フェラーリF1マシンを模したシングルシーターに乗る51歳男性がチェコ中央ボヘミア州警察に逮捕される様子、2025年9月7日

6年逃げ続けた“フェラーリF1もどき”、ついに逮捕―チェコ公道疾走、パトカー&ヘリ追跡劇の末に

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チェコで6年間にわたり公道を疾走し、たびたび目撃されながらも捕まらなかった“フェラーリF1マシンもどき”の運転手が、ついに逮捕された。チェコ中央ボヘミア州警察が2025年9月7日(日)に発表した。

通報を受け追跡、6年越しの逮捕

事件が動いたのは7日の午前8時15分。首都プラハの南西約40キロ、ドブジーシュ近郊のガソリンスタンドにF1マシン風の真っ赤なシングルシーターが現れたとの通報が警察に入った。さらに2分後には「D4高速道路をプリブラム方面へ猛スピードで走行している」との追加通報が寄せられた。

警察は直ちに複数のパトカーとヘリコプターを出動させ捜索を開始。通報から約15分後、ブク村で車両を停止させ、運転していた51歳の男性を逮捕した。アルコール・薬物反応はいずれも陰性だった。男性は取り調べに応じておらず、警察は身元を公表していない。

チェコの高速道路を違法走行するフェラーリF1マシンを模したシングルシーター、2025年9月7日Courtesy Of チェコ中央ボヘミア州警察

チェコの高速道路を違法走行するフェラーリF1マシンを模したシングルシーター、2025年9月7日

このマシンは2019年に初めて公道を走る姿が確認され、当時45歳だった人物が容疑者として行政庁に引き渡された。だがヘルメットを被っていたため身元を特定できず、処分を免れていた。その後も2022年にD4高速道路で目撃されていたが、今回ついに現場で運転者を直接確認したことで逮捕に至った。

逮捕の様子は、本人と息子が運営するとされるYouTubeチャンネルやInstagramでも公開されている。映像には、警察に囲まれ自宅の庭に車両を牽引される場面や、男性が警官と口論する様子が収められている。

“フェラーリ”の正体と違法性

リアウイングには「Marlboro」のロゴ、フロントノーズには跳馬のエンブレムとカーナンバー「7」が描かれ、一見するとフェラーリのF1マシンのように見える。だが実際には、FIA-F2選手権の前身にあたるGP2シリーズのマシンとみられる。

F1でカーナンバー「7」と言えばキミ・ライコネンを思い起こすが、「Marlboro」のロゴがウイングに掲げられていたのは固定ナンバー制導入以前の時代。そのため、ミハエル・シューマッハが2004年に7度目のタイトルを獲得した「F2004」を模した可能性も考えられる。

ミハエル・シューマッハが2004年のF1タイトルを獲得した「F2004」をドライブしたミック・シューマッハ、2019年F1ドイツGPにてCourtesy Of Ferrari S.p.A.

ミハエル・シューマッハが2004年のF1タイトルを獲得した「F2004」をドライブしたミック・シューマッハ、2019年F1ドイツGPにて

警察は声明で「この種のレーシングカーは技術要件を満たしていないため公道走行は違法。鋭利な外装に加え、ライト、ウインカー、ナンバープレートなど必要な装備を欠いており、本人だけでなく周囲の運転者にとっても非常に危険だ」と断じた。

この違反行為は行政処分の対象となり、今後は所轄の行政機関に引き渡される。警察によれば、数千チェコ・コルナ(1コルナ=約7円)の罰金に加え、免許停止処分が科される可能性があるという。

6年間にわたり当局を翻弄してきた運転者はついに逮捕されたが、この珍事はチェコの交通史に刻まれるお騒がせ事件として永らく記憶されることになりそうだ。