リタイヤでF1デビュー戦を終えたマクラーレンのオスカー・ピアストリ、2023年3月5日F1バーレーンGP
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マクラーレンが見るに耐えぬ悲惨なシーズンスタートを切った理由

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悪い、まずいとは広く予想されてはいたものの、昨季コンストラクターズ選手権5位の名門、マクラーレンの2023年F1シーズンのスタートは予想以上に見るも耐えない悲惨なものとなった。その原因はどこにあったのか?

2台に異なる信頼性トラブル

オスカー・ピアストリはテクニカル・トラブルにより、F1デビュー戦を僅か15周でリタイヤしなければならなかった。電気系統の不具合によってステアリングに問題が生じたためだった。

ピットストップによりステアリングを交換したものの改善される事はなかった。The Raceによるとチーム代表のアンドレア・ステラは「ステアリングそのものに問題はなかった。おそらくハーネス(配線)のトラブルだろう」と説明した。

もう1台のMCL60をドライブしたランド・ノリスも技術的な問題に見舞われ戦線離脱を余儀なくされた。

ニューマチックバルブ用のエア充填を強いられた結果、ライバルの倍以上、6回ものピットストップを強いられた。完走こそしたものの、ノリスは2周遅れの最下位でレースを終えた。

コイルスプリングでは高回転に対応できない事から、F1のエンジンにはルノーが先鞭をつけた空気圧式バルブが採用されている。

ランド・ノリスのマシンにニューマチックバルブのエア充填を行うマクラーレンのメカニック、2023年3月5日F1バーレーンGPCourtesy Of McLaren

ランド・ノリスのマシンにニューマチックバルブのエア充填を行うマクラーレンのメカニック、2023年3月5日F1バーレーンGP

ステラは「10、11周しか走れない事が分かったため、その度に補充しなければならなかった」と振り返った。周回遅れになる事が分かっていながら最後まで走り続けたのは、セーフティーカーによる起死回生に懸けたためだが、結果はノーポイントに終わった。

「MCL60」が競争力を欠いた理由

コンストラクター4位を目標に掲げて挑んだ最初のレースウィークは信頼性もさることながら、2023年型「MCL60」のパフォーマンス不足を露呈させた。予選ではノリスがQ2敗退の11番手、ピアストリはQ1敗退の18番手に留まった。

マクラーレンの1ラップペースは昨年のバーレーンGPと比較してコンマ6秒しか改善されていなかった。アストンマーチンは2.4秒、ウィリアムズは1.2秒のゲインを果たしている。マクラーレンの改善幅は10チーム中7番目に悪かった。

ローガン・サージェント(ウィリアムズ)を従えレースを戦うランド・ノリス(マクラーレン)、2023年3月5日F1バーレーンGPCourtesy Of McLaren

ローガン・サージェント(ウィリアムズ)を従えレースを戦うランド・ノリス(マクラーレン)、2023年3月5日F1バーレーンGP

かくも「MCL60」の競争力が不足しているのは何か原因なのか?

それはフロアエッジ高を15mm引き上げるという技術規定の変更が、2022年型「MCL36」の調整程度では対応できず「完全な方向転換」が必要となり、これに対応した完璧なパッケージを開幕戦に間に合わせる事ができなかったからだという。

英「Autosport」によるとテクニカルディレクターを務めるジェームス・キーは、フロアエッジの変更に対する検討を始めた際に「本当に大きな衝撃」を受けたと述べ、「9月頃だったと思うが、このジオメトリーではダメだ、完全に方向転換しなければならないと考えていた」と続けた。

「(15mmというのは)本当に些細なことのように聞こえるが、フロア(がダウンフォースに及ぼす影響)は強大で、信じられないほどセンシティブなんだ」

この変更はもちろん全チームに対処を強いたが、「大多数の陣営」は自分たちよりも容易に対処できたはずだとキーは考えている。今回の規定変更は、ある種の空力特性を持つクルマに対して、より不利に働いたというのだ。

フロア周りに関する空力的「アプローチの刷新」を「強制」された事でマクラーレンは完全に新しいパッケージの開発に着手した。ただ初戦までに実戦投入に足るものを用意する事はできなかった。

レギュレーションの変更決定があと4週間早ければ、バーレーンGPの結果は全く違ったものになったはずだとマクラーレンは考えている。

「もしレグがもっと早くに決定していれば、あるいは4週間早く(今までと)異なる方向に進まなければならないという事実に気づいていたら、正直なところ我々は今、この話をしてはいないだろう」とキーは付け加えた。

マクラーレンF1チームのテクニカルディレクターを務めるジェームス・キー、2022年1月28日Courtesy Of McLaren

マクラーレンF1チームのテクニカルディレクターを務めるジェームス・キー、2022年1月28日

リタイヤと最下位。初戦のリザルトは最悪なものとなったが、ステラは「MCL60」のレースペースが「予想以上に励み」になるものだったとしており、ノリスもまた「シーズン前に誰もが予想していたほど悪くはない」と楽観的だ。

チームは次戦サウジアラビアGPとオーストラリアGPで幾つかのアップグレードを予定しているものの、これは対処療法的なものに過ぎない。本命は4月末のアゼルバイジャンGPだ。

マクラーレンは初戦バーレーンでの投入が実現しなかった真なる「MCL60」を、バクー市街地コースで行われるシーズン第4戦に持ち込む事を計画している。

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