さらに深まるストロール欠場の謎―ポケットの中の右手、語られぬ真実…カナダGPで不可解な応答

  • Published:

母国開催となる2025年F1第10戦カナダGPの開幕を翌日に控えた6月12日、ランス・ストロール(アストンマーチン)がメディアの前に姿を現した。だが、前戦スペインGPでの欠場に関わる右手の詳細について多くを語ろうとはせず、そのやり取りは終始、不可解さの残るものとなった。

2週間前に開催されたスペインGPでは、予選Q2で敗退し14番手に沈んだ直後、アストンマーチンが突如としてストロールの決勝欠場を発表。その理由については、2023年に受けた手術に関連する右手および手首の痛みであると説明した。

しかしながら、チームの説明とは裏腹に、パドックでは疑問と憶測が広がった。ストロール本人はこれまで手の痛みについて一切言及しておらず、予選中の無線でも異変を訴える様子はなかったため、そのタイミングでの欠場発表に疑念が向けられた。

右手はポケット、頑なに返答を拒否

ストロールはスペインでの決勝欠場を経て、2023年の自転車事故で手首を骨折した際に手術を担当した、ロードレース世界選手権(MotoGP)でも知られる著名な外科医、ザビエル・ミル医師の診断および手術を受けたとされている。

カナダGPを前にした記者会見では、手の状態や処置内容に関する質問が繰り返されたが、ストロールは椅子に浅く腰掛け、いつものように不機嫌そうな態度で応じた。右手は終始ポケットに入れたままで、詳細を明かすことを頑なに拒み続けた。

手首の動きに問題が出たのかという問いには、「2年前の古傷なんだけど、また気になり始めて…まあ…それで、処置を受けたってだけ」と短く返答。再発の可能性について問われると、「かなり自信はある。大丈夫だと思う」と一言のみ述べた。

治療内容の詳細を追及されると、「さっきも言ったけど、何戦か痛みがあって、特にバルセロナで酷かったから処置を受けた。今はもう痛みはない」と言葉を濁し、さらに「プライバシーに関わることだから、詳しくは話したくない」と付け加えた。

遅すぎた欠場、チームに与えた損失

スペインGPでは予選終了後に欠場が決まったため、規則上チームは代役を立てることができず、フェルナンド・アロンソの1台のみで決勝を戦う異例の事態となった。アロンソは入賞を果たしたが、アストンマーチンはザウバーに逆転を許し、コンストラクターズ選手権では9位に後退した。

ストロールは会見で、「イモラ、モナコを通して数週間にわたって痛みが続いていた」と明かした。そもそも事前に症状を把握していたのであれば、予選前に棄権を決断し、リザーブドライバーを起用する判断を促すべきだったとの声もある。結果としてチームに不利益をもたらしたことは否定できない。

この点についてストロールは、「どんなスポーツであれ、アスリートなら、痛みや違和感に耐えながら結果を出そうとするものだと思う。今回もそうだった。でも頑張ってはみたけど、もう無理しても意味がないと感じたし、悪化しているようにも思えたから、ちゃんとした治療が必要だと思ったんだ」と語っている。

舞台裏での”苛立ち”認める

複数の報道によれば、ストロールはスペインGP予選でQ2敗退を喫した後、ガレージ内で取り乱し、物を投げつけたり、チームメンバーに暴言を浴びせたりしたとされている。この件について本人は、具体的な行為については言及しないまでも、「確かに苛立っていた」と認めた。

「手首の件もそうだし、イモラからの3戦の流れも含めてフラストレーションが溜まっていた。ドライビングに支障が出ていたし、日曜のレースも難しいどころか、おそらく無理だと分かってた。だからかなりイライラしてたんだ」

F1カナダGP特集