反LGBTQ法に反対のベッテル、国歌斉唱中のTシャツ着用で叱責処分「失格になったって構うもんか」他4名も叱責
FIAレースディレクターのマイケル・マシが定めたレース前後の手続き事項に関して、計5名のドライバーが従わなかった疑いがあるとしてF1ハンガリーGPのスチュワードが召喚を命じていた件で、全員が叱責処分とされた。
セバスチャン・ベッテル、カルロス・サインツ、ランス・ストロール、バルテリ・ボッタスの4名が叱責を受けたのは、レース前セレモニーでの国歌斉唱時の服装が問題視されたためであった。
マシはレース前セレモニーに関する一連の手続きを定めた文書の中で、”持続可能性、多様性と包括性…”とのアナウンスが終わった後に「ドライバーはTシャツを脱ぎ、レーススーツを着て国歌斉唱のネームカードの位置に移動する事」としていた。
4人のドライバーはレース後、チーム代表者を伴いスチュワードと面談。その結果、FIA国際スポーティング・コード第12条2項1.i、つまり「安全で秩序あるイベントを運営するために存在する競技役員(マイケル・マシ)の指示に従わなかった」と判断された。
スチュワードの説明によるとベッテルらは「We Race As One」Tシャツを着用したままの状態で国歌斉唱に臨んだため、叱責を受ける事となった。いずれも突然の降雨に気を取られてしまい、脱ぐのを忘れたと説明しているという。
ただしベッテルが実際に着用していたのは「WRAO」Tシャツではなく胸に「SAME LOVE」のメッセージが描かれた以下のレインボーカラーのストライプ柄のTシャツで、これに同じデザインのマスクを合わせていた。
レインボーはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア及びクエスチョニング)運動を象徴するもので、ベッテルはルイス・ハミルトン同様、6月中旬にハンガリーで成立した反LGBTQ法に反対の意思を表明し、LGBTQコミュニティに寄り添う行動に出ていた。
ベッテルは裁定が下る前にSky Sportsとのインタビューの中で「失格になっても構うもんか。(スチュワードは)やりたいようにやればいいさ。僕は気にしないし、また同じ事をやるだけだ」と語っていた。
先に記した通り、叱責処分が下されたのはベッテルが着ていたTシャツのメッセージ性とは無関係で、単に国歌斉唱時にTシャツを着用していたという事実に対してなのだが、インタビュー当時のベッテルは、前者を理由とする召喚だと勘違いしていたようだ。
召喚されていたもう一名、つまりキャリア初優勝を飾ったエステバン・オコンに関しては、レース後にパルクフェルメではなくピットレーンの端にクルマを停めた事が問題視され、こちらも叱責処分を受けた。
レース後の手続きを定めた文書においては「上位3人のフィニッシャーはピットレーンに戻った後、各々の順位の書かれたボードの前にクルマを停車しなければならない」とされていた。