苛立ちの伝染「どうでもいい」とフェルスタッペン、消化試合6戦さえ一切手を緩めぬF1王者の哲学
マックス・フェルスタッペンは2度と来ないかもしれないと自覚する支配的なシーズンの最後の1周で「感傷的」になった事を認めた。26歳のオランダ人ドライバーは数々の記録を打ち立てた相棒「RB19」で走る最後のラップに特別な想いを感じていた。
2023年の締め括りとなったF1アブダビGPでのフェルスタッペンの勝利は、典型的で圧倒的なものだった。キャリア通算54回目のトップチェッカーによってセバスチャン・ベッテルを抜き去り、F1史上歴代3番目の優勝回数を塗り替えた。
58周のレースで唯一、勝利が脅かされたのは1周目だった。ただそれも見た目ほどの危うさはなかった。シャルル・ルクレール(フェラーリ)はターン1、6、7と立て続けに仕掛けたが、フェルスタッペンはそれを見事に交わして見せた。
フェルスタッペンにはルクレールが一歩奥まで踏み込めないとの確信があった。
「良いバトル、良いレースだったと思う。ターン6の動きは良かったね!シャルルが左に行くとは思ってなかったよ」とフェルスタッペンは振り返る。
「でも同時に、シャルルはコンストラクターズ選手権を考えなきゃならない立場だって事も分かってた。楽しかったよ」
ルクレールを交わした後は順風満帆だった。52周に渡ってリードラップを刻み、ルクレールに18秒差をつけて今季19勝目を飾った。今シーズンのリードラップは前人未到の1001周に達した。
この記録についてフェルスタッペンは「その可能性があるのは知ってたよ、もちろん」と述べ、心の内でそれを狙っていた事を明かした。
フェルスタッペンは2回目のピットストップに際し、チームメイトのセルジオ・ペレスを優先させるよう無線で伝えていたが、その背景に記録への意識があった事を認めた。
チャンピオンを決めたのは第18戦カタールGPのスプリントだった。以降、6つの消化試合を通してフェルスタッペンが手を抜いた素振りを見せた事は一度もない。何が彼を駆り立てるのか?
「そういう風に育ってきたのが僕なんだ。全力を尽くさずに週末を迎える事は僕にはできない」とフェルスタッペンは語る。
「単純に自分自身にイライラするんだ。僕がそうなると周りの人達も同じ様にイライラする事は分かってる。でもそんな事はどうでもいい」
「チャンピオンを獲った後も僕の考え方は変わらなかった。毎週、レースに来てベストを尽くす。良いことだよ」
「勝つって事は素晴らしいことなんだ。勝てるチャンスがあるのに勝ちたくないわけがない」
「当然、勝つチャンスがあると分かったら僕は常にベストを尽くそうとするし、チームのためにもそうする」
「これだけ良いマシンがあると、記録を伸ばして良い結果を残したいって思うものだよ」
2023年型レッドブル・ホンダRBPT「RB19」は22戦中21勝を記録し、1988年に16戦中15勝を挙げたマクラーレン・ホンダ「MP4/4」が持つ93.6%を超えるF1史上最高勝率95.5%を記録した。