不満げな表情のレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2019年F1ベルギーGPにて
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またスパの1周目…接触したフェルスタッペンとライコネン、お互い責めず?

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スパ・フランコルシャンの1周目のターン1には魔物が住んでいる。2012年のF1ベルギーGPでは小林可夢偉がロマン・グロージャン砲に撃沈され、昨年はニコ・ヒュルケンベルグ砲がフェルナンド・アロンソとシャルル・ルクレールを撃破。そして2019年はキミ・ライコネンとマックス・フェルスタッペンが接触した。

思い返せば2016年、両者は同じくスパの1周目に接触。その際もターン1だった。アウト側にはライコネン、イン側にはフェルスタッペンという配置も同じ。まさにデジャブだが、レース後の両ドライバーの対応は大きく異る。

2016年の時は、接触後のフェルスタッペンのドライビングに対してライコネンが苦言。「ヤツのブレーキングは危険過ぎる。あれは駄目だ。大惨事にならなかったのは運が良かったから」と批判。これに対して若かりしオランダ人ドライバーは「嘘ばかり」と真っ向から否定し、両者の関係は悪化した。

あれから3年。フェルスタッペンはスタートで出遅れ、ポジションを大きく落としながらターン1へと向かった。イン側のラインを走行していたフェルスタッペンは、アルファロメオの右後輪と接触。ライコネンの車体は浮き上がり、2輪が空に浮いた。

この接触によってフェルスタッペンのトラックロッドが破損。制御を失ったフェルスタッペンは、オー・ルージュの壁に吸い込まれ、そのままリタイヤを喫した。

一方のライコネンは、接触によってボディーワークとフロアを破損。合計3度のピットインを強いられながらも、エアロバランスが悪化したマシンで長く厳しい我慢のレースを戦い、最終的に16位でフィニッシュした。

「もちろん、週末を最高の形で締め括れたわけじゃないけど、昨日のF2でのクラッシュを思えば、人生最悪の出来事ではないし、これをストレスと言うわけにはいかないね」とフェルスタッペン。成熟を重ねた21歳は、今回のインシデントはレーシングアクシデントだと主張した。

「スタートは最悪だった。トラクションが悪く、クラッチをリリースしたらホイールスピンしてしまい出遅れてしまった。ターン1に向けて内側のラインをキープしようと思ってたんだけど、たぶんキミは、僕より完全に前に出たと考えて、そのまま自分のラインを走行したんじゃないかと思う」

「誰も責める事はできない状況だった。キミは単純に僕のことを見てなかっただけだろうし、横並びになってる状態で彼がターンインしてきたから、お互い後ろに下がって避けることは出来なかった」

「不運だけど、レースではこういった事は起こるものさ。チームとしては本当に悔しいけどね。もちろん、来週のイタリアGPでは、もっといい週末になるよう頑張るよ」

レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表は、フェルスタッペンを擁護する立場を取りながらも、かと言ってライコネンを責める事もしなかった。

「マックスは昨年のハンガリーGP以来、20戦以上連続でトップ5フィニッシュを飾っていただけに、あのインシデントは残念だった。まるで2016年のキミとの接触の再現のようだった」とクリスチャン・ホーナー。

「たぶんキミにとっての死角だったんだろう。あれはレーシングアクシデントだ。キミはマックスがあそこにいたのを知らなかったんだと思う。問題なのはスタートだ。あれによって集団に飲み込まれ、それが今日の我々に噛み付いた」

クリスチャン・ホーナーの指摘は的を得ていたようだ。クルマを降りたばかりのライコネンは、自分のイン側にフェルスタッペンなど見ていないと語った。

「気づいたら2輪で走っていた」とライコネン。「まだ映像を確認してないから何かを語るのは難しいけど、メルセデスがタイトなラインを取っていたから、僕は減速することに集中していた。正直に言って、僕は彼の姿を見てはいない」

「今日は速さがあっただけに残念だよ。接触によるダメージが大き過ぎた。コース上に残っても殆ど無意味だったけど、レースでは何が起こるか分からないからね。最後まで走ってフィニッシュしたよ」

ライコネンとは対照的に、アルファロメオのフレデリック・バスール代表は「キミはフェルスタッペンの極めて楽観的な動きのために接触し、彼のレースはスタートから僅か数百メートルで終わってしまった」と語り、フェルスタッペンのドライビングを非難した。

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