ルノーF1チームのモーターホーム
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唯一の顧客 マクラーレンを失うルノー…消える貴重な収入源と懸念されるF1撤退

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ルノー・スポールとマクラーレン・レーシングは、2020年末で期限切れを迎えるF1パワーユニット供給契約を更新しない事で合意。ルノーは後1年半ほどで、唯一のカスタマーチームと貴重な収入源を失う事になる。

ルノーのシリル・アビテブール代表は「我々とのパートナーシップが始まってから、マクラーレンはコンストラクターズ・ランキングで9位から4位へと浮上している。だからこそ我々は、この関係を非常に成功したものと捉えている」と語り、ルノー製F1エンジンの性能の高さを強調した上で、契約満了の道を選んだ理由について次のように説明した。

「しかしながら、2020年末で終わりを迎えるこの契約を更新するどうかについて検討を始めた時、ルノーとマクラーレン双方が将来に向けて抱く野心の違いが浮き彫りになった」

「この決定は、双方が各々過去数週間にわたって慎重に評価した結果だ。2021年シーズンはどのチームにとっても極めて重要なシーズンになる事は明らかで、我々としてはライバルチームがどのような野心を持ち、どのような展望を描いているのかを正確に把握する事が重要なのだ」

「今回の決断は、上位争いにカムバックするという目標の元に復活したワークスチームとしてのルノーのビジョンに沿うものである。これまでのエンジン供給メーカーとしての長きに渡る歴史と同じ様に、ルノーは来シーズンもこれまで同様にマクラーレン・レーシングに対して敬意を持ってコミットメントするつもりだ」

現時点において、ビジネス面・マーケティング面・競技面のいずれの側面からみても、単独供給のメリットを見出すことは難しい。シリル・アビテブール代表は英Skyに対して「撤退する計画など存在しない」と主張したが、マクラーレンがメルセデスを選んだことで、ルノーのF1撤退を危惧する声が上がるのは当然の帰結だと言える。

11年前のクラッシュゲート(ルノーがネルソン・ピケJr.に意図的なクラッシュを命じた事件)以降、ルノーF1のスポンサーシップ収益は、事件前の半分程度の水準にまで落ち込み続けている。ルノーはマクラーレンに対して、年間約1600万ドル、日本円にして約17億2,692万円でパワーユニットを卸していたが、この収入は消えてなくなる。

ルノーF1は昨年の一年間で、1億4660万ポンド(約194億4440万円)の売上を上げたものの支払いコストの方が大きく、結果として740万ポンド(約9億8200万円)の赤字を計上。参戦継続を確実なものとするためには、巨額の投資を正当化出来るだけの成績が必要だといえる。だが、株主が首を縦に振るだけの成果を期待するには、少なくとも新規約が施行される2021年を待たねばならないだろう。