
イモラ空力開発抗争、レッドブル含む8チームが車体改良―2025年F1エミリア・ロマーニャGPアップグレード一覧
2025年シーズンのヨーロッパラウンド初戦となるF1世界選手権第7戦エミリア・ロマーニャGPの週末に向けて、イモラ・サーキットには計8チームがさまざまなアップグレードを持ち込んだ。
一方、ウィリアムズとザウバーの2チームは今回、車体変更を行わず既存パッケージでの参戦を選択した。
レッドブルRB21―細部改良で空力性能を改善
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レッドブル・レーシングRB21に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
レッドブルは、RB21に広範なアップグレードを実施した。主な変更点はラジエーターダクトおよびサイドポッドの形状で、インレットやその周辺構造、支持ステー(ステー)の再設計によって空力効率の向上を図った。
さらに、サイドポッドインレット下部には新たにターニングベーンを追加。マクラーレンとのパフォーマンス差を縮めるべく、細部にわたる空力的改良が積極的に進められた。
空力効率のさらなる改善を目指し、リアサスペンションおよびホイール周辺のダクトにも調整が加えられた。なお、前戦マイアミGPでマックス・フェルスタッペン車に投入された改訂型フロアは、今大会より角田裕毅の22号車にも導入された。
ただし、ドライバーたちは今回のアップグレードについて、大幅なパフォーマンス改善には直結しないだろうと慎重な姿勢を見せている。
マクラーレンMCL39:高ダウンフォース仕様投入、FIA詳細検査で疑念払拭
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マクラーレンMCL39に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
マクラーレンは、リアウイングおよびビームウイングを中心に、高ダウンフォース仕様の空力パッケージを導入した。リアコーナーとサスペンションコンポーネントも変更され、リア荷重が増加。さらに、フロントサスペンションには信頼性向上を目的とした設計変更が施されている。
ただし、注目を集めたのは空力アップグレードではない。
日本GPの際にレッドブルが撮影したとされるサーモカメラの画像が発端となり、マクラーレンのリアブレーキ・ドラムが他チームと比較して著しく低い温度を保っているのではないか、との疑念が浮上。これを受け、FIAはマイアミGP終了後にオスカー・ピアストリの81号車を対象に詳細な技術検査を実施した。
調査では、ブレーキシステムを含む4つのホイールアッセンブリが精査され、F1技術規則第3.13条および第11.5条に完全に準拠していることが、イモラでの初日を前に公式に確認された。
フェラーリSF-25:標準開発サイクル内での空力補強
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スクーデリア・フェラーリSF-25に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
フェラーリは今回のアップデートで、リアコーナーおよびウイング系統に開発の焦点を当てた。これは、標準的な開発サイクルの一環として実施されたもので、局所的な空力負荷の向上を狙った小規模な改修にあたる。
具体的には、スコープの形状およびウイングレットの配置を見直すことで空力特性の改善を図っている。また、リアウイングには昨年仕様の高ダウンフォース型を再投入し、低グリップ条件下におけるマシンの安定性と対応力を高めている。
メルセデスW15―空力安定性とタイヤ管理に着目した初の大規模改修
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メルセデスW16に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
メルセデスは、2025年シーズン初となる大規模なアップデートを実施。フロントサスペンションとフロントウイングの再設計により、後方フロアへの気流供給を最適化し、車体全体の空力的一貫性を向上させた。
また、エンジンカバーの微修正により、リアウイングへの気流改善および冷却効率の向上を図った。
チーム関係者は、これらの変更が予選中のタイヤ温度制御の改善だけでなく、レース中のオーバーヒート対策にも寄与することを期待している。
アストンマーチンAMR25―フロア構造を刷新、効率的なダウンフォースを追求
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アストンマーチンAMR25に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
アストンマーチンは、AMR25に大規模な空力アップグレードを施した。今回の変更は、ヘイロー、フロア本体、フェンス、フロアエッジ、ディフューザーなど、車体下部を中心とした計7か所に及ぶ。
これらのアップデートは、アンダーフロアの気流を最適化し、局所的なダウンフォースの最大化を図るもので、これと合わせて空力効率の向上が期待されている。
また、コークボトル形状およびビームウイングにも手を加え、ドラッグ(空気抵抗)を抑制しつつもダウンフォースを確保。ストレートおよびコーナー双方でのパフォーマンス向上が図られた。
なお、今回導入された各アップグレードは、アストンマーチンが導入した最新鋭の風洞設備で開発された初の実戦パーツ群であり、今後の開発スキームの試金石としても注目される。
アルピーヌA525―フロントダウンフォース分布を最適化
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アルピーヌA525に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
アルピーヌは、フロントウイングおよびリアボディパネルに修正を加えた。ウイングおよびフラップの再設計により、フロント側のローカルダウンフォースの分布を見直した。さらに車体後方のボディーワーク形状の調整を通して、ダウンフォースの安定確保を狙った。
ハースVF-25―新型フロアで全体的な空力性能を改善
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ハースVF-25に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
ハースは5点の改良を導入。主な変更点はフロア形状の見直しで、全体的な空力性能の向上を図りながら、後方への気流供給を改善。さらに、ディフューザーの拡張率を調整することで、さまざまな車高セッティングにおいても安定したパフォーマンスを発揮できるよう最適化した。
加えて、リアブレーキダクトおよびリアサスペンションの構成にも変更を加え、タイヤが発生させる乱流(タイヤ・ウェイク)の制御を強化。車体後方の整流性を高め、総合的な空力効率の改善を図った。
レーシング・ブルズVCARB 02―床下構造とサイドポッド形状を最適化
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レーシング・ブルズVCARB 02に投入された空力アップグレードの図、2025年F1エミリア・ロマーニャGP
レーシング・ブルズは、フロアチャンネルの容量を調整し、それに合わせてフロアフェンスとフロアエッジの形状を最適化。これにより、フロア下の気流に悪影響を与えることなく、局所的なダウンフォースを強化した。
さらに、サイドポッド下部の形状を改良し、新たにシャシーウイングレットを追加。これらの変更には、車体後方へと流れる気流の整流性を高め、全体の空力効率向上につなげる狙いがある。