TOYOTA GAZOO Racingのナッサー・アル-アティヤから説明を受けるモハメド・ベン・スレイエム国際自動車連盟(FIA)会長、2023年1月9日ダカール・ラリー
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渦中のベン・スレイエムFIA会長、F1の母国で性差別報道

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F1のホーム、イギリスにおけるモハメド・ベン・スレイエムFIA会長への風当たりが強まっている。日刊紙「タイムズ」は27日(金)、20年前の情報を引っ張り出し、F1統括団体のトップが「性差別の嵐」を巻き起こしたとの見出しを付けた。

ソースはベン・スレイエムのかつての公式サイト「mohammedbensulayem.com」だ。ドメインは生きているものの、我々の調査によればサイトは2012年前後に閉鎖されており、現在は閲覧する事ができない。

ただ、インターネットアーカイブを使って2000年代初頭のサイトを閲覧すると「Sulayem up close」というページに次の記述がある。

「モハメド・ベン・スレイエムは、ラリー界におけるチャンピオン中のチャンピオンだが、彼の好き嫌いは基本的にシンプルだ」

「『砂漠が好きだし、人と会うのも好きだ』 だが彼は『お金について話をする事、または自分が男性より賢いと思っている女性も好きではない。本当は違うのだから』と言う」

モハメド・ベン・スレイエムFIA会長の2002年当時の個人サイトcopyright mohammedbensulayem.com

モハメド・ベン・スレイエムFIA会長の2002年当時の個人サイト

ベン・スレイエムの出身、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイは他の首長国に比べて比較的自由な雰囲気が漂い、女性の社会的立場は年々向上しているものの、ヒューマン・ライツ・ウォッチの2021年の報告によるとUAEには今も女性に対する実質的な差別が残っている。

タイムズ紙の報道に対してFIAの広報担当者は、ベン・スレイエムは女性の登用に関して実績があり「2001年に公開されたこのアーカイブサイトでの発言は、FIA会長の信念を反映したものではない」と語った。

「彼はスポーツにおける女性と平等の推進に関して優れた実績を持っており、喜ばしい事に評価されている。これは彼のマニフェストの中心的な役割を果たすもので、今年取られた行動や、彼が長年に渡ってFIAのスポーツ担当副会長を務めてきた事が証明している」

ベン・スレイエム体制下のFIAは昨年9月、史上初となる最高経営責任者(CEO)としてアメリカ出身の女性MBAホルダー、ナタリー・ロビンを任命した。

また、FIA初となる平等・多様性・包括性アドバイザーを設置するというマニフェストに基づきベン・スレイエムは昨年10月、ウクライナ出身の女性、ターニャ・クツェンコを抜擢している。

なにゆえに今、個人サイトの記述が20年もの時を経て掘り起こされたのだろうか。

新規参戦チームの認証や商業権などを巡ってF1とFIAはメディアを介して対立を深めており、これと並行して、その渦中にあるベン・スレイエムには人権問題に関して相次いで批判の声が上がっている。

イギリス貴族院のポール・スクリブン議員は先日、中東でのF1開催におけるスポーツウォッシングに対する懸念を示した1年前の書簡に対する返答がないとして「極めて無礼でプロ意識に欠ける」とベン・スレイエムを批判した。

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