グリッド上でインタビューを受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年6月1日(日) F1スペインGP決勝(カタロニア・サーキット)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

フェルスタッペン、ル・マン24参戦へ現実味?―”FIA最上位ライセンス”を取得…一方でレッドブルの判断は?

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4度のF1ワールドチャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、国際自動車連盟(FIA)の最上位格付け「プラチナ」ライセンスを取得。これにより、ル・マン24時間レースなど、世界屈指の耐久レースへの参戦に向けた重要な一歩を踏み出した。

FIAドライバー分類「プラチナ」格とは?

ル・マンやデイトナ24時間、スパ24時間といった名だたる耐久レースを含むFIA世界耐久選手権(WEC)やIMSAスポーツカー選手権などへの参戦には、FIAの公式ライセンスが必要となる。これは、実力差のあるドライバー同士が同じカテゴリーで競うことによる危険を防ぐための安全対策の一環だ。

FIAが2015年に導入したこのライセンス制度において、「プラチナ」は最上位に位置付けられている。FIAスーパライセンスを保持していれば申請により自動的に取得できるが、実際に申請する現役F1ドライバーは少ない。

現時点での保持者は、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、フランコ・コラピント(アルピーヌ)、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ランス・ストロール(アストンマーチン)、そしてフェルスタッペンの6名のみだ。

マックス:”ブロンズ”狙いで申請も

米誌『Newsweek』によると、フェルスタッペンはスペインGPを前に、数週間前に申請したことを明かし、「いずれは申請するつもりだったから、早めに済ませたんだ。申請はすごく簡単で、フォームに記入して手数料(注:150ユーロ)を払うだけ。一週間後には回答が来た」と説明した。

さらに、「本当はブロンズライセンスを狙ってたんだけどね!」と冗談交じりに笑い、「せめてシルバーにしてもらえるよう抗議しようかな。でも、たぶん無理だろうね」とも語った。

フェルスタッペンは以前から、F1以外のカテゴリーへの関心を公言しており、とりわけル・マンやニュルブルクリンク24時間レースへの参戦意欲は周知の事実だ。父ヨス・フェルスタッペンとのル・マン共演を希望していることも知られており、またフェルナンド・アロンソとのタッグの可能性についても言及している。

自身のチーム「Verstappen.com Racing」を通じては、オーナーとしてGTワールドチャレンジ(GTWC)に参戦。最近では、「フランツ・ヘルマン」の偽名を用い、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで開催されたニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)のテストに参加し、非公式ながらもNLS GT3カテゴリーのラップレコードを更新する走りを披露した。

険しい参戦の道、一方でチーム許可に光明

耐久レースへの準備は着実に進められているが、その道のりは決して平坦ではない。ル・マンはF1カナダGPと日程が重なる年も多く、現役中の参戦は極めて難しいのが現実だ。

また2025年のニュル24時間に関しては、日程の衝突こそないものの、参戦には「パーミットA」ライセンスが必要となり、その取得には所定の座学講習に加え、NLSレースでの2度の無事故完走が求められる。

さらに現役F1ドライバーが他カテゴリーに出場するには、チームからの許可が不可欠だ。チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、「レースを欠場するという選択肢は論外」と強調しつつも、日程が重複しない場合については含みを持たせている。

一方、モータースポーツ・アドバイザーのヘルムート・マルコは、実際にレースに出ることになれば「周囲のドライバーたちが自分の実力を証明しようとして気負いすぎ、その結果としてはマックスが面倒な事態に巻き込まれることが心配だ」と懸念を示しつつも、「許可を出すことになるだろう。結局のところ、GTマシンの速度は比較的遅い」と理解を示したうえで、「秋には何らかのチャンスが訪れると思う」と付け加えた。

F1という最高峰の舞台で頂点に立ち続けながら、耐久レースという新たな挑戦に向けても確実に歩を進めるフェルスタッペン。その“二足の草鞋”が現実となる日は、意外にも、そう遠くないのかもしれない。