
F1ベルギーGP:対立するヒュルケンベルグとストロール―ピット衝突の真相、”違反認定もドライバー不問”の結末
2025年F1第13戦ベルギーGPの予選。アルデンヌの森に囲まれた美しきスパ・フランコルシャンで事故が起きた。スパで事故といえば、オー・ルージュ/ラディオンを想起するものだが、それはピットレーンで発生した。
事件の詳細:一体何が起きたのか
予選Q1開始直後、多くのマシンがピットを離れてアタックラップに向かうなか、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)はファストレーンへの合流を試みていた。
ヒュルケンベルグはノーズをファストレーンに差し込む形で前に出ようとしたが、すでにファストレーンを走行していたランス・ストロール(アストンマーチン)は減速することなくそのまま直進。結果として両者は接触し、ヒュルケンベルグのフロントウイングが破損する事態となった。
両者の言い分:対立する主張
この出来事をめぐって、両ドライバーは意見を対立させた。
「僕のタイヤは確かに白線を越えていたと思う。だから譲ってくれると思っていたんだけど、彼はそうせず、結果として接触してしまった」と、ヒュルケンベルグは振り返る。
「こんな形でフロントウイングを失うなんて、完全に不必要なことだし、ちょっと奇妙だった。何とか修復できるといいんだけど」と続け、悔しさをにじませた。
一方、ストロールは自らの行動に非はないと主張する。
「僕は普通に列に並んでただけ。彼は鼻先をねじ込もうとしたんだろうけど、僕に譲らなきゃならない義務はなかった。だって僕は先に列に並んでたんだから」
合流に関しては明確なルールが存在しており、ファストレーンを走行しているマシンに優先権がある。ただし、合流側のマシンのいずれかのタイヤがファストレーンとの境界線を完全に越えていれば、その限りではない。
スチュワードの判断:違反認定も不問の結末
セッション後、両ドライバーはスチュワードに召喚されたが、いずれにもペナルティは科されなかった。
ヴィタントニオ・リウッツィを含む4名の競技審判団は、ヒュルケンベルグのタイヤがファストレーンとの境界線を完全には越えていなかったと認定し、この場面での優先権はストロールにあったと判断した。
このような状況において、ヒュルケンベルグがファストレーンに合流するには「適切な間隔」が必要とされるが、スチュワードは「そのようなスペースは存在しなかった」と指摘し、競技規則第34条8項違反があったと認定した。
しかしながら、無線記録の解析により、ヒュルケンベルグがチームの指示に一貫して従って行動していたことが確認されたため、スチュワードは個人に責任を問うべきではないと判断。ヒュルケンベルグは不問とし、ザウバーに戒告処分を科す決定を下した。
また、接触自体については「両車がチームの指示の下、ほぼ同時に動き出した結果として生じた偶発的な接触」であると結論付けられ、いずれのドライバーにも主たる責任はないとして、処分は下されなかった。
ヒュルケンベルグは14番手、ストロールは最後尾20番手から、それぞれ巻き返しのレースに臨むことになる。
2025年F1ベルギーGP予選では、ランド・ノリス(マクラーレン)がポールポジションを獲得。2番手にチームメイトのオスカー・ピアストリが、3番手にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。
決勝レースは日本時間7月27日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周7004mのスパ・フランコルシャンを44周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。