F1王者ベッテル、人権懸念のサウジで女性限定カートイベントを開催…ネガではなくポジに光
アストンマーチンF1チームのセバスチャン・ベッテルはジェッダ市街地コースでの初のF1サウジアラビアGPを前に、国家による人権侵害に厳しい目が注がれるサウジアラビアで、女性のみを対象としたカートイベントを開催した。
国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルによると、同国ではこれまでに表現や集会の自由を求める活動家の多くが逮捕・投獄されてきた。非人道的な拷問は常態化し、公衆の面前での斬首という公開処刑を含めて残虐な刑罰が行われてきた。
更に、女性は法的に男性に従属しなければならず、結婚や離婚、親権、相続などを自ら決定する権利が与えられていない。
最近では2018年にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館内でサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏が殺害される事件があった。バイデン米政権はムハンマド皇太子が拘束もしくは殺害を命じたとしたとの報告書を公表した。
4度のF1ワールドチャンピオンは同国の人権問題を受け「自分自身に問いかけ、自分に何ができるかを考えた」結果、#RACE4WOMENのハッシュタグと共に女性限定のカートイベントを開催。サウジの女性達を招いて現地の実情について話を聞いた。
「サウジアラビアでの初のグランプリに向けて色んな議論があったし、疑問視する多くの声が寄せられている」とベッテル。
「概して言えば、特定の国の人権などに関する問題についてはネガティブな例に注目が集まりがちだと思ってる。でも僕はポジティブに考えてみようと思ってカートイベントを企画したんだ」
地元のカート場「The Track Jeddah」で行われたイベントにはジェッダ近郊に住む8人の若い女性が参加した。
「僕の人生経験を通してコース上で一緒に何かをすることで彼女達に自信をもって貰えればって思ったんだ」
サウジアラビアでは2018年に運転免許取得に関する法律が改正され、ようやく女性の自動車運転が解禁されたばかりだ。
「免許を持っている人もいれば、持っていない人もいた。大のF1ファンもいれば、今日までF1やレースとは無縁だった人もいた。色んなバックグラウンドを持った女性たちが集まってくれた。素晴らしいイベントになったと思う」とベッテルは語る。
「彼女たちの話や背景、変化していく自国に対する彼女たちの前向きな姿勢に大いに刺激を受けた。ヨーロッパ的視点で言えば、まだまだ改善・対処すべき点がたくさんある事は事実だけど、同時に幾つかの事柄が変化している事もまた事実で、彼女たちにとっては大きな変化なんだ」
ベッテルはサウジにおける人権問題を懸念している事を認めながらも、自らの視点だけで早急に物事を語るのは適切ではないと考えている。
「結局のところ、僅か2・3日しか過ごさない国で、国の背景や人々の事を正確に知らない状況で完璧なジャッジを下すのは僕らにとって本当に難しい事だと思う」
ベッテルはイベントを通して「彼女たちを知ることが重要だった」として「本当に印象的で刺激的だったし、週末の幕開けに相応しい1日になったと思う」と語った。
なお12月3~5日のF1サウジアラビアGPでは、同国初の女性レーシングドライバーであるリーマ・ジュファリが公式アンバサダーを務め、ジェッダ市街地コースをウィリアムズFW07でドライブする予定となっている。
اختيار سائقة السباقات السعودية ريما الجفالي لتكون سفيرة رسمية لجائزة السعودية الكبرى stc للفورمولا 1.
ستلعب السائقة المُلهمة، التي وُلدت وترعرعت في جدة ونافست في بطولة بريطانيا للفورمولا 3 دورًا أساسيًا خلال جائزة السعودية الكبرى stc للفورمولا 1 المُقامة في جدة بين 3 و5 ديسمبر. pic.twitter.com/Y9XqZ8bMpW
— Saudi Arabian GP (@SaudiArabianGP) November 29, 2021