
アストンマーチンF1チーム
チームデータ
| チーム名 | アストンマーチンF1チーム |
|---|---|
| 国籍 | イギリス |
| 本拠地 | シルバーストーン |
| 参戦初年度 | 1959年 |
| WEBサイト | www.astonmartin.com |
| SNS | x facebook instagram |
アストンマーチンF1チーム(Aston Martin F1 Team)は、イギリスのノーサンプトンシャー州シルバーストンを本拠とするF1コンストラクター。2021年シーズンのFIA-F1世界選手権において、61年ぶりのワークス名義復帰を果たした。
前身はジョーダン・グランプリ(1991–2005)、フォース・インディア(2008–2018)、レーシング・ポイント(2019–2020)であり、30年以上にわたる連続参戦の系譜を持つ。
近年は、オーナーであるローレンス・ストロール主導の大規模投資により、中団上位からトップチームへの昇格を明確に目標として掲げる存在となった。2023年シーズンにはコンストラクターズ選手権5位を獲得し、表彰台争いの常連に成長。一方、2025年はコンストラクターズ選手権7位でシーズンを終えた。背景には、新技術規定が導入される2026年型マシンの開発を優先したことが挙げられる。
技術面では、2025年にF1史上屈指の天才デザイナーと称されるエイドリアン・ニューウェイを、「マネージング・テクニカル・パートナー」およびチーム株主として迎え入れ、ホンダとのワークス・パートナーシップが始動する2026年シーズンに向け、万全の技術体制を構築した。
組織体制・運営構造
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
フェルナンド・アロンソ、エイドリアン・ニューウェイ(マネージング・テニクカル・パートナー)、ローレンス・ストロール、ランス・ストロール、2024年9月10日
2025年以降、アストンはF1グリッドの中でも異例と言える技術主導型の再編を進めている。その中核を担うのが、2025年に加入した史上最も偉大なF1デザイナーと称されるニューウェイだ。ウィリアムズ、マクラーレン、レッドブルで計25回以上のドライバーズ/コンストラクターズタイトル獲得に関与してきた実績を持つニューウェイは、2026年シーズンからチーム代表に就任する。
技術部門の実務責任者は、フェラーリから移籍したエンリコ・カルディーレ。前チーム代表のアンディ・カウエルは、メルセデスでパワーユニット部門を率いた経験を活かし、最高戦略責任者(チーフ・ストラテジー・オフィサー/CSO)という肩書で、ホンダや燃料サプライヤーのアラムコとの協業強化に専念する。
パワーユニット規定が刷新される2026年以降は、メルセデスとの関係を見直し、新たにホンダをエンジンパートナーとして迎え入れる。電動化比率が50%に引き上げられる次世代PUにおいて、両社はワークス関係を構築する。
AMRテクノロジー・キャンパス
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
英国シルバーストンにあるアストンマーチンF1チームのファクトリーに置かれたヴァルキリー、DB12、DBX
「AMRテクノロジー・キャンパス」と名付けられたファクトリーは、F1イギリスGPの開催地であるシルバーストン・サーキットに隣接し、約800人規模の従業員が勤務している。
2023年には、部門間の物理的距離を縮めることを目的としたオープンレイアウトの最新設計オフィスと、統合型エンジニアリングフロアを備える新社屋が完成。2024年には最新鋭の風洞設備が本格稼働を開始し、ファクトリー内には最新世代のドライバー・イン・ザ・ループ(DiL)シミュレーターも導入されている。
主な戦績・実績(2025年終了時点)
- コンストラクターズ制覇:0回
- ドライバーズ制覇:0回
- 参戦:119戦
- 勝利数:0回
- ポールポジション:0回
- 表彰台:9回
- 最前列:5回
- 最速ラップ:3回
- レースリード:3回
- ポイント:595点
61年ぶりのF1復帰
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
セバスチャン・ベッテルとランス・ストロールにより行われた2021年のアストンマーチンF1「ARM21」のシェイクダウン、2021年3月4日シルバーストン・サーキットにて
2020年までF1に参戦していたレーシング・ポイントF1チームがリブランドされ、アストンマーチンF1チームとして再出発した。運営母体はAMR GP Ltd.(旧レーシング・ポイントUK Ltd.)で、初代マシン「AMR21」にはメルセデス製パワーユニットが搭載された。
チームは2017年以降、オーストリアの水処理技術大手BWTとタイトルスポンサー契約を結び、印象的なピンクのマシンカラーを採用してきたが、新たな船出にあたり、米ニュージャージー州に本社を置く多国籍IT企業コグニザントと冠スポンサー契約を締結。「アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チーム(Aston Martin Cognizant Formula One Team)」としてエントリーした。

レーシングポイントF1チームの2020年型F1マシン「RP20」
復帰初年度は、4度のF1ワールドチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルと、チームオーナーの息子ランス・ストロールのコンビでシーズンに臨んだ。だが、フロア改訂を含むリアエンドのダウンフォース削減規定に車体を適合させきれず、コンストラクターズ選手権7位と期待を下回る結果に終わった。
1960年の「DBR5」以来となるアストンマーティン名義のF1マシンは「AMR21」と命名された。車体は光沢のあるブリティッシュ・グリーンを基調とし、前後ウイングの一部やサイドにはBWTの意向を反映したマゼンタのストライプが施された。
アストンマーチンとしての歴史
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーチンTT2、1922年スペインGPにて
ロバート・バムフォードとライオネル・マーティンによって創業されたアストンマーチンは、100年以上の歴史を持つ英国メーカーだ。
1922年、レーシングドライバーであったルイ・ズボロウスキー伯爵の支援を受け、マン島TT参戦用マシンの開発に着手した。同年、開発が間に合わなかった「TT1」および「TT2」は、7月15日のフランスGPの2リッタークラスで初めて実戦投入され、これがアストンマーティンにとってのグランプリレース初参戦となった。
だが1924年、ズボロウスキーがレース中の事故で死去。これによりモータースポーツ活動の第1期は幕を閉じ、第2期までに約20年の歳月を要することとなった。
デヴィッド・ブラウン時代
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
1959年ル・マン24時間レースで1-2フィニッシュを飾ったアストンマーティンDBR1
F1初参戦は、デヴィッド・ブラウン・コーポレーション傘下にあった1959年。投入された「DBR4」は、アストン初のオープンホイール・レーシングカーだった。
「DBR4」は1957年にプロトタイプが完成していたが、1959年にル・マン24時間レースを制することになる「DBR1」の開発を優先したため、実戦投入は2年遅れた。デビュー戦となったオランダGPでは、時代遅れとなっていた設計が災いし、キャロル・シェルビーとロイ・サルヴァドーリは予選で下位に沈み、決勝ではエンジントラブルによりダブルリタイアを喫した。
翌1960年には軽量化を施した「DBR5」を投入したが、フロントヘビーな特性は解消されず、リアエンジン勢に対して劣勢を強いられた。結果として、第7戦イギリスGPを最後にF1からの完全撤退を決断した。
レッドブル・レーシングとの関係
Courtesy Of Red Bull Content Pool
映画「007」シリーズのジェームズ・ボンドをテーマとしたレッドブル・ホンダの特別レーシングスーツ
2016年にテクニカルパートナーシップを締結し、2018年からはタイトルスポンサーも務めるなど、アストンは2021年のワークス復帰以前からレッドブル・レーシングと深い関係を築いてきた。
2019年F1第10戦イギリスGPでは、F1通算1007戦目を記念し、映画「007」とのコラボレーションを実施。RB15に「007」のロゴが掲出された。アストンは同シリーズに数多くのボンドカーを提供しており、007の製作会社イーオン・プロダクションズの協力のもと本企画が実現した。
ヴァルキリー
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レッドブル・ホンダのエイドリアン・ニューウェイが設計に関わった新型ハイパーカーのアストンマーティン・ヴァルキリー、シルバーストーンサーキットにて
両社の協業は市販車開発にも及んだ。ヴァルキリー(Valkyrie)は、レッドブルのCTOエイドリアン・ニューウェイと、アストンのCCOマレク・ライクマンが設計を手がけたハイパーカーで、2016年から2019年にかけて開発が進められた。2019年7月13日には、F1イギリスGPの舞台であるシルバーストン・サーキットで初のデモランが行われている。
ヴァルキリーにはロードモデルとサーキット専用のAMR Proが用意され、前者は世界限定150台、後者は25台のみ生産された。日本には11台が納入され、価格は3億円を超えるとされる。
心臓部にはコスワース製6.5リッター自然吸気V12エンジンに電動モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載。二人乗りミッドシップレイアウトで、車重は1000kg以下、パワーウエイトレシオ1.0kg/psという驚異的な数値を誇る。
Curv Racing Simulatorsと提携により開発されたシムレーサーのための最高級レーシングシミュレーター「AMR-C01」ではヴァルキリーのシートポジションが再現された。5万7,500ポンド、日本円にして約781万円という超高額で販売された。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーチン初の最高級レーシングシミュレーター「AMR-C01」着座視点
自動車メーカーとしてのアストン
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーチン初のSUV「DBX」
高級自動車メーカーであるアストンマーティン・ラゴンダは2019年10月にロンドン市場へ上場したが、主力モデルの販売不振により株価は大幅に下落。格付け会社ムーディーズは同年8月、同社を投資不適格に格下げした。
これを受け、レーシング・ポイントF1チームの共同オーナーでもあったローレンス・ストロール率いる投資家グループ「Yew Tree」が発行済株式の16.7%を1億8200万ポンド(約259億8,150万円)で取得。加えて新株発行による3億1,800万ポンド規模の資金調達計画が2020年1月に発表された。同コンソーシアムには、JCB会長のアンソニー・バンフォードや、香港の著名資産家サイラス・チューらが名を連ねている。
これに伴い、ローレンス・ストロールは現職のペニー・ヒューズに代わり会長職に就任。CEOにはメルセデスAMGのCEOを務めていたトビアス・ムアースが就任した。さらに、レーシング・ポイントF1チームとの長期契約により、2021年からチーム名に「アストンマーチン」を掲げる体制が確立された。
2020年10月にはメルセデス・ベンツAGとの技術提携強化も発表され、向こう3年間をかけて最大20%まで出資比率を引き上げる計画が示された。これは総額2億8600万ポンド(約389億4,300万円)相当の新株と引き換えに、メルセデスが持つ次世代ハイブリッドや電動パワートレイン、その他の車両コンポーネントやシステムなど、各種先進技術を供給するという内容だった。メルセデスは2013年、AMGのV8エンジン並びに電気アーキテクチャ・コンポーネントの供給の見返りとして同社の株を2.6%取得していた。
なお、メルセデスF1のチーム代表兼CEOのトト・ウォルフもアストン株を購入しており、ベッテルも2021年シーズンに先立ちアストンの”株主ドライバー”となっている。