モンツァ・サーキットを走行するランス・ストロールのアストンマーティン・ホンダAMR26、2026年9月4日(金) F1イタリアGPフリー走行
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

水面下のADUO改修。ホンダF1の今後に浮かぶ「疑問符」と、データに表れない異常とフラストレーション

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ホンダが今季2度目となるパワーユニット(PU)のアップグレードを密かに投入していたことが明らかとなった。それは同時に、追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)の限界を浮かび上がらせるとともに、今後の挽回に向けた期待に疑問符をもたらすものともなった。

2度にわたる改良が施されてなお、ホンダのスペック2は現時点で目に見える成果が表れておらず、アストンマーティン・ホンダのドライバーたちは厳しい見解を示している。

また、第15戦アゼルバイジャンGPではフェルナンド・アロンソがエンジントラブルを疑ってリタイヤしたものの、ホンダ側は今なお異常を確認できておらず、両者が直面している課題の深さが浮き彫りとなっている。

ホンダ、改良ターボの密かな投入で「小さな改善」

ホンダの内燃エンジン(ICE)は、指標エンジンと判定されたレッドブルのICEに対して4%以上遅れていると評価され、ADUO規定に基づきホンダには今季2回、来季2回のアップグレードが許可された。

それでもホンダは当初、今季に投入するアップグレードは1回のみになると説明し、第12戦オランダGPでスペック2を初めて実戦投入した。だがその後、第14戦スペインGPと第15戦アゼルバイジャンGPで、2台のAMR26にそれぞれ改良型のターボチャージャーを投入していたことが明らかとなった。

このアップデートは最高出力を向上させるものではなく、ドライバーのアクセル操作に対するターボの応答性改善を狙ったものだった。

イギリスのモータースポーツ専門メディア『The Race』によると、ホンダ・レーシング(HRC)のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、第16戦バーレーンGPに先立ち、こう説明した。

「主にドライバビリティに大きな影響を与えるブーストの追従性について改善の余地があることが分かったため、これが極めて重要な意味を持つバクーで改良型ターボチャージャーの効果を確認しました」

メディアの取材に応じる折原伸太郎(HRCトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア)、2026年10月1日(木) F1バーレーンGPメディアデー(セパン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

メディアの取材に応じる折原伸太郎(HRCトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア)、2026年10月1日(木) F1バーレーンGPメディアデー(セパン・インターナショナル・サーキット)

コーナーからの立ち上がりでターボラグが発生すると、ICEのトルクデリバリーに遅れが生じ、それを補うためにバッテリーを使用してMGU-Kを使う必要が出てくる。その結果、本来であればよりラップタイムを削れる場所で使えるエネルギー量が減ってしまう。

とはいえ、この第2弾アップグレードの効果について、折原TGMは「小さな改善」にすぎないとしている。

エンジンの異常、今なお確認できずも「ドライバーは最高のセンサー」

絶対的なパワーが不足する厳しい状況は、ドライバーの行動にも影響を与えている可能性がある。

アゼルバイジャンGPでは、フェルナンド・アロンソが自らの意思でピットに戻り、レースをリタイヤした。リタイヤの直前に無線を通して「エンジンの問題があると思う。0.8秒を失っていた」と伝え、続いて「このラップの終わりにピットに入る。申し訳ない」とチームに報告していた。

だが、レース後にホンダがデータを確認しても問題の兆候は見つからず、折原TGMによれば、1週間を経た今も、物理的な検査を行ってなお「何も問題を見つけられていない」という。

ファンステージで観客に手を振るアストンマーティン・ホンダのフェルナンド・アロンソとランス・ストロール、2026年9月24日(木) F1アゼルバイジャンGP(バクー市街地コース)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ファンステージで観客に手を振るアストンマーティン・ホンダのフェルナンド・アロンソとランス・ストロール、2026年9月24日(木) F1アゼルバイジャンGP(バクー市街地コース)

アロンソはレース開始直後にキャデラック勢を抜いたものの、ロングストレートですぐに抜き返された。その後もストレート以外の箇所で幾度となくバルテリ・ボッタス(キャデラック)の前に出たが、次のメインストレートで逆転を許す展開を繰り返した。

トップスピード不足に対するフラストレーションが限界に達し、アロンソが意図的にレースを終わらせたとの見方もあるが、折原TGMはアロンソを擁護する姿勢を見せた。

「ドライバーは最高のセンサーですし、フェルナンドには豊富な経験があります。ですので、たとえデータ上で何も問題を見つけられなかったとしても、今週末のイベントでは、ドライバーのコメントを踏まえて確認していきます」

「本当の弱点」はエンジン、1~2秒をロス

ランス・ストロールの評価も依然として厳しい。セパン・インターナショナル・サーキットに姿を見せたストロールは、改良ターボが投入された新しい仕様のPUに改善を感じるかとの問いに、こう答えた。

「それほどでもない。僕らはエンジン側で本当に苦しんでいる」

ストロールは、サーキットごとに違いはあるものの、エンジンの性能不足により「毎週末、1~2秒失っている」と説明し、「それに対して僕らにできることはあまりない。そこが今の僕らにとって本当の弱点だ」と続けた。

一方でシャシーについては、「[アップグレードが投入された]ブダペストでは大きく前進したし、シャシー側の開発で何をしなきゃならないのかについては明確な方向性を掴んでいると思う」と評価した。

FIA公式会見に出席するランス・ストロール(アストンマーティン・ホンダ)、2026年10月1日(木) F1バーレーンGPメディアデー(セパン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

FIA公式会見に出席するランス・ストロール(アストンマーティン・ホンダ)、2026年10月1日(木) F1バーレーンGPメディアデー(セパン・インターナショナル・サーキット)

この発言を裏付けるように、アストンマーティン・ホンダはコーナーが多くストレートが短いハンガロリンクでは中団上位を争う競争力を見せた一方、長いストレートを持つモンツァやバクーでは一転、再び最下位争いを演じた。

「長いストレートがあるコースほど僕らには厳しい。ブダペストはたぶん今季一番いいレースだった。コーナーが多く、ストレートがあまりないからね」とストロールは語った。

ホンダとの離別の可能性と、今後に向けた「疑問符」

2回のアップグレードをもってしてなお、1周あたり「1~2秒」を失っているのだとすれば、それを埋め合わせるには、あと何回のアップグレードが必要になるのだろうか。

アストンマーティンがホンダとの提携を解消し、別のPUメーカーとタッグを組む可能性について問われたストロールは、これを明確に否定せず、「今は改善に向けて一緒に取り組んでいる。幾つかのアイデアがあるから、来年に向けて状況が改善してくれればと思ってる」と返すにとどめた。

「パワーを向上させるためにホンダは全力で取り組んでいるし、できることを全部やっている。それが実現するかどうかは、時間が教えてくれる。今のところは疑問符がついている。来年の開幕戦でハッキリ分かるはずだ」

新たなハードウェアの投入予定こそないものの、ホンダは残りのシーズンでも改善の取り組みを続けていく。折原TGMは、最適化を通して引き出せる性能が残っているとし、「わずかなパフォーマンス向上」のために現在も取り組んでいるとしている。

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