ガレージからコースに向かうオリバー・ベアマンのハースVF-25、2025年5月23日(金) F1モナコGPフリー走行(モンテカルロ市街地コース)
Courtesy Of Haas

厳罰がチャンスに? ベアマン、”意図的Q1敗退”を経て「クレイジー」戦略で一発逆転へ

  • Published:

オリバー・ベアマン(ハース)にとって、この1週間は“赤旗”に翻弄され続ける展開となった。前戦では予選ラップが赤旗により抹消され、今週末のモナコGPでは、赤旗中の追い抜きにより10グリッド降格という重いペナルティが科された。だが、この「厳しすぎる」とも言える処分が、皮肉にも彼にとってチャンスとなる可能性がある。

フランコ・コラピントのクラッシュによりベストラップが抹消され、「完全に不公平」なQ1敗退を喫したイモラから1週間。ベアマンは再び、スチュワードによる厳しい聴聞に臨むこととなった。FP2で赤旗中にカルロス・サインツをオーバーテイクした行為が問題視されたのだ。

調査と聴取の結果、オーバーテイク以前の段階で、ベアマンの視界にはすでに赤旗を示すライトパネルが点灯していたことが確認され、さらにステアリング上のディスプレイにも赤旗が表示されていたことから、処分は避けられないものとなった。

10グリッド降格という重い処罰は近年では稀であり、同様の処分が科されたのは、パストール・マルドナドがモナコGPで、ジャン=エリック・ベルニュがヨーロッパGPで、それぞれ2012年に「回避可能な接触」を引き起こした際に遡る。

メディア対応するオリバー・ベアマン(ハース)、2025年5月22日(木) F1モナコGPプレビュー(モンテカルロ市街地コース)Courtesy Of Haas

メディア対応するオリバー・ベアマン(ハース)、2025年5月22日(木) F1モナコGPプレビュー(モンテカルロ市街地コース)

モナコでの予選でベアマンは17番手に終わり、Q1敗退となったが、これはハースからの指示に従い、意図的にペースを落としたことが要因だった。

予選後のインタビューでベアマンは、言葉を選ぶように長い沈黙の後、「…Q2に進もうとは思ってなかったんだ。でも、予選でのクルマの感触は週末を通して一番良かったし、自信もあった。Q2に進めるだけのラップは走れたと思う」と語り、「最後までやりきれなかったのは少し残念だけど」と付け加えた。

ベアマンがQ2に進出した結果として、チームメイトのエステバン・オコンがノックアウトするような事態はチームとして避けなければならない。

ハースの小松礼雄代表は、「オリーにはあらかじめ『バックオフする』よう伝えていて、実際にその通りに対応してくれました。非常にコントロールの難しい状況でしたが、完璧にやり遂げてくれました。結果的にQ1でエステバンの0.1秒後ろという、我々が望んでいた通りの内容になりました」と振り返った。

こうしてベアマンは最後尾スタートが確定したが、これは意外にも彼にチャンスをもたらす可能性を秘めている。事実上の2ストップ義務化ルールが導入される今回のレースにおいて、最後尾スタートは戦略的な自由度が最も高いポジションでもあるからだ。

ベアマンは、先陣を切っていち早くピットストップを敢行し、クリーンエアを活用してポジションを大幅に上げるギャンブルに打って出ることができる。最後尾という立場だからこそ、最大限のリスクを取って“何か特別な策”を試す余地があるのだ。

決勝での戦略についてベアマンは「何か手を打たなきゃならないと思う。まだ具体的には分からないけど、何かできるはずだし、僕的に言えば、クレイジーなレースになるのは確実だと思う」と期待を込めて語った。

娘を抱きかかえて妻とともにパドックを歩くハースのF1リザーブドライバー平川亮、2025年5月22日(木) F1モナコGPプレビュー(モンテカルロ市街地コース)Courtesy Of Haas

娘を抱きかかえて妻とともにパドックを歩くハースのF1リザーブドライバー平川亮、2025年5月22日(木) F1モナコGPプレビュー(モンテカルロ市街地コース)


2025年F1モナコGP予選では、ランド・ノリス(マクラーレン)がポールポジションを獲得。2番手はシャルル・ルクレール(フェラーリ)、3番手はオスカー・ピアストリ(マクラーレン)という結果となった。

決勝レースは日本時間5月25日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周3340mのモンテカルロ市街地コースを78周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

F1モナコGP特集