2023年ダカール・ラリーの休息日にアウディ・スポーツのカルロス・サインツSr.と話す国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長、2023年1月9日サウジアラビア・リヤドにて
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2兆6千億円の”暴騰”F1買収報道、示唆的な警告を発するFIA会長…伝家の宝刀の影

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F1買収報道を受けモハメド・ベン・スレイエム国際自動車連盟(FIA)会長は、200億ドル超、約2兆5,900億円という評価額は「暴騰した」ものであり、高値での売却はファンや利害関係者に悪影響を及ぼす可能性があると警告した。

米国の金融経済メディア「ブルームバーグ」は先週、サウジアラビアの公的投資基金「PIF」がF1の商業権を持つ米国のメディア関連企業、リバティ・メディアに買収を打診していたと報じた

揺らめくF1サウジアラビアGPとF1の旗、2021年12月2日舞台ジェッダ市街地コースにて (4)Courtesy Of Alfa Romeo Racing

揺らめくF1サウジアラビアGPとF1の旗、2021年12月2日舞台ジェッダ市街地コースにて

リバティ・メディアは興味を示さず、昨年の早い段階で交渉は頓挫したとされるが、PIFは依然としてスポーツ投資ポートフォリオにF1を追加する事を検討しており、仮に市場に売りに出る事があれば入札する用意があるという。

サウジの隣国、アラブ首長国連邦出身のベン・スレイエムは23日(火)、負債を含めた200億ドルという評価額は適正ではないとの考えを示し、これほどの高値で売却された場合、F1は様々なリスクを抱えることになるだろうと警鐘を鳴らした。

「モータースポーツの管理者として非営利団体であるFIAは、200億ドルという暴騰した値札がF1に付けられたことを警戒している」とベン・スレイエムはSNSを通して主張した。

「潜在的な買い手に対しては、常識を働かせ、F1のより大きな利益を考慮し、単に多額の資金を投じるのではなく、明確で持続可能な計画を立てて臨む事を勧めたい」

「我々の責務は、開催料やその他の商業的コストの増加が将来的にプロモーターにとってどのような影響を及ぼすのかについて検討する事であり、ファンに対する悪影響も然りだ」

多額の投資による買収は早急なリターンを求める行為に繋がりかねず、グランプリの開催権料や放映権が大幅に値上げされたり、その結果として有料テレビ放送のサブスク料金やチケット代の高騰を招く恐れもある。

TOYOTA GAZOO Racingのナッサー・アル-アティヤから説明を受けるモハメド・ベン・スレイエム国際自動車連盟(FIA)会長、2023年1月9日ダカール・ラリーCourtesy Of Red Bull Content Pool

TOYOTA GAZOO Racingのナッサー・アル-アティヤから説明を受けるモハメド・ベン・スレイエム国際自動車連盟(FIA)会長、2023年1月9日ダカール・ラリー

FIA会長がF1の売買に関して口を挟むのにはそれなりの背景がある。

FIAはF1の単なる統括団体というわけではない。現在リバティ・メディアが所有しているF1の放映権を含む商業権は、FIAとF1側(バーニー・エクレストン所有のSLEC社)との間で結ばれた1995年の契約によって貸与されているもので、真の所有者はFIAだ。

それでも自らの組織が持たない権利の売買についてベン・スレイエムが公に口を開くのは奇妙と言えば奇妙だ。

報道が事実だとした場合、大金が目の前に転がり込んできた営利企業のリバティ・メディアは何故、PIFに売らなかったのか?

2017年にリバティ・メディアがF1を買収した際の金額は44億ドルであり、巨額の利益を得られる可能性があったという点で、金額面だけを見ればPIFとの交渉が成立する余地は十分にあったと言えるがそうはならなかった。

別のシナリオとしては、売りたくとも売れなかったという線も考えられる。

貸与契約の詳細は不明だが、今回のベン・スレイエムの異例的な警告、そして2017年のリバティ・メディアへの売却と2005年のCVCキャピタル・パートナーズへの売却の際にFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)が売却を承認した事実からは、FIAが権利売却に関する伝家の宝刀とも言うべき拒否権を持っている事がうかがえる。

いずれにせよ、適正か否かはさておき今回の報道によってF1の価格の一つの目安が打ち立てられた事は確かで、今後潜在的な買い手が増えて価格が更につり上がった場合、リバティ・メディアがどう反応するのか興味深いところだ。

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