逆転負けも十分あり得たフェルスタッペン、F1モナコの決定的勝機を逃したアロンソとアストン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)のF1モナコGP通算2勝目は、一見すると快勝のように見えるが決して盤石なものではなく、アストンマーチンとフェルナンド・アロンソのピットストップ判断に大いに救われた側面がある。
2023年5月28日の第80回モナコGP。アロンソは首位フェルスタッペンから13.308秒遅れの2番手を走行していた53周目の終わりにピットイン。周りがインターに履き替える中で唯一、ミディアムを装着してコースに戻っていった。
ところが戻った先のモンテカルロの路面は全面的にウェットで、アロンソはその周の終わりに再度のピットストップを強いられた。フェルスタッペンがピットインしたのはこの周で、こちらは最初からインターに履き替えた。
この2周の間に両者のギャップは10秒増え、23.141秒にまで拡大した。
結果的に誤りであったこの判断によりアロンソは、1回分のピットストップによるロスタイムと、ドライタイヤで1周走行した事によるロスタイムの合算分を失った。
1回のピットストップにかかる時間は約19秒。54周目のドライとインターのタイム差は、コンディションが急激に変化した移行期であるため正確に算出することは難しいが、先行してインターに交換していたバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)のラップから計算すると、少なくとも6秒はあったものと思われる。つまり19 + 6 = 25秒を失った可能性があるという事だ。
無論、アロンソが最初からインターを履いていればフェルスタッペンも54周目にペースを上げたであろう事から一概には言えないが、それでもアロンソがフェルスタッペンの前に出ていた可能性はかなり高いと思われる。
なおアロンソは「如何なるタイヤであれコンディションであれ、マックスは常に僕らの15~20秒先にいた」として、ピットストップの判断がどうあれ「今日は勝つチャンスがなかった」とチームを擁護し、マイク・クラック代表も「大きな違いはなかったと思う」と逆転の可能性を否定している。
だが、アストンマーチンが適切な判断を下していれば、足元が覚束ない路面状況の中、グレイニングが発生したオールドタイヤでインラップを走っていたフェルスタッペンだけでなく、ピットクルーに更なる重圧が襲いかかったはずだ。
実際レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、アロンソが最初からインターを履いていれば、フェルスタッペンは厳しいレースを強いられていただろうと考えている。
ホーナーは、フェルスタッペンの55周目のピットストップは本来であれば1周早く行うべきだったとの考えを示した上で「フェルナンドがインターを選んでいたら、もっと厳しかっただろうし、ピットストップの際にもっとプレッシャーが掛かっていただろう」と語った。
「ありがたいことに彼は、ちょうど雨が強くなってきた時にスリックタイヤを履いてくれた。おかげでマックスはリスクを冒さずにピットまで戻って来さえすれば良かった」
「リスクを冒さず」に走ってなお、フェルスタッペンの54周目のインラップは「何度かバリアにぶつかる本当に、本当に難しい」ものだった。アロンソからのプレッシャーがあれば、一体どうなっていただろうか。
終盤の雨で混乱が生じた2023年F1第7戦モナコGP決勝レースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインを飾り、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)が2位に、エステバン・オコン(アルピーヌ)が3位表彰台に上がる結果となった。
カタロニア・サーキットを舞台とする次戦スペインGPは6月2日のフリー走行1で幕を開ける。