彰台を飾った。一方、コンストラクターズ選手権をリードするマクラーレンは、終盤にまさかの同士討ちで明暗を分けた。

表彰台に上がる2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、優勝したジョージ・ラッセル(メルセデス)と桑原克英パフォーマンスエンジニア、3位アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

表彰台に上がる2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、優勝したジョージ・ラッセル(メルセデス)と桑原克英パフォーマンスエンジニア、3位アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

レース後にレッドブルは、ラッセルがセーフティーカー(SC)導入中に「不必要かつ不規則」なブレーキングによって、フェルスタッペンに対して”挑発行為”を行ったなどとして異議を申し立てた。だが、スチュワードは「根拠がない」としてこれを却下した

勝負の終盤に大波乱、ノリスDNFの衝撃

予選7番手と精彩を欠いたランド・ノリスは、トップ10の中で唯一ハードタイヤをスタートタイヤに選択し、第1スティントを長く引っ張る変則的な2ストップ戦略を採用。この戦略が功を奏し、終盤にかけて猛追を見せた。結果として、残り10周の時点でトップ5がわずか6秒以内にひしめく大接戦となった。

特に3位表彰台争いは激しく、アントネッリが後方マクラーレン勢に攻め立てられる展開に。だが残り3周に入った直後、ノリスが僚友オスカー・ピアストリの左リアに衝突。ピアストリは走行を継続して4位でフィニッシュしたが、ノリスはその場でマシンを止め、SC導入のままレースは終了した。

ノリスは即座に無線を通して「ごめん。全部僕が悪い。僕のせいだ。自分でも馬鹿だったと思う」と非を認めた。5位は10ポイントに相当するだけに、その損失は大きい。ドライバーズ選手権におけるピアストリとの差は22ポイントに広がった。

レース後、スチュワードはノリスに「全責任」があるとし、5秒ペナルティを科す決定を下した。だが、ノリスはリタイヤながらも「完走扱い」であったため、本大会でこれを消化。次戦でのグリッド降格を逃れた。

F1においてチームメイト同士の接触はしばしば波紋を呼ぶが、今回のケースでは両者ともに冷静な姿勢を貫いており、チーム内の対立に発展する気配は見られない。ピアストリはノリスの謝罪を受け入れ、「ランドは本当にいいヤツ」「今回の件で関係が変わることはない」と断言し、今後も良好なチーム関係を維持できるとの見方を示した。

戦略で対立もルクレール5位、ハミルトンは損傷後退

フェラーリ勢は、シャルル・ルクレールがノリスと似た戦略で5位フィニッシュ。一方で、2ストップを選択したチームの決断に対して「なんでピットに入ったの?なんで? タイヤは大丈夫って言ってたのに」を不満をあらわにする場面もあった。

チームメイトのルイス・ハミルトンは、序盤にウッドチャックと衝突。フロアフロントの大分部が損傷し、ダウンフォースを約20ポイント失うハンデを抱え、中盤にはノリスとルクレールにオーバーカットを許し、6位でレースを終えた。

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巧みな1ストップ戦略で入賞に食い込んだ者達

フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)は7位でフィニッシュ。レース中盤、ターン3と8で「丁寧に走ってほしい」というエンジニアからの指示に対し、「今はレースをしてるんだ。テストじゃないだろ」と、アロンソらしい皮肉を交えた返答をする場面があった。

以下、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)、エステバン・オコン(ハース)、そしてカルロス・サインツ(ウィリアムズ)が見事な1ストップ戦略を成功させ、揃って入賞圏外からのポイント獲得を果たした。

決勝のスタート直後にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)やオスカー・ピアストリ(マクラーレン)をリードするジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年6月15日(日) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝のスタート直後にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)やオスカー・ピアストリ(マクラーレン)をリードするジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年6月15日(日) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

角田、18番手から追い上げるも届かず

角田は予選で11番手につけたが、FP3において赤旗提示中に他車を追い越した行為が規定違反とされ、10グリッド降格ペナルティを受けた。ただし、リアム・ローソン(レーシング・ブルズ)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)がピットレーンスタートとなったため、実際には最後尾ではなく18番グリッドからのスタートとなった。

多くの後方勢と同様、スタートタイヤにはハードコンパウンドを選択。オープニングラップではランス・ストロール(アストンマーチン)を交わして17番手に浮上し、22周目にはミディアムタイヤのグリップ低下に苦しむアレックス・アルボン(ウィリアムズ)をオーバーテイク。一時は10番手にまで順位を上げた。

だが29周目には、15周分新しいハードタイヤを装着したアロンソに抜かれ、11番手へと後退。さらに49周目には、19周分フレッシュなハードタイヤを履くヒュルケンベルグにも先行を許した。

フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)をリードする角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)をリードする角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

残り14周でミディアムタイヤに交換し、アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)の後方15番手でコースへ復帰。残り8周でハジャーを、さらに残り5周でフランコ・コラピント(アルピーヌ)を交わしてポジションを上げたが、入賞には届かず、最終的に12位でフィニッシュした。

アルボンとローソン、無念のリタイヤ

アルボンは入賞圏内9番手からスタートしたが、パワーユニットに問題を抱えながら走行を続け、49周目のヘアピンでマシンを停車させリタイアとなった。

戦略面についても、第一スティントを引っ張ったウィリアムズを批判。さらに「ここまで引っ張っておいて、今さらピットはありえない」と語気を強め、1ストップ戦略への切り替えを訴え、「なぜ僕の言うことを聞いてくれないのか。本当にイライラする」と怒りを露わにした。

また、ローソンは、パルクフェルメ下での車両変更によりピットレーンスタートを選択。厳しい展開の中、最後尾を走行していたが、56周目にチームからリタイアの指示が出され、こちらも完走することなくレースを終えた。

ストロールは母国最下位

一方、地元カナダGPでの活躍を期したランス・ストロール(アストンマーチン)は、47周目のバックストレートでガスリーと際どい接触。イン側のラインを守る過程で、アウト側を走るガスリーを芝生に押し出す形となり、スチュワードは即座に10秒のタイムペナルティを科した。ストロールは完走18台中、最下位に沈んだ。

コラピントは、ポイント圏内10番手からスタートしたが、初入賞には届かず13位でレースを終えた。フォーメーションラップではブレーキに激しいバイブレーションが発生し、FIAの許可を得てダミーグリッド上でブレーキ交換を実施するという波乱のスタートだった。

10件の大量審議で8件に処分

レース後には、ノリスとピアストリの接触事故や、レッドブルの異議申し立てを含め、計10件の審議が行われ、そのうち8件で何らかの処分が下された。しかし、いずれの決定も最終リザルトには影響を及ぼさなかった。

オコンはレース中、ピットレーン出口で急減速を行い、後方を走行していたサインツが追突寸前となる場面があったが、これはダブルイエローへの対応による正当な行為と認められ、不問とされた。

ベアマンは、ターン14でのコース復帰時にレースディレクターの指示に従わなかった疑いで調査を受けたが、危険性はなく、競技上の有利を得た形跡も認められなかったとして、警告にとどまった。

また、以下の6名のドライバーがセーフティカー導入中に他車を追い越したとして調査されたが、いずれも警告処分にとどめられた。

  • ピエール・ガスリー(アルピーヌ)
  • カルロス・サインツ(ウィリアムズ)
  • シャルル・ルクレール(フェラーリ)
  • エステバン・オコン(ハース)
  • オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
  • アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)

2025年F1カナダGP決勝レースのコンパウンド別最速ラップと最多ラップ、2025年6月15日ジル・ビルヌーブ・サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2025年F1カナダGP決勝レースのコンパウンド別最速ラップと最多ラップ、2025年6月15日ジル・ビルヌーブ・サーキット

2025年F1カナダGP決勝レースのドライバー別タイヤ戦略表、2025年6月15日ジル・ビルヌーブ・サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2025年F1カナダGP決勝レースのドライバー別タイヤ戦略表、2025年6月15日ジル・ビルヌーブ・サーキット

2025年F1第10戦カナダGP決勝リザルト

Pos No Driver Team Laps Time PTS
1 63 ジョージ・ラッセル メルセデス 70 1:31:52.688 25
2 1 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 70 +0.228s 18
3 12 アンドレア・キミ・アントネッリ メルセデス 70 +1.014s 15
4 81 オスカー・ピアストリ マクラーレン・メルセデス 70 +2.109s 12
5 16 シャルル・ルクレール フェラーリ 70 +3.442s 10
6 44 ルイス・ハミルトン フェラーリ 70 +10.713s 8
7 14 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 70 +10.972s 6
8 27 ニコ・ヒュルケンベルグ ザウバー・フェラーリ 70 +15.364s 4
9 31 エステバン・オコン ハース・フェラーリ 69 +1 lap 2
10 55 カルロス・サインツ ウィリアムズ・メルセデス 69 +1 lap 1
11 87 オリバー・ベアマン ハース・フェラーリ 69 +1 lap 0
12 22 角田裕毅 レッドブル・ホンダRBPT 69 +1 lap 0
13 43 フランコ・コラピント アルピーヌ・ルノー 69 +1 lap 0
14 5 ガブリエル・ボルトレート ザウバー・フェラーリ 69 +1 lap 0
15 10 ピエール・ガスリー アルピーヌ・ルノー 69 +1 lap 0
16 6 アイザック・ハジャー レーシングブルズ・ホンダRBPT 69 +1 lap 0
17 18 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 69 +1 lap 0
18 4 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 66 DNF 0
NC 30 リアム・ローソン レーシングブルズ・ホンダRBPT 53 DNF 0
NC 23 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 46 DNF 0

コンディション

天気晴れ
気温24℃
路面温度50℃

セッション概要

グランプリ名 F1カナダGP
レース種別 決勝
レース開始日時

サーキット

名称 ジル・ビルヌーブ・サーキット
設立 1978年
全長 4361m
コーナー数 14
周回方向 時計回り

F1カナダGP特集