レッドブル・レーシングのガレージを訪れたモハメド・ベン・スレイエム国際自動車連盟(FIA)会長、2022年3月11日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1プレシーズンテストにて
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F1とFIAの緊張激化…睨みを利かせるリバティメディア、買収評価額巡るFIA会長の「干渉」を受け

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200億ドル超(約2兆5,900億円)という評価額は適正価格を上回るとするモハメド・ベン・スレイエム国際自動車連盟(FIA)会長のSNSでの投稿を受け、F1のオーナーは「FIAの権限ならびに契約上の権利の両方の境界を踏み越えた」ものだとして強く批判した。

英「BBC Sport」によると、F1の最高法務責任者であるサシャ・ウッドワード・ヒルとF1を所有するリバティ・メディアで同職を務めるレニー・ウィルムの共同名義での書簡がFIA執行部および立法機関の世界モータースポーツ評議会(WMSC)に送られた。

レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーとリバティ・メディアのグレッグ・マフェイCEO、2022年10月30日にエルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われたF1メキシコGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーとリバティ・メディアのグレッグ・マフェイCEO、2022年10月30日にエルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われたF1メキシコGPにて

この書簡の中でF1は「FIAフォーミュラ1世界選手権の商業権を利用する独占的な権利はF1が所有している」として、ベン・スレイエムは「容認できない形で我々の権利に干渉」したと批判した。

また、当該発言によってNASDAQに上場しているリバティ・メディア・グループの価値に損害が及んだ場合「結果としてFIAが責任を負う可能性もある」と警告した。

「上場企業の価値についてコメントすること、特に内部情報を持っていると主張または暗示することは、その企業の株主や投資家に大きな損害を与えるリスクがあり、言うまでもなく深刻な規制上の影響を受ける可能性もある」

FIAが持つF1の商業権はマックス・モズレーがFIA会長を務めていた際に2110年までの100年契約で貸与されたもので、その権利は現在、2017年にF1を買収した米国のメディア企業、リバティ・メディアが所有している。

F1の主張によれば、FIAは商業権の「所有、管理および、または利用を害するようなことは一切しないという事を明確に約束」しているとの事で「F1事業の買い手候補がFIAと協議する必要があるという如何なる推測も間違っている」とも付け加えた。

契約の詳細が不明であるためFIAが現在、F1の商業権に対してどのような権利を持ち合わせて、または持ち合わせていないのかは分からないが、F1は「FIAがF1グループの支配権変更に何らかの役割を果たす状況は非常に限られている」としてFIAを牽制すると共に、条件次第で何らかの権利が存在する事をうかがわせた。

2005年のCVCキャピタル・パートナーズおよび2017年のリバティ・メディアへの売却の際にはWMSCが売却を承認しており、一種の拒否権のような存在が疑われる。

問題視されているベン・スレイエムの投稿は、サウジアラビアの公的投資基金「PIF」がリバティ・メディアにF1の買収を打診していたとする米「ブルームバーグ」が先週報じた内容に基づくものだ。

ベン・スレイエムはSNSを通して「200億ドルという暴騰した値札がF1に付けられたことを警戒している」とした上で、潜在的な買い手は「単に多額の資金を投じるのではなく、明確で持続可能な計画を立てて臨む」べきだとして、適正価格を上回る金額での買収は最終的にファンがそのツケを払う事になると警告した。

一件によってFIAとF1の緊張がエスカレートした事は確かだ。

F1とF1チームは以前からペナルティ裁定やレースの運営方法を巡って頻繁にFIAと対立しており、今回の商業権を巡る応酬で関係が悪化した事は疑いなく、ベン・スレイエムが任期満了まで現職を勤め上げられるかどうかについて一部で疑問の声が上がっているとの噂もある。