
「僕とユーキが収まれば十分」とアロンソ、車体サイズ議論と“モナコ批判”に一石
理想のF1マシンのサイズについてフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)は、角田裕毅(レッドブル)と自分が収まる程度で十分だと冗談交じりに語った。一連の発言の裏には、現代F1に対する洞察と、伝統あるモナコGPへの変わらぬ敬意が込められていた。
僕とユーキが収まれば十分
母国スペインGPの初日を翌日に控えた木曜日。オーバーテイクの難しさが再び浮き彫りとなったモナコGPを巡る議論の最中、アロンソは角田とジョージ・ラッセル(メルセデス)が同席した記者会見の場を笑いで包んだ。
22シーズン目を迎えるこれまでのF1キャリアを通して、様々なマシンを乗りこなしてきた2度の世界王者に投げかけられた質問は「理想的なF1マシンのサイズとは?」というものだった。
「僕(171cm)とユーキ(159cm)が収まれば十分。あとはジョージ(ラッセル、185cm)の問題だね。彼にはバスケットボールとか、他のスポーツを勧めるよ!」
ユーモアたっぷりのこの発言は、単なる冗談に留まらない。アロンソは、現実的な範囲内で車体のサイズをいくら縮小しても、それだけでモナコでのレース展開が劇的に変わるわけではないという現実を指摘した。
「真面目な話をすると、2000年代初頭のマシンが僕にとってはベストだった。少しロマンチックな答えかもしれないけど、僕にとってはF1キャリアの初期で、成功も重なった時期だったからね。V10エンジン、小型のシャシー、運転していて本当に楽しかった。でもね、それでもモナコではオーバーテイクはできなかったんだ」
2026年にはF1マシンのサイズが縮小され、全幅は100mm減の1900mm、ホイールベースは200mm減の3400mmとなる予定だが、それでも2005年当時のマシンと比べれば、依然としてはるかに大きいままだ。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
ドライバーズ記者会見に出席するフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)、角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月29日(木) F1スペインGP(カタロニア・サーキット)
変えられない宿命と過剰な期待
アロンソは、モナコの特性に「変えようのない宿命」を見ており、昨今の“レースを面白くしよう”とする風潮に対しては、距離を取るスタンスを貫いている。
その背景には、インターネットやSNSの台頭によって、F1が“コンテンツ”として消費される現代の状況への批判がある。
「毎年、モナコの決勝が終わった翌日になると、ネガティブなコメントがあふれる。でも週末が始まる前には、みんなが興奮していて、初日には『今年一番の週末だ』なんて言ってる。そして土曜の予選でアドレナリンが最高潮に達して、日曜にはまた落胆する。これがモナコなんだよ」
「モナコは昔から変わらない。だけど今は期待が過剰になっていて、メディアも情報もとにかく多い。ニュースは日々更新され、SNSでもF1の話題が溢れている」
「誰もが『ショーを見たい』『オーバーテイクが見たい』と思っていて、自宅のソファに座りながらF1を“もっと良くしたい”と考えている。そして、誰もが“アイデア”を持っている」
「今は“コンテンツを作ること”が求められている時代なんだ」
アロンソにとってモナコとは、「予選に全てを賭ける」数少ない週末であり、それゆえに価値があるという。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
予選後にピットレーンを歩くフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2025年F1モナコGP
10年に一度の追い抜きが「モナコの本質」
高まるモナコ批判に対して、アロンソは静かに反論する。「いつも『何がダメだったか』ばかりが話題になって、『何が素晴らしかったか』はあまり語られない」
「今のドライバーは優しすぎる。だから質問全部に答えてる。でも40年前に、セナやプロストにモナコについて聞いてみなよ。そんなに礼儀正しく答えたとは思えないね」
「例えばランス(ストロール)が最終ラップでニコ(ヒュルケンベルグ)を抜いたことがあった。モナコでは10年に一度しかオーバーテイクが見られない。でも、それが素晴らしいとは思わない? これこそがモナコの本質なんだ」
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カタロニア・サーキットのパドックを歩くフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2025年5月29日(木) F1スペインGP