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見た目は旧車、でも刷新―RB21に隠されたレッドブルの秘密
2025年のF1プレシーズンテストがバーレーン・インターナショナル・サーキットで進行する中、レッドブル・レーシングの新車「RB21」が注目を集めている。外観は昨年の「RB20」と大きな違いはないが、実際には大幅な改良が施されているという。
見た目では判別できない大きな変化
RB21とRB20を同じアングルで比較しても、外観上の違いはほとんど見られない。そのため、本命のアップデートを開幕戦オーストラリアGPまで隠しているのではないかとの憶測も飛び交っている。しかし、チーム代表のクリスチャン・ホーナーはこれを否定した。
「このマシンは、見た目以上にまったく新しいマシンだ。その秘密はボディワークの下、つまりマシン内部とその構造に隠されている」とホーナーは述べた。
テクニカル・ディレクターのピエール・ワシェも「変更の大部分は目に見えない部分にある」と述べ、特に冷却システムやフロアデザインの見直しが行われたことを強調した。
ホーナーによれば、RB21の外観がRB20と似通って見えるのは、昨年のデザイン哲学を踏襲しているために過ぎないという。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
VCARB 02を駆るアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)に先行するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のRB21、2025年2月28日(金) F1プレシーズンテスト3日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
RB20は昨年後半、バランスの問題に苦しんだ。これを受け、RB21にはその課題を解決するための改良が施されている。
特に冷却システムの変更により空力開発の自由度を増し、マシンの作動領域(ウインドウ)を拡大。セットアップの柔軟性を向上させ、さまざまなサーキットへの適応力を強化したようだ。
さらに、軽量化にも成功。バラストの配置による重量バランスの調整幅が広がり、セットアップの自由度が増しているという。
冷却系の変更で空力自由度を確保
RB21のサイドポッドは、RB20と比較すると上面後方の溝が抑えられ、全体的にボディワークとより一体化したデザインになっているように見える。
Courtesy Of Formula1 Data
レッドブル・レーシングの2025年型F1マシン「RB21」と2024年型「RB20」のサイドポッド・エンジンカバーの比較
また、冷却系の小型化・積層化により、内部コンポーネントがコンパクトにまとめられており、これらの内部構成に沿ってボディワークは波打つような形状となっている。
レッドブルは、傍からは確認できないボディワーク内部の最適化を通じて、フロアとサイドポッドの間の空間を確保し、特にベンチュリ・トンネル周辺の空力性能向上を目指したようだ。
RB20では冷却システムが制約となり、レッドブルは思うように空力開発を進めることができなかった。
フロアデザインの変更
マシンの挙動をより予測しやすく、一貫性のあるものとするため、レッドブルはフロアデザインの改良に注力した。
目視できる範囲で言えば、バーレーンで確認されたRB21のフロアは、昨年後半の仕様をさらに発展させたもので、特にアンダーフロアの気流制御を最適化するためにフロアエッジの形状が変更されている。これにより、コーナリング時の安定性向上が期待される。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
リアム・ローソン(レッドブル)がドライブするRB21のフロアエッジ、2025年2月27日F1プレシーズンテスト
RB21について、マックス・フェルスタッペンは「全体的に改善されている。クルマの挙動が昨年よりも予測しやすくなったし、セットアップの変更にも一貫した反応を示している」と評価し、昨年感じていたマシンの扱いにくさが解消されつつあることを示唆した。
テスト初日におけるフェルスタッペンのロングランペースは、その改善の一端を示している可能性がある。特にタイヤ摩耗が進んだ状態では、マクラーレンやメルセデスを上回るパフォーマンスを見せていた。
とはいえ、RB21の真の実力が試されるのは、アルバート・パーク・サーキットで行われる開幕戦オーストラリアGPとなるだろう。
バーレーンはストップ・アンド・ゴー型の特性を持つため、マシンのバランス変化を検証するには最適とは言えず、求められるセットアップの幅も限られる。RB21が実際に進化したのかどうかについては、少なくともアルバート・パークでのパフォーマンスを待つ必要がある。