今井弘、マクラーレンF1を退社しブリヂストンへ復帰—モータースポーツ管掌に就任
F1チームのマクラーレン・レーシングで長年にわたり活躍してきた今井弘氏が、ブリヂストンに復帰することが決定した。3月1日付で新設された「モータースポーツ管掌(常務役員)」に就任し、同社のモータースポーツ戦略を統括する役割を担う。
今井氏のブリヂストン復帰は、同社が掲げる「サステナブルなグローバルモータースポーツ活動」の強化戦略の一環と位置づけられる。今井氏のリーダーシップのもと、ブリヂストンはモータースポーツ分野における技術革新を加速させると同時に、持続可能なモータースポーツの実現にも注力していく。
具体的には、カーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミー(資源循環型経済)の推進といった環境対応を積極的に進め、レース技術の進化と環境負荷低減の両立を目指す。また、2026-2027シーズンより、ABB FIAフォーミュラE世界選手権に単独タイヤ供給を行うことも決定しており、今井氏はその戦略を主導することになる。
ブリヂストンでのキャリアとF1での活躍
今井氏は東京大学で機械工学修士号を取得し、1990年4月にブリヂストンへ入社。日本および欧州で自動車メーカー向けのタイヤ開発に従事した。2003年からはF1用タイヤの開発およびレースオペレーションに携わり、技術面からブリヂストンのF1活動を支えた。
ブリヂストンのF1撤退に先立ち、2009年5月にタイヤ担当主任エンジニアとしてマクラーレンへ移籍すると、2017年にチーフレースエンジニア、2021年にはレースエンジニアリングディレクターに昇進した。
2024年はタイヤ&ブレーキパフォーマンスディレクターとして、タイヤを中心とした知見を活かしつつ、より広範な役割を担い、マクラーレンがコンストラクターズチャンピオンを獲得する過程で重要な役割を果たし、2025年1月に退社した。
タイヤの専門知識と戦略的洞察は、マクラーレンにとって大きな資産だった。
今井氏の退社に際し、マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は「彼はチームの成功において欠かせない存在」で、「最も信頼できる協力者の一人だった」と高く評価した。
さらに、「ヒロシの素晴らしいところのひとつは、いざレースとなると“侍”のように変わることだった。普段は穏やかで冷静だが、戦いの場では一変し、非常にタフなレーサーになる。しかし、いつも礼儀正しく、スタイルを持った戦い方をしていた」とも述べ、別れを惜しんだ。