角田、接触と懲罰で最下位―マクラーレン1-2も王者を含む4台DNFの大波乱 / F1オーストリアGP 2025《決勝》結果と詳報

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2025年FIA-F1世界選手権第11戦オーストリアGPの決勝が、現地時間6月29日にレッドブル・リンクで行われ、ランド・ノリスがポール・トゥ・ウィンを達成。2位にはチームメイトのオスカー・ピアストリが2.695秒差で続き、マクラーレンが1-2フィニッシュを飾った。角田裕毅(レッドブル)は最下位となる16位完走に終わった。

レースは開始前から波乱含みの展開となり、現ワールドチャンピオンがわずか1周目で姿を消すという、大荒れの幕開けとなった。タイトル争いにも影響を与える衝撃の展開に、サーキット全体が騒然となった。

カルロス・サインツはフォーメーションラップに向けて発進できず、メカニカルトラブルによりDNS(決勝不出走)に。さらに15周目にはアレックス・アルボンがガレージへと戻り、ウィリアムズはまさかのダブルリタイア。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は1周目のターン3でアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)に衝突され、チームのホームグランプリで衝撃的な1周目リタイアとなった。

マクラーレン独壇場、一方で”あわや同士討ち”

ピアストリは1周目のターン1で、アウト側からシャルル・ルクレール(フェラーリ)をオーバーテイク。早々にマクラーレンが1-2体制を築いた。11周目には、ターン3・4でラップリーダーが入れ替わるスリリングな攻防が展開された。

一方、20周目にはピアストリがターン4で、レイトブレーキングからタイヤをロックアップ。ノリスのリアに接触寸前まで迫り、観る者すべてが息を呑む一幕があった。チームは無線を通してピアストリに対し、「あれはギリギリすぎた。もう繰り返せない」と釘を差した。

レース終盤には、角田とポジション争いを繰り広げていたバックマーカー、フランコ・コラピント(アルピーヌ)にターン3出口で幅寄せされる格好となり、ピアストリが芝生に押し出される場面もあった。ドライバーズ選手権リーダーをあわやリタイアに追い込むこの動きを受け、スチュワードはコラピントに5秒ペナルティを科した。

この日はマクラーレンの独壇場となり、フェラーリ勢はトップ4からスタートしたものの、終始マクラーレンに迫ることができなかった。シャルル・ルクレールはトップから19.820秒遅れの3位、ルイス・ハミルトンはチームメイトから9.2秒遅れの4位でレースを終えた。

ジョージ・ラッセル(メルセデス)はさらにその後方、フェラーリ勢から33秒遅れて5位に続き、トップ争いからは大きく引き離されたかたちとなった。

角田は接触と懲罰で最下位完走

前日の予選で18番手に終わった角田は、序盤の3台のリタイアと他車のピットインを経て、一時は10番手までポジションを上げるも、15周目のターン3でランス・ストロール(アストンマーチン)と軽く接触。いずれかのマシンからフロントウイングの翼端板が脱落するアクシデントに直面した。

31周目には、ターン4でイン側からコラピントに仕掛けるも、コーナーの立ち上がりで再び接触が発生。コラピントがスピンを喫するかたちとなり、角田はフロントウイングにダメージを負ったようで、再びピットインを強いられた。

この接触についてスチュワードは角田に非があると判断し、10秒のタイムペナルティを科す裁定を下した。追い上げを狙っていた角田にとっては、致命的なタイムロスとなり、62周目の3回目のピットストップでペナルティを消化。最終的には唯一の2周遅れとなる16位完走という非常に厳しい結果に終わった。

フェルスタッペンがリタイアに終わり、角田がポイント圏外に沈んだことで、レッドブルにとっては2022年のバーレーンGP以来となる、実に3年ぶりのノーポイントレースに。まさに悪夢のようなホームグランプリとなった。

波乱のスタート、1周目に消えた王者

サインツがトラブルに見舞われ、フォーメーションラップに向けて発進できなかったことで、スタート手続きが中止となり、レース開始は当初予定から10分遅れとなった。

その後、サインツはマーシャルの補助を受けた後に発進し、1周を走行したのちピットレーンへ戻ったが、出口付近でクルマを停車。直後にリアブレーキ周辺から火が上がり、メカニックが消火器を手に対応にあたる事態となった。

この影響でスタートはさらに5分延び、レース開始は計15分遅れに。周回数も当初の71周から70周へと変更された。結果としてサインツは決勝レースに出走できず、DNSに終わった。

さらに追い討ちをかけるように、17周目にはアルボンもガレージへとマシンを戻し、ウィリアムズはダブルリタイアに終わった。

そしてスタート直後には、さらなる衝撃的なシーンが広がった。アントネッリに衝突されたことでフェルスタッペンが今季初のリタイアに。タイトル争いにおいて極めて大きな痛手を受けた現王者は無線で怒りをあらわにし、「終わった。とんでもない衝撃で当てられた。クソみたいな馬鹿野郎め」と吐き捨てた。一方、アントネッリは「ごめん、リアをロックさせてしまった」とチームに対し謝罪の言葉を述べた。

この接触によりセーフティーカーが導入され、混乱のなか、レースは4周目にリスタートを迎えることとなった。

中団争いも白熱、ザウバーが今季初ダブル入賞

オーストリアGPの中団争いは終始見ごたえある展開となり、ザウバーが今季初となるダブル入賞を果たす快挙を達成した。

前日の予選でキャリア初のQ3進出を果たしたガブリエル・ボルトレートは、序盤から安定したペースを維持してポジションを守り切り8位でフィニッシュ。終盤には、師匠であるフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)に果敢に挑んだが、7位には一歩及ばなかった。

一方のニコ・ヒュルケンベルグは、16番手スタートから11ポジションを巻き返す力走を見せ、9位でチェッカー。ベテランらしい堅実かつアグレッシブな走りで、チームに貴重なダブルポイントをもたらした。

レーシング・ブルズのリアム・ローソンは、アロンソと並んでレース中唯一となる1ストップ戦略を採用。タイヤを見事にマネジメントし、ペースを落とすことなく中団グループの最上位となる6位入賞を飾った。一方、チームメイトのアイザック・ハジャーは12位でレースを終えた。

ハースのエステバン・オコンも奮闘を見せた。残り11周でハジャーを交わし、10位に浮上。そのまま順位をキープし、7ポジションアップでフィニッシュ。チームに1ポイントをもたらした。チームメイトのオリバー・ベアマンは11位でフィニッシュし、惜しくもポイント圏には届かなかった。

2025年F1第11戦オーストリアGP決勝リザルト

Pos No Driver Team Laps Time PTS
1 63 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 70 1:23:47.693 25
2 1 オスカー・ピアストリ マクラーレン・メルセデス 70 +2.695s 18
3 12 シャルル・ルクレール フェラーリ 70 +19.820s 15
4 81 ルイス・ハミルトン フェラーリ 70 +29.020s 12
5 16 ジョージ・ラッセル メルセデス 70 +62.396s 10
6 44 リアム・ローソン レーシングブルズ・ホンダRBPT 70 +67.754s 8
7 14 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 69 +1 lap 6
8 27 ガブリエル・ボルトレート ザウバー・フェラーリ 69 +1 lap 4
9 31 ニコ・ヒュルケンベルグ ザウバー・フェラーリ 69 +1 lap 2
10 55 エステバン・オコン ハース・フェラーリ 69 +1 lap 1
11 87 オリバー・ベアマン ハース・フェラーリ 69 +1 lap 0
12 22 アイザック・ハジャー レーシングブルズ・ホンダRBPT 69 +1 lap 0
13 43 ピエール・ガスリー アルピーヌ・ルノー 69 +1 lap 0
14 5 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 69 +1 lap 0
15 10 フランコ・コラピント アルピーヌ・ルノー 69 +1 lap 0
16 6 角田裕毅 レッドブル・ホンダRBPT 68 +2 laps 0
NC 18 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 15 DNF 0
NC 4 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 0 DNF 0
NC 30 アンドレア・キミ・アントネッリ メルセデス 0 DNF 0
NC 23 カルロス・サインツ ウィリアムズ・メルセデス 0 DNF 0

コンディション

天気晴れ
気温30℃
路面温度51℃
周回数70

セッション概要

グランプリ名 F1オーストリアGP
レース種別 決勝
レース開始日時

サーキット

名称 レッドブル・リンク
設立 1969年
全長 4318m
コーナー数 10
周回方向 時計回り

F1オーストリアGP特集