インディ500で優勝した佐藤琢磨
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2017年インディ500決勝結果:佐藤琢磨、アジア人初制覇の歴史的快挙

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日本時間29日(日)未明、米インディアナポリスで行われた第101回インディ500を元F1ドライバーの佐藤琢磨が制覇した。

インディアナポリス500、通称インディ500は、世界三大レースの1つに数えられるモータースポーツ界の頂点に君臨する歴史あるレースであり、琢磨はアジア人として初めて優勝、賞金はおよそ3億円程度になるものと見られている。

インディ500は北米最高峰レース”インディカー・シリーズ”の中の1戦として行われており、琢磨は2010年からこのインディカーに参戦していた。

今年アンドレッティ・オートスポーツに移籍した琢磨は、プラクティス走行から好調をみせ、予選では4番グリッドを獲得、2012年に惜しくも逃した世界的タイトルへの大きな期待を背負っていた。

インディアナポリス・モーター・スピードウェイで行われた200周のレースは、9度のイエローコーションが提示された実に厳しいそして白熱したレースとなった。

全33台のマシンの内、完走したのは20台、13台がリタイヤとなる荒れた展開であった。「No attack No Chance」日本の侍レーサーはその信念を貫きこの激闘を制した。2位にはエリオ・カストロネベス、3位にはエド・ジョーンズが続いた。

「チームの皆にはいくら感謝しても感謝しきれない。(チームを指して)見てみてよこの最高の仲間達を。めちゃめちゃ厳しいレースだったけど、エリオは本当にフェアにドライブしてくれた。僕は彼を信頼していたんだ。本当に最高のレースになった。なんて素晴らしいレースだったんだろう。観客のみんなが楽しんでくれていたら良いな」レースを終えて琢磨の口から出た言葉は”感謝”とファンへの”気遣い”であった。

2017年のインディ500には、現役のF1ドライバーであり2度のF1王者であるフェルナンド・アロンソが電撃参戦、琢磨と同じアンドレッティ・チームの一員としてレースに臨んだ。

世界中のモータースポーツ関係者とファンが注目したアロンソは、一時はレースをリードするなど、その名声に恥じない凄まじい走りを見せたが、残り21周というところでエンジンがブローし、残念ながらリタイヤとなった。レースを終えたアロンソは琢磨の優勝を祝福し、そのサポートに感謝した。

  1. 佐藤琢磨(No.26 Andretti Autosport Honda)
  2. エリオ・カストロネベス(No.3 Team Penske Chevrolet)
  3. エド・ジョーンズ(No.19 Dale Coyne Racing Honda)
  4. マックス・チルトン(No.8 Chip Ganassi Racing Honda)
  5. トニー・カナーン(No.10 Chip Ganassi Racing Honda)

琢磨の所属するアンドレッティチームの代表であるマイケル・アンドレッティは「これは本当に凄い事だよ。琢磨は見事なレースをした。私は彼を間近で見ていたからね。何度も難しい状況に置かれたけど、彼はその状況を切り抜けてみせたんだ。彼はずっと耐え忍んでいたけれど、攻めるべき時に攻めたんだ」と語り、琢磨のカミカゼ・ドライブを絶賛した。

「ターン1でアウト側から2台のマシンを追い抜く時、一回動いたんだ。これは本当に重要なアクションになった。あれはこのレースを決定づけたドライブになったと思う。あの動きを見た時、おいおい、ちょっと待てよ…勝てるかもって思ったんだ。彼は本当に本当に上手く走ったよ」

いきなりトップに躍り出たアロンソ

ローリングスタートで始まった第101回インディ500決勝レース、4番手の佐藤琢磨と5番手フェルナンド・アロンソはスタート直後にポジションを落とすも、徐々に盛り返し訪れた37周目、アロンソがラップリーダーに躍り出る。アロンソ、アレキサンダー・ロッシ、佐藤琢磨のアンドレッティ・オートスポート勢が1-3を独占、F1でのレース経験者がアメリカのレースを先導する序盤となった。

会場を震撼させたディクソンの大クラッシュ

53周目、ジェイ・ハワードがターン1でアウト側のバリアに衝突、コース側に弾き返されたマシンに対し、時速370kmでポールスタートのスコット・ディクソン突っ込み大クラッシュが発生。エンジンが避けるほどの衝撃にディクソンは宙を舞いそのままイン側のフェンスに激突した。コース上にはイエローコーションが出されたものの、直ぐに赤旗中断。幸いなことにディクソンもハワードも無事だった。この時点でのトップ4はアロンソ、ロッシ、琢磨、エド・カーペンターの順。

琢磨ラップリーダーに

30分の中断の後、アロンソ先導でレースがリスタート。自身初のインディ500リスタートとなったトップのアロンソは一気に順位を4つ落とす。65周目に先頭に躍り出たのは琢磨。ラップリーダーとなった直後の66周目、コナー・デイリーがクラッシュし再びイエロー。トップ4は琢磨、ロッシ、ハンター・レイ、アロンソのアンドレッティ勢となったが、リスタートの際に琢磨は大きく順位を落としてしまい、一時17番手の走行を余儀なくされた。

ホンダエンジン、インディ500でも壊れる

138周目、3番手を走行していたライアン・ハンターレイ(アンドレッティ)のエンジンが白煙を吐きイエローコーション。ホンダエンジンは今回信頼性の問題を抱えており、一連のトラブルとの関係が気になる所。ハンターレイはレースを終えた。これでアンドレッティ勢6台の内1台がインディ500を去った。

167周目には、同じくホンダエンジンのチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ)のマシンが白煙に巻かれた。これにより全車一斉に最後のピットストップへと動く。この時点でのトップ10は、チルトン、ジョーンズ、カストロネベス、デイビソン、佐藤琢磨、ヒルデブランド、カナーン、セルビア、アロンソ、パジェノーの順。

そして迎えた179周目、残り21周の所でアロンソのエンジンも白煙を上げた。コース上には再度イエローコーション、18周を残してチルトン、琢磨、カストロネベスの順でレースがリスタートした。

ラスト18周での多重クラッシュ

琢磨2番手でのリスタートとなったラスト18周目、隊列後方で5台が絡む多重クラッシュが発生、9回目のイエローコーションとなった。セルビア、デイビソン、ニューガーデン、パワーらがここで戦列を離れた。ここからの闘いは熾烈だった。琢磨は、エリオ・カストロネベスと一進一退の攻防を繰り広げ、一歩間違えば大クラッシュに繋がりかねない壮絶なレースを制して優勝した。