ホンダの強力なエンジンモードがフェルスタッペンの2連覇を可能にした、とレッドブル
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、F1オーストリアGPでのマックス・フェルスタッペンの勝利の背景には、フェルスタッペンの卓越したドライビングも然る事ながら、ホンダの強力なエンジンモードの存在があると強調した。
シュピールベルクでの週末に先立って、レッドブル・ホンダは決してコンテンダーに名を連ねていなかったが、昨年のウィナーである若干21歳のオランダ人ドライバーは、チームの母国レースでメルセデスとフェラーリをコース上での真っ向勝負で打ち破り、昨季より続いてきたシルバーアローの10連勝に終止符を打った。
優勝をもぎ取るために「モード11」の使用を許可
スタートの際にエンジンがアンチストールした事で、フェルスタッペンは1周目のターン1までに5つポジションを落としたが、これが70周に渡るレースをより一層エキサイティングなものへと変貌させた。
ミディアムタイヤでの第一スティントは、ラップリーダーのシャルル・ルクレールとほぼ同ペース。彼との間の14秒というギャップは一向に縮まる気配を見せなかったが、31周目にピット作業を行いハードタイヤに履き替えると息を吹き返し、一転して強力なレースペースを示し始めた。
4番手でピットアウトした時点でのルクレールとのギャップは12.914秒。フェルスタッペンはその後チェッカーに至るまで、ルクレールよりも1周あたりコンマ4秒近いペースを刻み続け、66周目という最終盤でDRSが使用可能な1秒以内へと接近。残り3周でトップの座を奪い取り、歴史的な逆転劇を演じた。
「ゲームオーバーだと思ったよ」とヘルムート・マルコ。ブラックアウト直後の失速に、希望を失っていたと明かした。「でもマックスはその後、徐々に目を覚まし始めて、ラスト30周は火花飛び散る位に途方もない素晴らしい走りを見せてくれた」
第2スティントでの高い競争力の理由の一つはハードタイヤだが、ヘルムート・マルコはホンダの強力なエンジンモードの存在を忘れてはならないと強調する。レッドブルのピットはバルテリ・ボッタスを交わして2番手に浮上した後、「エンジンモード11、ポジション5を使え」と指示。ルクレールを捕まえて優勝するために、強力なマップの使用をフェルスタッペンに許可した。
「ホンダの事についても話をしておかなければならない。彼らはその30周の間、エンジンをフルパワーで使わせてくれたのだ。その上タイヤには一貫性があり、シャシー側にはマックスがブレーキング勝負を挑めるだけのファンタスティックな性能があった」
「この勝利は、彼が真っ当にスタートを切って1台のみをオーバーテイクして勝つよりも、はるかにエキサイティングな優勝だったと言える」
レース当日は気温が35度近くにまで上がる暑い一日で、路面温度に至っては50度を超えていた。オーバーヒートを抱えたメルセデスはエンジンの保護を強いられ、各種モードを使う事が出来ず、終始リフトアンドコーストに専念しなければならない状況に追い込まれていた。
パワーと信頼性はトレードオフだ。メルセデスがエンジンモードの使用を禁じたのは、今後を見据えた上での長期的視点での決断とも言えるし、「モード11」を使ったがために、フェルスタッペンはこの後に控えるグランプリで痛手を負う可能性もある。
そのため一概に断定する事は出来ないが、もし仮にホンダPUの冷却要求が低くメルセデスがそうでないとするならば、厳しい暑さが予想されるヨーロッパラウンド後半戦は非常に面白くなりそうだ。
「今もなお年間5勝は可能」とレッドブル
ルノーとの喧嘩別れを選び、レッドブルは今季よりホンダとの新シーズンをスタート。ヘルムート・マルコは開幕前のバルセロナ公式テストを終えると「最低5勝は挙げられる」「今年のチャンピオンは当然マックスだ」と語ったが、パドック内での意見は冷やかだった。
だが、レッドブル・リンクでの今季初優勝を受け、マルコは今もその高い目標を達成できると確信している。
「東京で行われたプレスカンファレンスで、私は5勝する事を約束した」とヘルムート・マルコ。
「その後しばらく、何人かの人々に”お前は狂っている”とか言われたりしたものだが、私は今でもその目標を達成できると信じている」
「マックスに勝利に足るだけの競争力あるマシンが提供できないのであれば、我々としてはチームに彼を引き留めておきたくはないのだ。そう、目標は、彼を史上最年少F1ワールドチャンピオンに立たせる事なのだ」