アストンマーチンF1チームのロゴ

アストンマーチンF1チーム

  • Updated:

チームデータ

チーム名 アストンマーチンF1チーム
国籍 イギリス
本拠地 シルバーストーン
参戦初年度 1959年
WEBサイト www.astonmartin.com
SNS instagram

アストンマーチンF1チーム(Aston Martin F1 Team)は英国シルバーストンに本拠を構えるF1コンストラクター。2021年シーズンのFIA-F1世界選手権で61年ぶりに復帰を果たした。

F1復帰初年度

前年までF1に参戦していたレーシングポイントF1チームがリブランドされた。運営母体はAMR GP Ltd.(旧レーシングポイントUK Ltd.)で、初代「AMR21」にはメルセデス製パワーユニットが搭載された。

チームは2017年以降、オーストリアの水処理技術の大手「BWT」とタイトルスポンサー契約を結び、契約の一環としてマシンを印象的なピンクで彩ってきたが、新たな旅立ちを前にアメリカ・ニュージャージー州に本社を置く多国籍IT企業、コグニザント(Cognizant)との新たな冠スポンサー契約を締結。「アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チーム(Aston Martin Cognizant Formula One Team)」をチーム名としてエントリーした。

復帰初年度は4度のF1ワールドチャンピオン、セバスチャン・ベッテルとチームオーナーの息子、ランス・ストロールのコンビでシーズンに挑んだが、フロア改訂を含むリアエンドのダウンフォース削減規定に車体を上手く合わせ込めず、コンストラクターズ選手権7位と失望の結果に終わった。

1960年のDBR5以来となるアストンとしてのF1マシンは「AMR21」と名付けられた。車体は光沢のブリティッシュグリーンを基調として、前後ウイングの一部や車体側面にBWTの意向を受けてマゼンダのストライプがあしらわれた。

2021年型アストンマーチンF1マシン「AMR21」スタジオショット全体像 (4)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

2021年型アストンマーチンF1マシン「AMR21」スタジオショット全体像 (4)

歴史

ロバート・バムフォードとライオネル・マーティンが共同で創業したアストンマーチンは100年以上の歴史を持つ。

レーシングドライバーのルイ・ズボロウスキー伯爵の支援を受けてマン島TT参戦車両を開発したのが1922年の事だった。

開発は間に合わず、TT1およびTT2と名付けられたレーシングカーは、同年7月15日のフランスGPの2リッタークラスで初めて実戦投入された。これがアストンマーティンのグランプリレースのデビュー戦となった。

だが、1924年にズボロウスキーがレース中の事故で死去。これと共にアストンのモータースポーツ活動第1期は幕を閉じ、第2期までに20年の歳月を要する事になった。

アストンマーチンTT2、1922年スペインGPにてCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンTT2、1922年スペインGPにて

デヴィッド・ブラウン時代

F1初参戦はデイヴィッド・ブラウン・コーポレーション傘下にあった1959年の事で、同年に投入されたDBR4はアストンマーチン初のオープンホイールレーシングカーだった。

DBR4は1957年にプロトタイプが完成していたものの、1959年にル・マン24時間レースを制する事になるDBR1の開発を優先させたため、実戦投入には2年を待たねばならなかった。

1959年ル・マン24時間レースで1-2フィニッシュを飾ったアストンマーティンDBR1
1959年ル・マン24時間レースで1-2フィニッシュを飾ったアストンマーティンDBR1

デビュー戦はオランダGP。時代遅れのDBR4は戦闘力を欠き、キャロル・シェルビーとロイ・サルヴァドーリは予選15台中それぞれ10番手と13番手に終わり、レースではエンジントラブルでダブルリタイヤを喫する有様だった。

翌1960年に軽量化を果たしたDBR5を投入するもフロントヘビーでリアエンジン勢に対して劣勢を強いられ、スポーツカーレースに集中すべく第7戦イギリスGP後にF1からの完全撤退を決断した。

レッドブル・レーシングとの関係

2016年にテクニカルパートナーシップを結び、2018年からはタイトルスポンサーを務めるなど、2021年のワークス参戦以前のアストンマーティンはレッドブル・レーシングと深い関係を築いてきた。

F1世界選手権として通算1007戦目となる2019年F1第10戦イギリスGPでは、ジェームズ・ボンドのスパイアクション映画「007」とコラボレーション。RB15に「007」のロゴが掲載された。アストンマーチンは007シリーズに数々のボンドカーを提供しており、007の製作会社イーオン・プロダクションズの協力のもと本企画が実現した。

映画「007」シリーズのジェームズ・ボンドをテーマとしたレッドブル・ホンダの特別レーシングスーツ
「007」シリーズのジェームズ・ボンドをテーマとしたレッドブル・ホンダの特別レーシングスーツ

ヴァルキリー

両者のコラボレーションは市販車開発にも及んだ。

ヴァルキリー (Valkyrie) はレッドブルのチーフテクニカル・オフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイと、アストンマーチンのチーフクリエイティブ・オフィサーのマレク・ライクマンが設計を手掛けたハイパーカーで、2016年~2019年にかけて設計開発が行われ、2019年7月13日にF1イギリスGPの舞台シルバーストン・サーキットで初のデモランが行われた

アストンマーチン・ヴァルキリーとレッドブル・ホンダRB15

ヴァルキリーには市販車仕様のロードモデルとサーキット仕様のAMR PROの2つのラインナップがある。ロードモデルは世界150台の限定生産、AMRプロは25台限りの超限定モデルとして販売された。日本には11台が納入された。お値段は3億円超。

心臓部にはコスワース製6.5リッターの自然吸気V12エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムが組み込まれた。二人乗りのミッドシップレイアウトで車重は1000kg以下。パワーウエイトレシオ1.0kg/psを誇る。

Curv Racing Simulatorsと提携により開発されたシムレーサーのための最高級レーシングシミュレーター「AMR-C01」ではヴァルキリーのシートポジションが再現された。5万7,500ポンド、日本円にして約781万円という超高額で販売された。

アストンマーチン初の最高級レーシングシミュレーター「AMR-C01」全体
アストンマーチン初の最高級レーシングシミュレーター「AMR-C01」

自動車メーカーとしてのアストンマーチン

アストンマーチン初のSUV「DBX」
アストンマーチン初のSUV「DBX」

英国の高級自動車メーカー「アストンマーティン・ラゴンダ」は2019年10月にロンドン市場に上場したものの、エントリーモデル「バンテージ」の販売不振が大きく響いて株価は4分の1にまで下落。格付け会社ムーディーズは同年8月に同社を投資不適格へと格下げした。

こうした状況を受けて、旧レーシング・ポイントF1チームの共同オーナーであったカナダ人大富豪のローレンス・ストロール率いる投資家グループ「Yew Tree」が発行済株式の16.7%を1億8200万ポンド(約259億8,150万円)で取得し、これに加えてライツイシュー(新株予約権無償割当)によって3億1,800万ポンドを得る緊急資金調達計画が2020年1月31日に発表された。同コンソーシアムには、JCB会長のアンソニー・バンフォードや、香港の著名資産家サイラス・チューらが名を連ねている。

ローレンス・ストロール
ローレンス・ストロール

これに伴い、現職のペニー・ヒューズに代わりローレンス・ストロールがアストンマーチンの会長職に就任。アンディ・パーマーの後任となる新たなCEOには、メルセデスAMGのCEOを務めていたトビアス・ムアースが就いた

またこれと合わせて、レーシングポイントF1チームとの2021年から向こう10年に渡る契約が発表され、最初の5年間についてはスポンサーシップという形でチーム名に「アストンマーチン」を掲げる事が決まった。

更に2020年10月27日には、メルセデス・ベンツAGとの技術提携の強化が発表され、向こう3年間を掛けてアストンマーチンへの出資比率を20%にまで引き上げる計画が明らかにされた

これは総額2億8600万ポンド、日本円にして約389億4,300万円相当の新株と引き換えに、メルセデスが持つ次世代ハイブリッドや電動パワートレイン、その他の車両コンポーネントやシステムなど、各種先進技術を供給するというものだ。メルセデスは2013年にAMGのV8エンジン並びに電気アーキテクチャ・コンポーネントの供給の見返りとして同社の株を2.6%取得していた。

なお、メルセデスF1を率いるトト・ウォルフやセバスチャン・ベッテルもアストンマーチン株を取得している。参考:メルセデスF1代表ウォルフ、アストンマーチン株を購入ベッテル、アストンマーチンの”株主ドライバー”として2021年F1に参戦