
幻のペナルティ―サインツの次戦3グリッド降格処分、FIAはなぜ撤回したのか?
2025年F1第4戦バーレーンGPのレース終了直後、カルロス・サインツ(ウィリアムズ)に対して発行された”次戦サウジアラビアGPでの3グリッド降格ペナルティ”の通達が、わずか10分余りで撤回されるという異例の事態が発生した。
問題の発端は、レース中盤のリスタート直後、サインツがターン10でアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)と接触し、10秒のタイムペナルティを受けたことだった。FIAはレース終了後、サインツがこのペナルティを消化しない状態でリタイアしたと判断し、次戦でのグリッド降格処分を通知した。
だが実際には、サインツはペナルティの通達を無線で受けると即座に消化の意向を示し、リタイアの1周前にピットイン。10秒のペナルティを消化した上でソフトタイヤに交換し、1周した後にクルマをガレージに収めていた。このピットインの事実は、FIAのトランスポンダーにも記録されている。
Courtesy Of Williams
アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をリードするカルロス・サインツ(ウィリアムズ)、2025年4月13日(日) F1バーレーンGP決勝レース(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
英専門メディア『The Race』によると、この件についてFIAは、レースコントロールのシステムに通常表示される「ペナルティ消化完了」の通知が当時機能しておらず、その結果としてスチュワードが誤った判断を下したと説明した。
こうしてグリッド降格処分は取り消されたが、接触インシデントに対する裁定自体が撤回されたわけではなく、サインツには2点のペナルティポイントが加算され、過去12カ月間の累積は3ポイントに達した。
バーレーンGPでスチュワードを務めたヴィタントニオ・リウッツィらは、サインツに対してペナルティを科した理由について次のように説明している。
「ターン10の進入時、サインツはフロントタイヤをロックさせたことでアンダーステアとなり、アントネッリの方へと流れて彼をコース外に押し出した。その結果、アントネッリは2つポジションを失った」
アントネッリとの接触についてサインツは、「セーフティカー明けのポジション争いの中で起きた一瞬の出来事だった。履いていたのはハードタイヤで、熱が入っておらず、クルマのダウンフォースも失われていた」と釈明した。
サインツはこのインシデントの直前にレッドブルの角田裕毅と接触し、サイドポッドとフロアに大きなダメージを負っていた。その影響でクルマのダウンフォースは大幅に失われ、レースの続行が困難となり、最終的にリタイアを余儀なくされた。
2025年F1第4戦バーレーンGPでは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)が今季2勝目を上げ、2位にジョージ・ラッセル(メルセデス)、3位にランド・ノリス(マクラーレン)が続く結果となった。
ジェッダ市街地コースを舞台とする次戦サウジアラビアGPは、4月月18日のフリー走行1で幕を開ける。