なぜ今、マクラーレンなのか?フェルスタッペン移籍説再燃の背景を読み解く。CEO「バナナの皮」で残した含み

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マックス・フェルスタッペンの将来をめぐる憶測が、再び動き始めている。4度のF1王者はレッドブルと2028年まで契約を結んでいるが、2026年8月のいずれかの時点でドライバーズ選手権トップ2以内に入っていなければ、チームを離脱できるパフォーマンス条項が存在すると広く考えられている。さらに、その条項を使う場合は10月までにチームへ通知する必要があるともされる。

第8戦オーストリアGPを終えた時点で、フェルスタッペンがランキング2位と53点差の7位にとどまる中、マクラーレンのCEOを務めるザク・ブラウンは、2027年以降にフェルスタッペンを獲得する可能性を完全には否定しなかった。

「バナナの皮」がもたらすマクラーレン入り

グリッド上でゲストと記念撮影に応じるザク・ブラウン(マクラーレンCEO)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of McLaren

グリッド上でゲストと記念撮影に応じるザク・ブラウン(マクラーレンCEO)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)

オーストリアGPの決勝に先立ちブラウンは、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリの現行ラインナップに満足していると強調しつつも、フェルスタッペン獲得の可能性に含みを残した。

「ランドやオスカーがどこか別の場所へ行くなら、私は大いに驚くだろう。彼らはマクラーレンに非常に満足しているからだ」

「もちろん我々には契約があるが、それを別にしても、我々は彼らに非常に満足しているし、彼らもここに非常に満足している」

「ただ、何か奇妙な理由で、誰かが浴槽から出るときにバナナの皮で滑るようなことでも起きれば、もちろんマックスは4度のワールドチャンピオンだから(無視することなどできない)ね」

メルセデスの「マックス熱」は冷めたのか?

メルセデスのトト・ウォルフ代表とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年Courtesy Of Mercedes-Benz / Red Bull

メルセデスのトト・ウォルフ代表とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年

近年、フェルスタッペンの獲得に最も積極的だったのはメルセデスだった。チーム代表のトト・ウォルフは、ルイス・ハミルトンがフェラーリ移籍を決断して以降、フェルスタッペンに対する関心を隠してこなかった。だが、ここに来てその情熱は冷めつつあるように見える。

その理由がアンドレア・キミ・アントネッリの台頭であることは疑いないだろう。19歳のイタリア人ドライバーは、初年度こそ一貫性を欠き、その才能にいくらかの疑問も投げかけられたが、今季はキャリア初勝利から5連勝を飾り、タイトル獲得に向けて大きなリードを築くなど、期待を上回るパフォーマンスを発揮し続けている。

さぞウォルフは、次世代のフェルスタッペンと見なしてきた秘蔵っ子が、実際に歴史に名を残す逸材であるとの確信を強めたことだろう。そしてアントネッリは、フェルスタッペンより物議を醸すリスクがはるかに低く、起用に必要なコストも大幅に少ない。

また、ジョージ・ラッセルもオーストリアGPの週末に、来季もメルセデスに残留することを「100%確信している」と語り、ウォルフ自身も同じ見方を示した。

なお、フェラーリも、シャルル・ルクレールが2030年代までの長期契約下にあるとみられており、ルイス・ハミルトンも2027年末までの契約に加えて、2028年に向けたオプションを保有していると理解されている。

なぜ新規則に苦しむマクラーレンなのか?

スマートフォンを見ながらくつろぐマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2026年6月25日(木) F1オーストリアGPメディアデー(レッドブル・リンク)Courtesy Of McLaren

スマートフォンを見ながらくつろぐマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2026年6月25日(木) F1オーストリアGPメディアデー(レッドブル・リンク)

今季のマクラーレンは新たな技術規則への対応に苦戦しており、8戦を終えた現段階では、レッドブルをわずか44ポイント上回るランキング3位のチームに過ぎない。

マクラーレンのドライバーたちも、ともに少なくとも来季まで契約下にあると理解されており、一見するとフェルスタッペンにとって、レッドブル残留以外の現実的な選択肢は閉ざされたように見える。

だが、オーストリアGPを前に、フェルスタッペン陣営とマクラーレンとの間で最近話し合いが行われたことが広く報じられた。さらにこの話し合いは、フェルスタッペン陣営からのアプローチで実現したとも伝えられている。

バーレーン・インターナショナル・サーキットのパドックを歩くマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とマネージャーのレイモンド・ファルムーレン、2025年4月11日(金) F1バーレーンGPフリー走行Courtesy Of Red Bull Content Pool

バーレーン・インターナショナル・サーキットのパドックを歩くマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とマネージャーのレイモンド・ファルムーレン、2025年4月11日(金) F1バーレーンGPフリー走行

とはいえ、フェルスタッペンのマネジメントが他チームに接触すること自体にニュースバリューはない。チームとドライバー側が互いの意向を探ることはごく普通のことであり、両者にとって通常業務にすぎないからだ。

ただ、その協議の相手がマクラーレンであるという点は、その限りではない。2024年にフェルスタッペンの将来が話題になって以降、マクラーレンがフェルスタッペンの現実的な移籍先と見なされたことは一度もなかった。

ここに至ってマクラーレンの名前が急浮上した理由を検討する上で、ジャンピエロ・ランビアーゼの存在を除外することはできない。

フェルスタッペンはレッドブル昇格以降、一貫してランビアーゼとコンビを組み、4度のタイトルと71勝を挙げてきた。かつて、ランビアーゼが辞めれば自身も辞めるとさえ公言した間柄であり、その関係は単なるドライバーとエンジニアの枠を超えている。

近年、レッドブルからは、ロブ・マーシャルやウィル・コートネイといったキーマンがマクラーレンへと移っており、ランビアーゼがチーム代表としてマクラーレンに加わることになれば、フェルスタッペンにとって同チームは間違いなく、潜在的な移籍先としての魅力を高めることになる。

さらにブラウンは、ランビアーゼの合流時期の前倒しに取り組んでいるともされる。

ウェバーの不満が生む王者とのトレード説

レース前グリッドでマネージャーのマーク・ウェバーと話をするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

レース前グリッドでマネージャーのマーク・ウェバーと話をするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

マクラーレンは表向き、ノリスとピアストリのラインナップに非常に満足している。

2人は昨年のタイトル争いの中でもおおむねフェアなバトルを続け、チームへの忠誠心も示してきた。一方で、ピアストリ陣営、とりわけマネージャーのマーク・ウェバーが、2025年のチーム内でのピアストリの扱いについて不満を抱いていたとの噂もある。

ウェバーはF1キャリアの大半をレッドブルで過ごし、同チームでF1を引退した人物でもある。レッドブルとの結びつきが強いだけに、フェルスタッペンとのトレードは、ピアストリ陣営の一部にとっても魅力的なものとなる可能性がある。

ただし、ピアストリ自身はライバルチームへの移籍を考えていないとみられている。

中団を拒む王者の去就を左右する要素

ガレージ内でローラン・メキース代表と話し込むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ガレージ内でローラン・メキース代表と話し込むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)

もっとも、フェルスタッペンにとって最優先事項は、移籍先の名前ではなく、勝てるマシンの有無だ。オーストリアGPを前に、フェルスタッペンのマネージャーを務めるレイモンド・フェルミューレンは、オランダ紙『De Telegraaf』に次のように語った。

「我々はレッドブルを自分たちの居場所だと感じているが、競争力を持ちたい。結局のところ、マックスは中団でレースをするために生まれてきたわけではない」

レッドブル・リンクで投入されたアップグレードは、フェルスタッペンに今季初めて優勝を争える手応えを与えた。2台のメルセデスに挟まれて2位でフィニッシュし、トップ3台の差がわずか1.986秒に収まったという事実は、レッドブル残留の可能性を高める材料といえる。

それでも、1戦の好結果だけで将来が決まるわけではない。バルセロナで勝利を挙げたフェラーリが、高地レッドブル・リンクで一転、トップ4圏外に転落した事実を指摘すれば、その理由を説明する必要はないだろう。

フェルスタッペン自身も、レッドブルにはまだ総合力の底上げが必要だと強調している。

「まだ問題が多すぎる。スタートの件もあるし、舞台裏の手順面の問題もある。だから、もう少し総合的に強化しなきゃならない」

フェルスタッペンの将来を決めるのは、噂の熱量ではなく、レッドブルが今季または来季にタイトルを争うに足るだけの競争力のあるマシンを用意できるかどうかだろう。

表彰台でトロフィーを掲げる2位フィニッシュのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of Red Bull Content Pool

表彰台でトロフィーを掲げる2位フィニッシュのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2026年6月28日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)