
アダーミとの噛み合わない意思疎通―ハミルトン、フェラーリ移籍後の課題浮き彫りに
スクーデリア・フェラーリのドライバーとして初めて迎えた2025年FIA-F1世界選手権の開幕戦オーストラリアGPでは、クルマへの適用やエンジニアとのコミュニケーションなど、ルイス・ハミルトンが抱える幾つかの課題が浮き彫りとなった。
7度のF1ワールドチャンピオンは、ピットストップのタイミングの影響で1周のみレースをリードすることはあったが、終始、トップ7圏外でのレースを余儀なくされ、最終10位でフィニッシュした。
レース後、ハミルトンは「マシンに全く自信が持てなかった」と語り、操縦性に苦戦したことを明かした。「本当にトリッキーなレースだった。正直、こんなに厳しい展開になるとは思っていなかった」と振り返る。
「レースの大部分で、マシンが勝手に壁に向かっていこうとしているように感じた。なんとかクラッシュせずに完走できたことに感謝している」と述べ、新たな環境への適応の難しさを滲ませた。
さらに、「新しいパワーユニットでの走行は、特にウェットコンディションでは独特だった。求められるセッティングが異なるし、ドライビングスタイルも変えなければならない。ステアリングのセットアップも違っていた」と語り、かつての愛機であるシルバーアロー(メルセデス)との違いに苦戦していることを明かした。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
アルバート・パーク・サーキットのパドックを歩くフェラーリのシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトン、2025年F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)
エンジニアとの意思疎通に課題、無線で苛立ちも
ハミルトンと担当レースエンジニアのリカルド・アダーミとの間で、意思疎通が不足していることが浮き彫りとなった。
レース中盤、ハミルトンはアレックス・アルボン(ウィリアムズ)を攻略できずにいた。その際、アダーミからシフトアップに関する指示が入ったが、ハミルトンは「放っておいてくれ、放っておいてくれって。僕は走りながらマシンを学んでいるんだ。DRSに関しては僕に任せてくれ。問題じゃない」と強い口調で返答した。
その後もアダーミはオーバーテイク・モードと見られる「K1」を使用するようアドバイスしたが、ハミルトンは「適切な位置にいない」と返し、少し苛立った様子を見せた。
英「Sky Sports F1」の解説者であるカルン・チャンドックは、「どの程度のコミュニケーションを取るべきなのか、どのような情報を求めているのかを理解する時間が必要だ」と指摘し、ハミルトンとアダーミの意思疎通には改善の余地があると分析する。
「レース中、ルイスは何度か『何か教えてくれ』と無線で要求したが、その直後に『情報が多すぎる、もう言わなくていい』とも伝えていた。彼らはまだお互いに関係を築けていない」とチャンドックは指摘する。
また、「レースエンジニアとドライバーは、シーズン中に家族よりも多くの時間を共にする。まだ第1戦が終わったばかりだから、もっと時間をかけて意思疎通を深める必要がある。中国GPまでの間に話し合いを持つべきだ」と提案した。
戦略ミスと天候判断の誤算、チャンスを逃す
フェラーリはレース中、雨の影響を過小評価し、ピットストップのタイミングを遅らせた。これが結果的に不利に働き、ハミルトンの順位低下の一因となった。同時に、これはハミルトンとアダーミの情報共有が不十分だったことが影響した可能性もある。
フェラーリは降雨が短時間で収まると判断し、ステイアウトの戦略を選択した。しかし、実際には雨は強まり、ハミルトンは大きく順位を落とす結果となった。
46周目にラップリーダーへと浮上した直後、雨脚が強まったことを受け、ハミルトンは無線で「雨は降らないって言ったよね? 大きなチャンスを逃したと思う」とアダーミに伝えた。
また、レース後には「雨の予測に関する情報共有がスムーズではなかったように感じる。もし適切な情報が得られていれば、結果は違っていたかもしれない」とも振り返った。
一方でアダーミについては、「本当にいい仕事をしてくれたと思う。僕らは少しずつお互いを理解しつつある。この後、無線のやり取りを振り返って、僕が言ったこと、彼が言ったことをすべて見直すつもりだ」と語り、関係構築には時間がかかるとして、今は最適のあり方を模索している最中だと説明した。
2025年F1第1戦オーストラリアGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを果たして通算5勝目を獲得。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2位、ジョージ・ラッセル(メルセデス)が3位という結果となった。
上海インターナショナル・サーキットを舞台とする次戦中国GPは、3月21日のフリー走行1で幕を開ける。フリー走行が一回のみのスプリント・フォーマットが採用される。